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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
2章 旅立ちは唐突に
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37話 二人の冒険者

 男の案内の元、酒場の部屋にあった下へと続く梯子を下り道を進むメル達。

 その先にはメルの見た景色にそっくりの場所があった……

 メルは二人がそこに居る事を期待していたのだが、そこには当然敵となる者が待ち受けていたのだった……

「シュレム! リアス!!」


 メルが名前を呼んでも二人は反応せずにぐったりとしていて……


「二人に何をしたの!!」


 目の前に居る赤髪を剣を弾き、彼女は怒鳴る様な声で質問をした。


「つぅ!? 馬鹿力女め…………心配すんなよ、ただ眠ってもらってるだけだ」

「なっさけないなロウ……二回も女に負けんなよ?」


 青髪はへらへらと笑いながら大ぶりのナイフを取り出し、赤髪へと話しかける。


「先に負けたのはお前だろ!? ウェン」


 その言葉にさらに苛立ったのだろう、赤髪は手に持つ剣に力が入る……

 二対一、しかも相手は二人を人質に取っている……だが、それだけではない。


「お前達、依頼はどうした!!」


 そう、この少年達は依頼を受けて出て行ったと店主はメルにはっきりと告げている。

 酒場の主としての彼の問いは当然のものだ。

 しかし、それには答えず二人はへらへらと笑ったままだ。


『メル! 他には人が居ないよ!』


 シルフはメルの為を思ってだろう、辺りの気配を調べてくれたようだ。

 彼女の感覚に間違いが無ければ、メルがする事は一つ――


「今すぐに二人を助ける!!」


 メルは隙だらけの赤髪……その手に持つ剣へ向けアクアリムを振る。

 再び鳴り響いた金属音と共に剣は彼の手敵離れ――


「――――ってぇ――ッ」


 慌てて腰からナイフを取り出した赤髪……

 だが、その動きは遅く……下手をしたらユーリよりも武器の扱いが下手なんじゃないか? と彼女が思うぐらいだった。


 これで酒場一番の冒険者ならいくらなんでも弱すぎる。

 それでも……この人達は手段こそは謎だが、二人を攫ったんだ! 油断は出来ないし、今度は手加減をする必要はない。


 そう思い彼女は空いている手を握り思いっきり彼に向け拳を振り抜いた。


「っぅ!?」


 同時にメルの手には痛みが走る……修業以外で人を殴ると言う行為は初めてだったメルはその感触の気持ち悪さに顔を歪めた。

 しかし、これで暫く起きないはずだ……そう思うっていた所――


「ロウ!? この女ぁぁぁぁ!!」

「――――!!」


 声と共にナイフが迫り、メルはそれを剣で弾く……


「なっ!?」


 依頼をした時にこの男が遅いのは確認していた……メルならば動きを見てからでも対処は十分間に合い――彼女は再び拳を握ると……


「や、止め――」

「ちょっと寝てて……」


 青髪にそれを叩きこんだ。


「うーん?」


 思っていたよりも簡単に倒れた二人を見てメルは首を傾げる。

 メルにはどう考えても動けないリアスや背後を取られたライノはともかく、シュレムをどうやって攫ったのかが分からない。

 だが、そんな事を考えるよりはまずは二人だとメルは痛む拳を擦りながら、二人の元へと駆け寄った。


「シュレム? リアス?」


 名前を呼んで肩を揺すっても二人はぐったりとしたままで、嫌な予感がし二人の呼吸と心臓の音を確かめる。


「…………だ、大丈夫みたい?」


 二人共、心臓の音は問題なく聞こえて呼吸もしている。

 だけど何度揺すっても起きる気配が無い……何かされたのは間違いない、ライノならなにか分かるだろうか? 彼女はそう考え慌ててシュレムを抱えようとし……


「店主さん! お願いしたい事が――」


 店主にリアスを頼もうとそう言葉にした時だ。

 声を掛けようと顔を動かした時……視界の中にもう一つ扉が映った……

 メル達が来た方とは違う、もう一つの扉だ。

 恐らく赤髪と青髪の二人がこの部屋に入った時の扉なんだろう……そこはギィィっという音を立て動き始める。


「何だ嬢ちゃん!!」

「二人を連れて下がってください!!」


 来てくれた店主さんにそう告げ、メルはアクアリムを再び構える。

 ここに入ってくるとすれば()()の依頼主の可能性が高い、身構えるメルをあざ笑うかのようにゆっくりと開かれる扉から部屋に入ってきた人は見覚えのある人で……


「おや、お嬢さんはこんな所で何をしているのかな?」


 彼は――


「おっとこれはこれは、酒場の主人じゃないか……おかしいな隠蔽はちゃんとしていたのですが……」


 メルが先ほど会った……それも中の人を信じるなと教えてくれた人だ。


「え……? なんで、さっき……」

「ふむ……確かに言ったね、だけど……言葉を鵜呑みにしてはいけないよ、人は人を騙すものだ」


 ならばなぜ教えてくれたのか? メルが意味も分からず目を丸くしていると……


「しかし、誤算だったな……」


 男は髭をいじりながらそう呟いた。


「……誤算?」

