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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
2章 旅立ちは唐突に
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39話 二人の容体は?

 手練れの男に隙は無く、メルは剣を打ち合わせる前から怯んでいた。

 しかし、エスイルの機転のお蔭もあり、メルは母の魔法を真似し見事男を打ち破る。

 後は二人を連れ逃げるだけとなったのだが……

 果たしてリアスとシュレムに盛られたと言う毒は取り除けるのだろうか?

 

「はぁ…………はぁ……」


 メルの視界が霞み、頭が揺れる……

 何とか意識は保ってはいたが、彼女自身自分の魔力が少ない事は分かった。


「だ、大丈夫?」


 此方へと向かってきたエスイルにそんな声を掛けられて……彼女は何で逃げなかったのか聞きたくなったが、今は我慢した。


「……平気だよ、とにかく二人をライノさんに診せないと」


 本当に毒なら……そう思うと早く処置をしないといけない。

 なら此処で何かを言ってる時間は無い――


「待った、嬢ちゃん!!」


 彼女が足を動かした時に店主は声を張り上げる……

 メルが声に気付き振り向くと店主はその手には縄を持っていて、それを投げ渡してくる。


「ん?」

「急ぐのは分かるが今の内に縛って置け、じゃねぇとまた来るぞ」


 彼女はそれを考えていなかった事に反省しつつも頷くと、言われた通りに縛っていく……二人の方は店主がやってくれているみたいだ。

 縛っている途中メルは男が小瓶を懐に入れた事を思い出し、役に立つかもしれないと探ってみる。

 するといくつか同じ小瓶があり、どうやら中の液体も同じに見える。

 一応全部持って行く事にした彼女は縛るのを再開し、それも終わると店主へと目を向ける。


「よし、二人を抱えて行けばいいんだな?」

「お願いします」


 メルは頷き、エスイルの手を取るとそう答えた。





 男が来た扉の方を抜けると夜の所為もあってか辺りは真っ暗だった……

 酒場からはそんなに離れていないはずではあるが、当然メルは見た事も無い場所で……


「店主さん、ここから酒場って近いの?」


 メルはそう聞きながらランタンに火を灯す。

 少し明るくなった場所を照らしてみると……


「ああ、近いというか裏だな、だがこんな所に扉があったとはな……こっちだ」


 彼はそう言うと歩き出し、メル達はついて行く……するとそこは確かに酒場の裏だった。

 酒場の中へ入ると先ほどの人達は誰もおらず、倒れた人だけが残っている……そんな酒場を抜けメルが向かう先はライノの所だ。

 彼女達が泊まる部屋へ向かい扉を開けると――彼はゆっくりとこちらへと目を向けた。


「メルちゃん!? ――――っ!!」


 するとメルの名前を呼び、それが傷に響いたのか苦悶の表情を浮かべる。


「無事だったのね?」


 確かにメルとエスイルは無事ではあった。

 しかし、メルの表情は浮かばない。

 ……当然だ、助けたはずの二人は毒を盛られている可能性があるからだ。


「嬢ちゃん、ちょっと退いてくれ二人を寝かせてやる」

「……ありがとうございます」


 店主はメルが退くと二人をベッドへと横たわらせる。

 ぐったりとした様子の二人はまだ目を覚ます様子は無く……その様子が不安をより一層募らせた……


「アンタ、何でここに居るの?」

「……色々とあったんだよ、嬢ちゃん、俺は今からあいつらが泊まってたた部屋に行く」

「え?」

「あっちの部屋には鍵がある……うちの冒険者が迷惑を掛けちまったからな……宿代は本来なら高くなるが同じで良い」


 彼はそう言うと足早に部屋を出て行った。

 確かに鍵付きの部屋はメル達としても嬉しい事だ、言葉に甘える事にした彼女はライノへと向き直る。


「……この子達はどうしたの?」


 メルの瞳には去っていく店主を睨んでいた彼が一瞬移ったが、その視線を二人へと向けると真剣な表情になり、メルへと問う。


「二人は、その……毒を盛られているみたいなんです。どうにか出来ませんか?」

「毒? でも……その毒がどんなのか分からない限り……」


 その言葉を聞き、メルはやはり持ってきて正解だったと思いつつも、もしその毒がこれではなかったらどうしようかと考えながら小瓶を取り出す。


「これ、相手が持ってたんです……なにか分かりませんか?」


 そう言いつつ彼女は彼へと小瓶を渡す。

 それを手にした彼は暫く小瓶を眺めていたかと思うと蓋を開け臭いを嗅ぎ始め……


「…………良く暗殺に使われる物ね、使い方は簡単、直接飲ませるだけよ」


 そう言って小瓶の蓋を閉めた彼は一つ溜息をついた。


「二人の容体を見ないと絶対これの所為とは言えないけど……毒が完全に回り、死に至るまでは四日って所、それまでに解毒剤を投薬出来れば助かるわ……」

「二人は治るんですね!」

「薬が……材料さえあれば……ね、場所は分かってるからすぐに取りに行きたいのだけど……」

「何処にあるんですか?」


 メルはライノへと詰め寄ったが、肝心の薬師は目を逸らす……怪我の所為で向かえないとでもいうのだろうか? だが、メルはその場合でなくても材料ぐらいなら勿論集める気だ。

