29話 魔物との戦い
リラーグから旅立ち、外へと一歩を踏み出したメル達。
まず目指すはリシェスの街……ではなく近郊の村なのだが……
その前に彼女達の目の前に現れたモノは?
リラーグからタリムに向かうにはまずはリシェスと言う街に向かう。
だがリシェスはここからだと遠い場所にあり……まずは近くにある村カロンへと向かう事になる。
そこまでなら、魔物に会う事も無いだろう……
「って思ってたんだけど……」
「なんの事だ?」
彼女達の目の前には魔物が居て……それは厄介な事にスライムだ。
リラーグが元々あった場所は湖になってる。
その所為で自然と増えたのだろうが、それは仕方の無い事だ……しかしメルは過去にスライムが厄介だと聞いた覚えがあった。
「早速出やがったな魔物! オレに任せておきな!」
「ちょ、シュレム!? 待って!!」
「馬鹿! 待て!!」
確かその話はシュレムも聞いていたはずだと記憶していたメルは彼女を止めるが、しかし彼女は言葉を無視して意気揚々と突っ込んで行く――
メルが慌てて手を伸ばすものの届くはずもなく、シュレムはスライムに近づくとその盾をスライム向けて振り抜く――が――
スライムは盾に吹き飛ばされたが、無傷なようで地面へと叩きつけられるとプルプルと揺れている。
更には今の攻撃で彼女達を敵と判断したのだろう……なにかが這うような音が聞こえ――
「メルおねえちゃん!」
「……へ? な、なななにこれぇ!?」
メル達の周りには数匹のスライムが集まってきた。
いや、数匹と言うより数十匹入るかもしれないその数にメルは慌てふためく。
「どうなってるんだ! この魔物俺の攻撃を!! あ、あああああありえねええええ!?」
だが、自分よりも慌て始めたシュレムの姿を見て落ち着きを取り戻したのか……
何をやっているのでしょうか? 私の姉は……っと心の中で呟いた。
「はぁ……」
メルの隣ではリアスも溜息をもらしていて……それを見た彼女は一度深呼吸をし、自身を落ち着かせ改めて思い出す……
スライムはシュレムのような打撃攻撃は無意味。
核が弱点だけど周りの水が衝撃を和らげてしまう、んだよね……つまり――
「我が意に従い意思を持て――」
剣や槍での突き、リアスの針……そして魔法で――撃ち抜く!!
「マテリアルショット!!」
彼女は小石を魔法で浮かせるとそれをスライムに向けて放つ――
小石は吸い込まれるようにスライムの核を捉えると水の中でそれは砕け途端に形を崩した。
他にも崩れ去ったスライムがメルの目には映った。
恐らくそれはリアスが針で倒したのだろう……
二人は魔法と針を使い、辺りのスライムの数をどんどんと減らす――
「クッソォ!! メル気をつけろ! こいつ強敵だぞ!!」
――ただ一匹……シュレムが永遠と追いかけっこしてるスライムを除いて……
本人は必死なのだろう、事実シュレムにとってスライムは強敵だ。
だが、メルは母達の話を聞いていなかったのかな? と言う疑問を浮かべ、先ほどのリアスの様に溜息をつくと、すぐに詠唱を唱え――
「マテリアルショット」
――小石を飛ばす。
シュレムの盾に宙を浮かされたスライムの核は見事に砕け、形を失った水はばしゃりと言う音を立てて地へと落ちた。
「……ふっ……やった、やったぞ! メル!」
シュレムは自分が倒したのだと錯覚し、喜んだようで笑顔をメル達の方へと向いてくる。
「いや、今のはメルの魔法だ……」
リアスは呆れた様子で片手を額に当てると再び溜息をつき――
「核さえ壊せば倒せるって言ってもスライム相手にふざけない方が良い、万が一取りつかれたら――」
「ほら、私達は初めて外に来たから……ね?」
「一つの間違いが死に至る事があるのは分かるだろ? それにメルは驚いてはいたけど、ちゃんと対処が出来ていた、初めて外に出たのは君同じだろ??」
メルはそれに関しては何も言えなかった……何故なら彼の言う通りであり、スライムの弱点……その話を聞いてた時はシュレムも居たのだから……
「なんだよ、オレはふざけてないし、ちゃんと戦ってただけだ」
「……そうか、なら言っておく、俺が街中じゃ思うように戦えないのと一緒でその盾で倒せない魔物だっている。スライムもそうだ、待てと言ったら待ってくれ」
リアスの言葉に頭に来たのだろう、怒った様子のシュレムはメルの元へと近づき……
