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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
2章 旅立ちは唐突に
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27話 シルトとクルムの想い

 メル達はエスイルを送り届ける旅について行かなくても良い。

 王シルトにそう告げられたメルとシュレム――

 だが、そうなるとリアスは一人で旅立つしかないとメルは思い……

 意思を変えずついて行くことを告げるのだった……そう、姉シュレムと共に――

 金銭が発生しないであろう「冒険者ではない」という理由を掲げ――

「話を聞いていたのか? これ以上危険な事に首を突っ込むなっと言っているんだ!!」


 部屋の中に響くのはシルトの怒号。

 だが、それはメル達には届くことは無かった……


「……シルトさん現実を見てよ、リアスがエスイルの護衛を雇うのには多額のお金が居るよ? 勿論親であるクルムさんも払うとしてもその場所が遠ければ遠いほど……」


 遠い場所への子供の護衛、しかもメル達がついて行けないとしたら、二、三人は雇わなければらない……そうなれば金貨何十枚位は必要になってくるだろう……

 そんな大金をクルムに用意をさせるのか? 少なくともリアスには無理だろう……彼が一人で旅立つ事は明白だ。

 だが、冒険者並みの実力を持つ者がついて行けば何の問題も無い……しかし、それ程の実力のある者と言ったらそれこそ数が少なくなってくる。

 更に言えば、例え冒険者ではなくとも彼の意志に……エスイルを守る事に賛同出来る者でなくてはならない。

 何故なら旅にはお金は必要だ……それが裏切る理由にもなりえる事は幼いメルにさえ理解出来る事だった。


「だからと言って恩人の子供を危機にさらす訳にはいかない、民の……皆の意見も考慮し首飾りを渡す相手がこの街に居ないなら仕方なしとは思ったが、終わったのならそれで良い」


 先程は出ていけって言ったのに、今度は駄目と言われメルは納得できるわけが無かった。

 確かにメルが言われたのは首飾りを届けろとだけだ……だけど、状況は変わってしまった。

 何より……今シルトが言っている事は――


「…………私やシュレムは駄目でエスイルなら危険な目に遭っても良いって事だよね、それ……」

「そう言う意味では――」


 シルトの事だ、本気でそんな事を思っている訳では無い事はメルも分かっている。

 しかし、クルムはエスイルが旅立つ事を駄目だとは言っていない……勿論良いとも言っていないがここに連れてきたと言う事は旅立たなくてはならないのは明らかだろう。

 そして、先程考えた様にメル達がついて行かなければリアスはこのまま一人で行ってしまうだろう……そうなればエスイルを守るのは彼だけだ。

 そんなリアスの弱点もさっき分かってしまった……遅かれ早かれ追手にそれが気が付かれてしまうのは容易に理解出来た。


「シュレムも言ったけど、弟なんだから……放って置くなんて出来ないよ!」


 そして、メルはエスイルは勿論、リアスにしろ自分の手の届かない所……見えない所で死なれるのは嫌だと思った。

 だからこそ、ついて行くと言ったのだ。そうしなければ後悔すると感じて……


「メルちゃん……」


 そう思うメルだからこそ安全性を高めるためにシルトに助力を求めた……だが、こう言われては――


「私達でなんとかするよ……エスイルは守って見せるから……」


 きっと母達ならそう言う……そう思いながらメルは口にした。

 すると、シルトは乱暴に机に手を付き音を立て立ち上がる。


「メル!! 君は話を聞いているのか!?」


 勿論聞いているよ……彼女がそう口にしようとした時――


「あの――」


 メルよりも先に口を開いたのは、クルムだった。

 彼女は辛そうな表情を浮かべ言葉を続ける。


「この子が向かわなければいけない所は遠い場所です……正直冒険者を雇うのであれば多額の金額が必要です。私が戻ろうとしていた時は途中途中で仕事を探すつもりでしたし、急ぐのであれば到底間に合いません」

「…………だが、他に方法は――」

「当然その距離をユーリさん達に頼むとすれば酒場の経営に関わります……ですから、私からもお願いします。この子……エスイルはメルちゃん達に懐いていますし、なにより……私が安心できます……冒険者が雇えない以上、二人に息子をお願いしたいのです」


 クルムはその場に膝を付き、頭を下げる……

 彼女の夫はリラーグの王であるシルトも信頼を置く人物だ……その様子に慌てた様子のシルトは――


「そこまでする必要はない、クルムさん!」


 制止の言葉にも動じず、クルムはそのままだ。

 メルはシュレムへと目を向け、頷くと同じように頭を下げた……これ位で済むなら――と……


「君達まで――!?」


 シルトも二人までもがそうするとは思わなかったのだろう……驚いた声を上げる。

 更にはメルの横にはリアスが戻って来て、やはり同じように頭を垂れた。

 暫くそれが続いたかと思うと、やがて一つの溜息が聞こえ――


「…………リアスと言ったかい? その蓄えは……」

「先ほど言われた通り冒険者を雇う金はありません、メルがついて来てくれると言ってくれた時は正直に言いますと少し安堵しておりました」


 その言葉を聞きメルはやはりついて行くと言って良かったと思った。


「…………はぁ、他に手はないのか? …………ええい! 仕方が無い……メアルリース、そしてシュレムローネ以下二人をリアス・アルリッド、およびエスイルの護衛を命じる、だがこれは殺人を犯したメアルリース君への罰だ」


