177話 二人の研究者?
山小屋へと近づき、中へと入る。
それ自体は精霊と魔法の力を借り出来た。
そして、奥へと進んだ彼女達は目的の少女であるフィオを見つける。
しかし、その傍には二人組の男女が居り、何やら人を使って何かをしようとしているらしいが……?
このままでは攫われたフィオは何をされてしまうのか?
分からない所ではあった。
しかし、メル達は無事間に合ったのだ……彼女が心無い実験に巻き込まれる前に此処にいる。
「良いか? とにかく、この娘を――」
「その人に何をしようと思ってるの?」
メルは母より譲り受けた人を助けたいという想いに抗うことなくその声を発し、姿を現した。
彼女が魔法を解いてしまった事で仲間達の魔法も解かれ次々と姿を現し――。
「なっ!? こいつらは!!」
メル達を目にし二人は驚いた表情を浮かべた。
まさかそこに居るとは思わなかったのだろうか? メルがそう思っていると二人は笑みを浮かべた。
「なるほど、気配はしていたが、まさか消えていたとはな……そう言えば昔そんな魔法を売った覚えがある、なるほど、そう言った使い方もできるか……」
「なるほど、じゃない……それと関心もするな! どうするんだ?」
二人は武器を手に取り、口角をますます釣り上げる。
メル達もまた武器へと手を掛けるが……二人ははっと表情を変えた。
「まずい、非常にまずい……ここでは存分に戦えない」
「そうだな……なぁ、外に行こう……」
二人はそう言うがメル達は従える訳がない。
彼らが二人だけと限らないのだ。
それではフィオの安全は確保できたとは言えない。
それを察しているのだろうか二人は互いに目をあわせる。
「その娘が気になるなら連れて行けばいい」
「ま、どうせあんた達も負けて材料になるだけだけどね」
ニタニタと笑う二人に嫌悪感を隠すことなくメル達は表情を歪めた。
しかし、フィオを連れて行って良いという事はありがたく感じたのだろう……リアスの手により捕らわれの少女は抱き上げられ、メル達は男女を先頭に来た道を戻って行く――。。
あの人達一体なにを考えているの?
メルは疑問を感じつつ、周りにある大きなガラスの中へと目を向ける。
見た事もない魔物が入っていたりするそれを見ているとメルの様子に気が付いた男性は口角を釣り上げたまま説明をし始めた。
「それはキメラと言われる魔物だ」
「キメラ!?」
聞き覚えのあるその言葉にメルは思わず声を大にした。
いや、忘れろと言っても無理だろう……キメラとはタリムの王が生み出した魔物の事を指すのだ。
「おや、その様子じゃ知ってるのか? 幼いのに博識だな……」
「そのキメラに何で人を巻き込んでる……!!」
リアスは眠ったままのフィオを抱きかかえながら男に問う。
すると彼は何でもないかのような表情で――。
「知識、知恵……理性を得るためだ。人類と言われる三種族、いや今は四種族と言った方がいいか? 来られには自我という物がある。本能ではない、その時その時に考え、正しい解を導き出す力だ」
「それは一から作るのは難しくてね、人を使った方が手っ取り早いのさ……とはいえ反対してるんだけどね」
女性の方はうんざりとしているのだろうか、此方へと顔を見せないが反対とは言いつつもここまでフィオを連れてきた事には変わりがない。
「何を言っている、タリムの王は一部のキメラに人間を使い、知恵を授けた!」
「いや、そうだけどさ……」
男の言葉にさらにうんざりとする女性。
だが、そんな二人の会話を聞きつつメルはふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。
結局はフィオさんを利用して何かをしようとしたんだ!
メルはその怒りを耳と尻尾で現れている事を理解しつつ隠す気もなかった。
それを知ってか知らずか、前を行く二人は扉を潜り外に出るとある程度進んだ所で振り返りメル達を待つ。
「後ろからは攻撃しないで、こっちが構えるまで剣も抜かない、まるで騎士みたいだね……」
犯罪者の癖に……という皮肉を込めた言葉をメルは放つが二人は笑みを浮かべ礼儀正しく礼をすると答えた。
「これは光栄だ騎士などと呼んでもらえるとはな」
「私達も褒められたものだね」
「メルは皮肉で言ったんだよ!!」
ふざけた態度ではなく、あくまでも本物の騎士に様に丁寧に礼をする二人に対し、耐え切れなくなったのだろうシュレムはそう叫ぶ。
だが、二人は態度を改める様子もなく――。
「では――」
「騎士は騎士らしく……」
メル達が剣を構えると――彼らもまた構え始めた。
「「決闘を申し込むとしようか……」」
騎士と言いつつその瞳はまるで氷や冷えた鋼鉄の様に冷たい。
更に例えると目の前の獲物を狩る鷹……いや、魔物の様な瞳だ。
決して騎士なんかではない。
メル達はそう思いつつもそれぞれの武器を構える手に力を籠める。
だが……。
「そっか、オレのは……」
シュレムはその表情に困惑を浮かべる。
当然だろう彼女の手元には武器である大盾が無いのだ。
「シュレムはフィオを守ってくれ! 体術ぐらいは使えるだろ?」
だが、そんな彼女の心情を察しているのかは分からないがリアスの言葉に顔を上げたシュレムは――。
「はん! 元より女を見捨てるなんて事はしないぜ!!」
いつも通りの笑みで右拳と左手の平を合わせ音を鳴らした。
「さて、じゃぁ準備は良いかな?」
「本当に……以外にもちゃんと待ってくれるんだね」
メルはアクアリムを構え二人を睨む――。
すると二人は大きなため気を付きメルの問いに答えた。
「騎士と言ったのはそっちだ」
「だから騎士らしくした……勘違いするなよ?」
私達を見下してる?
メルはこれは好機なのでは? と思うがその考えは浅はかであったことをすぐに知らされた。
「いくら子供でも実力を持つ者が居る、それに、君達は私達に気配を悟られはしても追い詰めてきた訳だ……実力は確か、安易に飛び掛かるのは愚策だ」
「だからこそ確実な隙を狙う、戦いの基本だろ?」
相手はメル達を一切見下して等いなかった。
何故? という疑問は浮かぶが今はそれよりもフィオを助けることが先決だ。
そしてそれを成すには目の前の敵を討たなければ難しいだろう。
何故なら二人はメル達の進行方向に立っており一切の隙を見せないからだ。
だからこそ、メルは――いや、メルとリアスは……。
「なら、こっちから仕掛ける!!」
大地を強く蹴り、その刃を振るうのだった。