 魔力はもう残り僅かしかないが、四日もあるなら話は別だ。

 彼女は母程ではなくともそれなりに魔力の回復が早い、十分間に合う日数のはずで――


「無理よ……其処にはここから馬で三日、間に合わないわ……」


 だが、現実は無情な物だった。


「そ、そんな……」


 例え魔力が戻っても、空を飛んでも三日と言う距離はさほど変わらないだろう。

 往復で六日、急いだところで一日短くなるかどうかだ……メルはまるで力を失ったかのようにその場に崩れそうになった――


「だけど、可能性には掛けれるかもしれない……」


 ――所、ライノの言葉を聞き再び身体に力を籠める。


「え?」

「リラーグに行った時に情報屋にイラニウムって言う毒草があったって洞窟の話を情報を買ったの、その薬草は同じような場所にあるし、駆除してから時間が経っているなら……」

「毒草じゃなくて薬草が生えてる可能性もあるって事ですか?」


 メルの答えに彼は頷く……その話には心当たりがあった。

 なによりリラーグの情報屋でその話を売ってる人物は一人しかいない、嘗てその洞窟に母達と一緒に向かったと言う情報屋クロネコの事だ。

 メルが話に聞いた限りではその毒草は確かに駆除されており、その場所も一応聞いていて覚えてはいた。


「でもね、環境が変化して薬草があるかもってだけなの、確実じゃないわ……それに肝心のその洞窟の場所の情報量が高くて……買えなかったのよ」

「大丈夫です、私は知ってますから……」


 薬草が生えているかは分からない……メルが聞いたのは場所とそこに毒草があったって事だけだからだ……


 でも、可能性があるなら……


「え? なんで知ってるの」

「その情報屋さん、私の知り合いなんです……だから場所は聞いた事があります」


 メルはその話を聞いた時はクロネコにそんな情報を言っても大丈夫なの? って聞いた覚えがある。

 だけど、彼はこう言った……


「どうせ馬鹿犬か女がお前に話すだろうからな……」


 にやりとまるで悪人の様な笑みを浮かべたクロネコはその後に場所の事もメルへと伝えてくれたのだ……

 だが、先程も考えた事だがメル一人じゃたどり着けはしない……しかし、彼女には精霊であるシルフが居て彼女はメルの瞳を介し景色を見ることが出来る。

 メルはリラーグから何処に向かえば辿り着くとだけ伝えれば良い。


「でもね、もし毒草だったら!!」

「分かってます……その見分け方も」


 しかし……彼女、一人でエスイルは守れない。

 外には魔物も居て囲まれたりしたらメル一人では逃げる事は出来てもエスイルを連れてでは無理だろう……そう考えた時、彼女はふと先ほどの事を思い出し――


「それよりもエスイル、何で逃げてって言ったのにこっちに来たの?」

「え……それは、その……」


 あの時は店主に三人お願いしたはずだが、彼女は逃げてと確かに言った……とはいえ、エスイルのお蔭で助かったのは間違いない。

 その事実がある以上、怒るというのも気が引けた彼女は……


「助けてくれたのはありがとう、でも今度逃げてって言ったらちゃんと逃げるんだよ?」


 優しい声でエスイルにメルはそう伝える。

 そう言えばきっと分かってくれるはず、そう思ったからだ。


「う……うん!」


 てっきり怒られると思っていたのだろう少年は表情を明るくし元気よく頷いた。

 メルはそれを見てからライノの方へと向き直り――


「明日向かいます……でも、そこは此処からだとちょっと遠くて……この子を連れて行くのは……」

「そうね、この酒場の店主もどうやらこっち側みたいだし、アタシもこの怪我であまり動けない。鍵のある部屋なら安全だと思うわ」


 彼はそれに……と付け足し――


「恐らくだけど、これ以上は襲って来ないと思うわよ?」

「へ? だってそんな保証何処にも……」


 無い……それなのに彼はふふっと笑い。


「もし手を出したらこわーい女の子が仕返しに来るって思うでしょ?」

「へ!? わ、私怖くなんか――」

「ふふふ、冗談よ。でも暫くは噂になってるはずだから警戒をされるはず少しの間なら安全よ」


 冗談だとは言われたがメルは納得がいかなかった。


 誰だって家族や仲間が傷つけられたら怒るんじゃないかな? 


 そう考えた彼女は「私怖くないのに……」とか細い声でつぶやきながら床へと視線を落とした。


「あ、あら?」


 そんな風に彼女ががっくりと項垂れていると、服が優しく引っ張られる。

 メルは何かと思いゆっくりとそっちの方へと顔を向けると――


「メルお姉ちゃんは優しいよ!」


 弟の屈託のない笑みに気を良くした彼女はつられて笑顔になり――


「ありがとう、エスイル」


 そう答えた。

 それに、よくよく考えれば納得は行かなくても現状は良い方だ、

 ライノの話通りであれば、少しでも安全な内に薬草は取りに行ける……それなら――と彼女は思い。


「明日、朝になったらすぐに向かいます」

「ええ、薬草さえあれば調合は出来るわ、お願いするわね」


 ライノの心強い言葉に彼女は頷き……


「準備で来たぞ、二人は俺が運んでやる……移動しろ」


 店主が迎えに来てくれ、彼女達は部屋を移して、この夜は休む事にした。

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