 その言葉にメルは頭を上げ――


「――! はい、分かりました」


 と答えた。

 だが、遠い場所に行くのだとしたらやはり仲間が欲しい……メルはそう感じ、口にしようとした所――


「しかし、以前言った通り君の評価は酒場、龍に抱かれる太陽の酒場……ユーリさんに関わる。所属する冒険者をついて行かせると言う事は許可出来ない。勿論私の一存で冒険者をつけると言う事もだ……危険な旅になるだろう、それでも……行きますか?」


 と先に言われてしまい、耳と尻尾はゆっくりと垂れてしまった。

 とはいえ、シュレムという仲間は得られたと思う事にし彼女は答える。


「はい、行きます!」


 小さい頃から想像していた旅立ちとはかけ離れている、しかも弟同然のエスイルの命を預かるなんて彼女には重すぎる。


 だけど……それでも、私の力が役に立つなら――


「必ずエスイルをその場所に連れていきます、なんとかしてみせるから!」

「……分かりました、ではメアルリース、シュレムローネ……そしてリアス、幾度も困難がある旅になるだろうけど、頼んだよ」


 彼女達はその言葉に頭を下げ、立ち上がり扉へと向かう……

 そんなメル達の背中に――


「気を付けて、戻ってくるんだよ」


 シルトの優しい声が聞こえた。






 屋敷の中を歩き、彼女達は進む。


「おかあさん、僕どうなるの?」


 エスイルのそんな言葉にメルはハッとした。

 そういえば、エスイルに関する大事な話だと言うのに本人には何も聞いていなかった事に気が付いたのだ。


「エスイル……貴方は精霊を助けるために行かなきゃいけない所があるの」


 息子が旅に出なくてはならないと言う衝撃が大きすぎたのだろう、クルムもその事を思い出したらしく、慌てた様に告げる。


「お母さんは足手まといになってしまうから行けないけど、お姉ちゃん達が一緒だからね?」

「………………」


 そうは言ってもエスイルはまだ七歳だ。

 母達が居ない寂しさはメルも知っていた……もしかしたら、もう会えないのではないか? そう思った時すらあったのだから……

 だが、安全を考えるとクルムまで連れて行くことは出来ない。

 だと言うのに――


「わ!?」


 エスイルはメルへと抱きつき、涙声でクルムに言葉を投げる。


「……僕、もどってこれるの?」


 それはメルが考えてなかった事だった……

 いや、考えるのを恐れてた言葉だ。


「大丈夫、お母さんとお父さんが後で必ず迎えに行くからね?」


 辛いはずのクルムは笑顔で……その声はまるで優しく包まれるようなもので――

 メルに向けられた言葉ではないのにとても安心出来るものだった。

 そんな不思議な声を聞き、ほっとしたのかエスイルは瞳に溜まった涙を袖で拭うと――


「うん! ぜったいだよ!」


 そう答えた後、笑顔を見せた……メルはそれを目にし、この子は――エスイルは絶対守らないと、なにが遭ってもなんとかしてみせる……そう強く決意をする。


「ええ、絶対ね?」


 クルムはそう答えた後にメル達三人に視線を送ると、ゆっくりと頭を下げた。


「息子をお願いします」

「……ええ、必ず無事村に連れて行きます」


 すぐに答えたのはリアスで彼はそう言うとメル達へと目を向ける。


「案外、運が良かったかもしれないな」


 その言葉が何を意味刺すのか良く分からなく、メルが首を傾げると彼は小さな笑い声をあげ……


「メルに荷物を盗られたお蔭で思いがけない仲間が出来た」

「そ、それはそうなんだろうけど、言われると複雑だよ……」

「悪い悪い、ともかくこれからよろしくなメル、それにシュレムさん」


 と言いつつ笑顔である彼を見てメルはやはりこの人は嫌な人なのだろうか? と考えるが……

 すぐに、優しい人でもあるしと考えつつ、答えた。


「よろしくね! リアス」

「オレはメルについて行くだけだ。お前メルに変な事したら磨り潰すからな? 後気持ち悪いからさんは要らない」


 そんな脅迫を彼は冗談だと受け取ったのか笑い飛ばすと――


「ああ、そうならない様に気を付けるよ……シュレム」


 そう答える彼に対し、メルは感心し、それに比べ……と彼女はシュレムの方へと視線を向ける。


「メル、どうした? そんなにオレが恋しく――」

「……それじゃいつまでも屋敷に居ると迷惑だし行こう!」


 また変な事を言う姉は放って置く事にし、メルはそう言葉を放つと歩き出す。

 やや慌てた様子でついて来たリアス達と共に向かうのは名も知らない村……心強い仲間は結局シュレムしか見つからなかったが、これから行く先で見つかる事を願いメルは一歩一歩を踏みしめた。

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