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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
9章 奪われた精霊の首飾り
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190話 不死の王が残した物

 シュレムの盾の為に武具店へと向かったメル達。

 そこには見た事も無い道具が置いてあった。

 小さな爆弾がいくつも繋がった物だ。

 店主の言う事では嘗てタリムを支配していた不死の王が作った大きな音を出すための物らしいが?

「ほ、本当に買うのか?」

「はい、タリムの王が残したというなら、何かしら使い道があるはずですし」


 メルの言葉に店主は驚きつつも、小さな爆弾を布袋へとつめる。


「だが、本当に大きな音が鳴るだけで意味がないんだぞ? 良いのか?」

「逆にそれが良い」


 リアスはニヤリと笑い店主へと告げた。

 作成者である店主は首を傾げつつも言われた通りの数を袋へとつめ終わるとリアスへとそれを渡した。


「いくら使えないと言っても爆弾は爆弾だ。取り扱いには注意しろよリアス」

「ああ、注意して使うよ」

「頼むぞ、じゃぁ代金だが――」


 支払いを済ませたメル達は店主に別れを告げ、店を後にした。

 その足でタリムを去ろうと村の入口へと向かう。


「リアス?」


 その途中、出会ったのはフィオと言う女性だった。

 彼女は大きな荷物を持っているメル達を見るなり、残念そうな表情を浮かべ……。


「もう、旅立つの?」

「そうするよ、急がないといけないからな」

「そっか……気を付けて行ってくるんだよ?」


 悲しそうな女性はリアスの手を取り、メルはまたもやむっとするが表情に出さないよう意識をしていた。

 しかし、そんなメルの方へと目を向けたフィオは何処か勝ち誇った顔をし――。


「寂しくなったら帰って来てね?」


 すぐに優し気な表情へと変えた女性はリアスへとそう告げた。


「旅を終えるまでは戻って来れそうにはない」

「う、うん……じゃぁ、私が追いかけちゃおうかな?」

「遊びじゃないんだ……それに危険な目に遭ったばかりだろ?」


 フィオの言葉にリアスは呆れたように答える。

 そんな二人のやり取りを見てメルは面白くないと感じつつ――。


 リアスって……もしかして、鈍感なのかな? 明らかに好意を寄せてるのは分かるのに……。


 自分自身の気持ちに気が付いていないメルですらそう思うほどの回答を口にする少年。

 そして、少し視線を動かすと予想通りの回答なのだろうか引きつった笑みを浮かべがっくりと項垂れた女性が見えた。


「行ってくるよ」

「う、うん、行ってらっしゃい気を付けて……」


 元気がない様子の彼女にリアスは首を傾げると顔を覗き込むようにした。

 しかし、メルからはそれがまるでキスをしているかのように見え――。


「リ、リアス!?」


 慌てて彼の横へと駆け寄るが、それが勘違いだと気づくとなぜ自分は慌てたのだろうと疑問を浮かべた。

 しかし、そんな疑問も顔が赤くなり熱がこもっている事に気付くと途端に恥ずかしさを感じ――。


「どうした? メル……」

「な、何でもない!」


 ――彼女の様子を窺って来るリアスから顔を背ける。

 尻尾や耳でなにかあったのはばれただろうが、それでも顔を見られるのだけは避けたかったのだ。

 だが、そんな事をしてしまえば当然……。


「何かあったのか? 体調でも悪いんじゃないか?」

「だ、大丈夫……なんでも、ないよ?」


 メルは迫る彼に気付くとますます顔を朱へと染める。

 そんな二人のやり取りを見て、面白くなさそうに表情を歪めたのはシュレムとフィオだ。


「オ、オレの嫁を……」

「わ、私の事あんなに心配してくれたことないのに……」


 二人の呟きは聞こえていないのだろうメルはひたすらリアスに顔が見られない様に背け、リアスはそれを追いかける。

 そんなメルとリアスのやり取りを見て一人微笑むのはライノだ。

 しかし、名残惜しそうに二人に近づくと口にする。


「さ、二人共そろそろ出発しましょう?」

「でもな、メルが体調悪いなら少しずらした方が……」


 心配するリアスにありがたいと思うメルだったが、彼女は体調が悪いという訳ではない。

 慌てて、否定するためぶんぶんと首を横に振る。


「ち、違うの! 元気だけど、その……ちょっと……」

「ちょっとってなんだ? 無理はするなって約束だろ?」


 それは確かにリアスと約束した事であり、メルもしっかりと覚えていた事だ。


「う、うん、それは分かってるし、ちゃんと変だったら言うから……」


 今も変な感じだけど、体調が悪いって訳じゃないし良いよね?


 メルはそう思いつつ視線を動かした。

 その先に見えたのは笑みを浮かべる幼い水の精霊ウンディーネ。

 彼女達はメルの視線に気が付くと可愛らしく首を傾げる。


 ウンディーネのその仕草を目にしたメルは何処か気が抜けてしまう。

 思わず笑みを浮かべた彼女の火照った頬にウンディーネ近づくとまるで冷やすとでも言うかのように抱きついた。

 実際には冷たいと感じることはなかったが、そのお陰もあってようやく落ち着きを取り戻したメルはリアスへと目を向け――。


「メル?」

「大丈夫だよ! 行こう!」


 彼女はそう言うとエスイルの手を引き歩き始める。

 そして、門の方へと数歩歩きだした所で立ち止まり、振り返ると……。


「フィオさん、リアスは必ず守るから……」

「…………」


 リアスの知り合いである女性に約束をした後、すぐに仲間達へと目を向けたメルは開いている手で頬をかきつつ――。


「ほら、行こう? 私じゃツィーアに着けないよ……」


 その言葉に仲間達は思わず笑みを浮かべ、中でもリアスは彼女の横まで歩み寄る。


「そうだな、迷子になったら大変だ。俺が案内するよ」

「本当にそうだけど、なんか複雑だよ……」


 メルはがっくりと項垂れつつ、リアスの横から逸れない様にしないとと考えたのだった。

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