「二人の報告ではどちらも物を持っていないとの事だった……リアスはあえて持っていないだろうとそちらの女を攫わせたのだが……いや、まさか君が持っているのか?」

「も、持っているって……」


 なんでリアスの名前を知っているのだろうか? いや、彼の名前を知っていて彼の持ち物を狙っている……そんな事があるとすれば、彼の元々の知り合いか、追手……

 だが、メルにリアスは荷運びと名乗っていた。別の物かもしれないと考えるメルの耳に――


「知らない訳が無い、首飾りさ……」

「――――っ!!」


 と言う言葉が届く……


「その顔そうか、君か……ふむ、時には気まぐれを起こすのも良いものだ」


 メルは依然、呆然とする頭を左右に振り目の前の敵へと意識を集中させ――剣を再び構える。


「しかし、一方的に寄越せと言うのも……そうだお嬢ちゃん、二人を助けたいそう思わないかい?」


 助けると言う事はやはり何かをされたのだろう……分かりやす過ぎるその質問にメルは――


「――――何をしたの?」


 ――質問で返す。

 そうすると、男は変わらぬ態度で口を開き、語り始め……


「薬だ、毒草や魔物の毒を調合し衰弱死させるものだよ、それの解毒剤の調合が大変でね」


 懐から一つの小瓶を取り出した……彼が手にしたのは半透明な液体が入っている小瓶だ。

 恐らく解毒剤であるそれをこちらへ見せつけると……


「……さぁ、首飾りを渡せ」


 彼はそう口にした。


 二人は毒に侵されている? それでその解毒剤が無いと助からない?

 この人はなんで首飾りを知っていて、それを求めるの?

 いや、それよりも二人を助ける方が先だよ……だけど毒なら、解毒剤を手に入れないと無理……

 私には毒を治すなんて魔法使えないんだ……早くしないと二人が――!!


 男の言葉からメルは毒を盛られたと信じ込み、頭の中で考えるも考えがまとまらず……ただ相手の言葉通り、首飾りを渡そうと鞄を探る。


「痛っ!?」


 しかし、慌てて首飾りを手に取ろうとしたせいなのか、指をひっかけてしまいそこから血が滲む……

 赤い血だ……傷は決して酷いものじゃなくヒーリングで治せるぐらいのものだ。

 何の変哲もないその血を見て、メルの脳裏に過ぎったのは自身が斬ってしまった男の事だ。

 リアスが殺されると分かり、冷静さを失った彼女が殺してしまった人……

 リラーグを出た後もリアスには突然の事に弱いと言われてしまった位には……メルは簡単に冷静さを失う――

 だが――その血を見て、いや――その事を思い出したからかメルの考えは徐々に落ち着き始めた。


「早くした方が良いぞ」


 何故この男は解毒剤を渡そうとしているのか?

 持っている事自体はおかしくない、だが……薬を受け取った所でメルが襲い掛かればその身を危険にさらす。

 ……少なくとも倒れている二人を倒したのは彼女だという事は分かるはずだ。

 ましてや、首飾りを渡しその解毒剤を受け取った所でメルが店主に薬を投げ、シュレム達に使うように告げたら? シュレム達は万全ではないにせよ戦いに参加する可能性だってある。

 そうなれば当然、多勢に無勢……逃げられる可能性が無くなるかもしれないのだ。

 首飾りを手に入れると言うのは本当だろうが、無駄な労力は避けたいと思うはずだ……子供相手に苦戦したなどと大の大人が言えるはずもない。


 なら、なんで? そもそもあれは解毒剤なの?


 思考の末、メルは更に考える――


 もし……もし、私があの人の立場だったとしたら―― 


「どうした?」


 いや、あれは――解毒剤なんかじゃない。

 良くて濁った水……でも、恐らく中身は……


「毒なんていらない……」

「ほう? 私は解毒剤と言ったが?」


 相手の表情は変わらない。


 だけど……でも! 私に解毒剤を渡す理由が無い、二人を助けた所でこの人にはなにも利益が無いのだから……


 メルはそう確信し……告げる。


「……嘘でしょそれは、その中身は毒だ」

「嘘だと思っても良いが、仲間は見捨てるのか? 姉が居るはずだが……」

「貴方に心配されることは無いよ……だって信用出来る薬師なら居るから……」


 いつの間にか酷かった頭痛は消えているのも証拠だ。

 精霊達に視界を借りた時はどんなに短くてもこんなに早く頭痛が収まるは無かった。

 二人の事はライノに診てもらえば良い、そうと決まればメルがする事は――


「もう一度言うけど、毒なんていらない……私は二人を助けたいんだから……」

「やれやれ……どうやらやっかいにも賢いみたいだな」


 男性はそう言うと手に持っていた小瓶をしまい込み、杖から刃を抜いた。

 メルが昔ユーリに聞いた仕込み武器という物だろう……

 だが、そんな武器よりも気になるのは彼の方だ……まだ幼いとは言ってもメルは剣と魔法、そして体術までも手練れの冒険者から学んでいる。

 当然……相手に隙があるかどうかは見て分かった。

 だが、引く訳にはいかないと――


「そこを退いて! じゃないと其処の二人と同じ目に遭ってもらうから!!」


 双眸で男性を捉えたメルは祖母から受け継いだ彼女の名を持つ剣――アクアリムを構え叫んだ――

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