「こいつ嫌な奴だな……何を仕切ってるんだ?」
彼女へと小声でそう告げてきた。
「魔物が出たら一番頑丈な奴が守った方が良いじゃんか、街では何も出来なかったくせに」
「でもね、ユーリママが居ないんだし、怪我じゃ済まないかもしれないから慎重に行こう? 家族にもしもの事があったら辛いよ……」
メルの言葉を受け、シュレムは言葉を失う……もしかして、怒らせたりしてしまっただろうか? っと彼女は不安になり、恐る恐るシュレムの方へと向くと――
「そうだな、嫁を悲しませる訳にはいかないな」
と言いつつメルに抱きつこうとして来ているのは勿論姉だ。
「そう言う意味じゃないからね!?」
抱擁をするりと避けつつ、一つ溜息をつくメルはふと物思いにふけた。
人により得意な魔物、場所があると言う事だ。
確かにメルの母フィーナは狭い場所は苦手だと言っており、もう一人の母ユーリはそもそも攻撃魔法が苦手。
そう考えると何も考え無しに戦うのは危険なのかもしれないと……そして自分の苦手な事は何なのか知っておかなければならないのでは? っと……
「う~ん……」
「メル?」
メルが首を傾げながら唸っているとリアスはこちらへと顔を向けてくる。
「どうかしたのか?」
「え?」
「今、うんうん言ってたからさ、少し休むか?」
「ん? 大丈夫、ただ……私が苦手なのって何だろう? って……」
彼女がそう伝えると彼は「ああ」って一言口にし……
「メルは剣や魔法どの状況でも比較的戦えるはずだけど――」
以外にも高評価だった様で彼女は一瞬喜ぶがすぐに首を傾げる。
「だけど……?」
「予想外の事に弱いんじゃないか? 俺が助けに行った時も捕まってたし、狙いを自分へと急に向けられた時も動けてなかった。勿論、今も動くのに時間が掛かってたからな」
そう言われると確かにそうだ、彼女はそう確信しがっくりと項垂れ――
「はい、気をつけます…………」
何か言い返したいとは思ったが、その通り過ぎて何も言えなかった。
だが、落ち込んだ彼女の服の裾がくいっと引っ張られ、彼女はエスイルの方へと目を向ける。
「メルお姉ちゃんは強いよ!」
メルは泣きそうな声で励ます弟のその言葉に少し救われた気がした。
「ありがとう、もっともっと強くなって見せるからね?」
そう言って彼女が笑顔を作るとエスイルは首を縦に振った――
スライムを無事討伐したメル達はカロンへと足を急がせる。
先ほどはメルと仲良く手を繋いでいたエスイルは今リアスに担がれている状況で……メルもリアスは走っていた。
更に言えばエスイルまでも青い顔をし、リアスの肩にしがみついているっと言うのも……
「なんで……こんなに……魔物、居んっだよぉぉぉぉ!!」
シュレムの悲痛な叫びの通り、下に降りてからスライムやらエイシェントウィロー……更には今現在ヴォールクと言う犬の様な魔物に追われている。
ヴォールクは狼の魔物で足も速く、集団で行動するらしく後ろからは唸り声と鳴き声が絶えず聞こえていて――
メルは走りながらも混乱する頭を整理し、なんとか突破口を開こうと考え――
「具現せよ強固なる壁! アースウォール!!」
石の壁を魔法で作った――これで魔物は壁に当たる――
「は、ず――?」
と思ったのも束の間――
『ヴァヴ!!』
魔物は賢いのか壁を迂回してメル達の方へと向かって来てしまい。
「う、嘘でしょ!?」
「メル! なんでもいい早く魔法を撃て!!」
メルの耳にはシュレムのそんな声が聞こえて来たが、岩壁が避けられ焦ったのだろう――
その場で狼狽し、口はもごもごと動くだけで――
「――ッ!! 火だ!」
「ッ! 焔よ我が前に全てを焼き尽くす盾を! フレイムウォール!!」
リアスの声を聞き咄嗟に叫んだ魔法は思ったより魔力を込めてしまったのだろう、具現した火柱は普段、彼女が使うものよりもずっと大きかった。
その規模に周りが火事になる事を恐れたメルは慌てて魔法をかき消すと奥には逃げていくヴォールクたちの姿が見え……
「よ、良かった……」
何とかなった事に彼女がほっと息をついていると、近くから聞こえるのは溜息で――メルはゆっくりと彼の方へと首を動かすと……
「焦らずにな……」
「はい……」
何処か呆れた様な、それでも優しい様なそんな顔でそう言われメルは尻尾と耳を垂らした。




