172話 依頼主の家へ
娘を探してほしい。
フィッツにそう言われたメル達は依頼を受ける事にする。
果たして、行方不明となった女性フィオは無事なのだろうか?
依頼を受けたメル達はフィオという女性を探すことになった。
しかし、大した情報はない。
「あの、一度家にお邪魔しても良いですか?」
メルはフィッツにそう告げる。
リアスの言う様に人の仕業だとしても、魔物の仕業だとしても何らかの情報が残っているはずだ。
そう思ったからであり、それを察したのだろう宿の主人スタッドは――。
「フィッツ、下手に触っちまう前に何か手掛かりがないか調べてもらった方がいい」
「あ、ああ……冒険者さんリアス、ついて来てくれ!」
娘を探してもらえると知り、少しは落ち着いたのだろうフィッツと言う男性は再びメル達に頭を下げる。
当然メル達はそれに応え、彼の家へと向かったのだった。
その途中――
「なぁ、メル……あの魔法は違うのか?」
シュレムがメルに問うのはある魔法の事だ。
そして、メルにはそれが何の魔法の事を言っているのかが予想できた。
いや、寧ろ他にシュレムが問うほどの魔法が無いと言った方がいいのかもしれない。
「分らない、無いとは言い切れないけど……」
あの魔法はユーリママが作り直した。
だからもとになった魔法がある……その魔法も広まってないとは言い切れない。
だけど、その魔法を使える人が関わってることまで考えたらややこしくなっちゃうよ。
そう思う一方でその事も視野に入れておかないともしもの時、困るのではないか? と考えるメル。
そんな彼女にライノは――。
「シュレムちゃんが言った事、すぐに調べられるのかしら?」
「い、いえ……それは難しいと思います」
正直に答えると彼は頷いた。
「なら、頭の片隅に覚えておいて進展しない様なら考えれば良いのよ? まずは情報を集めましょう」
「僕も頑張って調べるよ!」
ライノとエスイルの言葉を聞きメルは一瞬目を丸める。
人が居なくなった。
だからこそ、早く見つけだしたいとメルは考えていた。
捕らわれの身であるのは不安だ。
そして、その親族であるフィッツもまた不安を抱えている。
それが理解出来ていたからだ……そんなメルの考えを知ってか知らずか――。
「二人の言う通りだ。シュレムの言った事が何か関係があるなら調べればいい、闇雲に調べても今は無駄に終わる可能性がある」
リアスは微笑みつつメルに告げ、その言葉を聞きシュレムは眉を吊り上げ反論をする。
「お前な……オレは心配を――」
「分ってる……だから言ってるんだ。今は何も分からない俺は違うと言ったが魔物の可能性だってある。勿論野盗だってそうだ、恐らく可能性で考えればシュレムの考えている事も無いとは言い切れない」
現状では人一人消えたという事だけしか分かっていない。
その事を確認するかのようにリアスは淡々と口にし――。
「相手はそれ理解してるかもしれない、一つ一つ潰して正解を見つけ出すしかないだろ?」
だからこそなのだろう、リアスは冷静にそう口にしているかに見えた。
だが、メルの目に映ったのは――。
「…………」
優しげな顔の中、どこか怒りに震えているような少年の瞳だった。
そう、だよね……リアスの知り合いが居なくなったんだ。
私で言えばシュレムやエスイル達が居なくなったと同じ、心配してないはずが……怒らないはずがない。
メルは彼の瞳から目を離さず。
仲間に向けて口にした。
「必ず見つけよう、だから……私達が焦ったらだめだよ。なにか気になることがあったら関係があるか調べ見よう!」
「……そうかよ、分かった。確かに焦ったって見つかる訳じゃないしな! メルが言うなら仕方ない、早く見つけて助けてやりたかったが――」
シュレムは不満なのだろう口をとがらせリアスを睨む。
そんな彼女に対しリアスは苦笑すると――。
「何笑ってるんだよ……」
「いや、助かるよ。例になるか分からないが……フィオが見つかったら食事ぐらい一緒に取ってもらえるように言っておくよ」
「――本……じゃなくて! オレはメル一筋だからな!?」
そう叫ぶ、シュレムだったが、明らかに顔がにやけていたのをメルは敢えて黙っておくことにした。
「み、皆さん着きましたよ!!」
そうこう話している内にフィッツの家に着いた一行は彼の娘であるフィオと言う女性の部屋へと足を運ぶ。
途中、彼の妻らしき女性がおろおろとしているのを見てメルは軽く頭を下げると――。
「あ、アンタ!? 心配なのはアタシだって同じだよ! でも、ぼ、冒険者なんて家のどこに……」
慌てた女性はフィッツに耳打ちしたのがメルには聞こえた。
エスイルも同様だったのだろう、メルと目を合わせると互いに頷き――。
「「|報酬はすでに食事としてもらってます《もう僕達はおじさんに報酬? をもらってるよ!》」」
っと告げると、女性は驚いた風だったが、すぐに旦那であるフィッツへと目を向ける。
するとフィッツは頷き――。
「リアスも彼女達もフィオを探してくれると言ってくれたんだ」
「……それは、ありがとうございます。アタシは心配で心配で……それにしても何だかゼルの所の冒険者を思い出すね」
「おいおい、あそこにはがめついのも居たろ?」
ゼル……その名前にメル達は聞き覚えがあった。
勿論忘れた事もない、月夜の花という酒場の店主であり、ナタリアやマリーの友人だ。
月夜の花とはユーリやフィーナ……そして、今話に出たであろうバルドも所属していた酒場だった。
「あの人はあれで良いんだよ、皆が皆ああだったら店潰れちまってはずだよ」
彼女は何かを思い出すかのように呟くと再び、メル達へと目を向け――。
「部屋はそのままにしてあるから、お願いします冒険者様」
メル達はは彼女に答えるとフィッツの案内の元、その部屋へと足を踏み入れた。




