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104話 少年の想い

 メル達は戦う事を決めた。

 しかし、それは同時に身を守る手段にもなるだろう……。

 新たな戦いへと向け、メル達は準備を始めるのだった‥‥…。

 翌日メル達は全員で行動し……防具屋へと向かっていた。

 目的はリアスの防具を受け取る為であり、その近くにある武器屋にも用事があったのだ。

 防具屋の門をくぐると店主がメル達に気が付き笑みを浮かべる。


「おう! 完成してるぞ坊主!」


 待ってましたと言わんばかりに奥に入った店主は一つのローブを持ってきてそれを机に置く。


「仕上がりはちゃんと確認しろよ! 後でこうじゃないって言っても直すには金がかかるぞ」

「分ってる」


 店主の言葉に頷いたリアスはローブを隅々まで確認し、その出来に満足した様に頷く……。


「それにしても今日は何だ? ゾロゾロと……」

「えっとこの子に合う防具が欲しいんです、やっぱり動きやすい物が」


 メルは店主にそう伝えるとすぐににこやかになった店主は――。


「そう言う事か! だったらこの前見た所に良いのがあるはずだ」


 彼はそう言うと以前メル達を案内した場所へと指を向けた。


「リリアちゃん、見に行こう?」

「うん……」


 メルはリリアを連れそこへと向かう。

 それを横目で見ていたエスイルは何か言いたげな表情を浮かべ――。


「エスイルちゃん、ほら、はっきり言いなさい?」


 ライノに言われエスイルは彼の方へと目を向け大きな瞳をぱちぱちとしばたたかせる。

 暫く黙っていた少年は大きく頷くと――。


「おじさん! 僕も! 僕に合う物が欲しいんだ!」

「エ、エスイル!?」


 彼のその言葉に当然メルは驚いた。

 エスイルはまだ幼い少年だ。

 冒険者として認められる歳ではあるが、彼は戦う手段がないのだ……。


「ああ、うちは色々あるからな、どんなのが欲しいんだ坊主!」

「うん! その……あまり重くないの」

「だったら姉ちゃん所行ってきなそこにあるからよ! もしデカすぎる場合は言いな、ちゃんと直してやる!!」


 店主の言葉に頷きメル達の方へと歩み寄るエスイル。

 そんな彼に対しメルは慌てた様に肩を掴み――。


「ぼ、防具が欲しいってまさか戦うつもりなの!? それともただ身を護りたいだけ? ね? お願いだから戦うとか言ったら駄目だよ!?」


 エスイルはまだ小っちゃいんだし、リリアちゃんみたいに特別な修業をしてた訳じゃない。

 そんな子が戦うなんて無謀に無茶……怪我じゃ済まないよ!?


 そう頭の中でメルは言葉を続け、エスイルの答えを待っていると――。


「ぼ、僕も戦う……」

「駄目に決まってるでしょ!? 前に何とかなったのはライノさんのお蔭なんだからね!?」


 メルは確かにエスイルに助けられた。

 その事は忘れもしないし感謝もしている。

 だが、それはあくまでライノの薬があったからこそなのだ……そして同じ状況になった時同じように動けるとは限らない。

 メルが心配するのも当然なのだが……。


「大丈夫だよ、それにお姉ちゃん言ったよ? 男の子なんだから支えてあげて欲しいなって」

「それは……」

「はぁ……防具を買う事には賛成だ。だが……俺もメルと同じ意見だな……」


 メルが言葉を詰まらせるとリアスは溜息をつきつつ、そう口にした。

 そして、彼はゆっくりとライノの方へと目を向け――。


「一番止めそうなライノが黙ってるって事は……何か知ってるのか?」


 そう言うとにっこりと微笑んだライノは――。


「それはね? 昨日後の後相談されたのよ……精霊が力を貸してくれるって言ってるってね?」

「せ、精霊が?」


 メルは予想外の言葉に驚くが……すぐに近くに居るシルフ達へと目を向ける。

 すると――シルフは屈託のない笑みを浮かべメルの周りを飛び回り――。


『エスイルが心配なら私達が力を貸すよ!!』

「で、でも……」

「待ってくれよオレだってわかるぞ精霊魔法って詠唱が長くて……」

「ああ、オイラも聞いた事ある精霊の力を借りる分、詠唱が短く出来ないんだよな?」


 そう、二人の言う通り精霊魔法には決定的な弱点がある。

 それは詠唱が長く短く出来ない事……その分魔法より強力かと言われるとそうでは無い事……。

 それもそうだろう、精霊魔法は魔族(ヒューマ)を倒すために森族(フォーレ)の親であるエルフが与えたものなのだ。

 エルフという豊穣の精霊はこの世界の創造主と呼んでも過言ではない、あくまで魔族(ヒューマ)に対抗するための手段だったのだ……。


「あら、精霊魔法は確かに使い勝手が悪いわ、でももう一つあるのよ?」

「も、もう一つって……」


 それには心当たりがあった。

 メルの母であるフィーナ、そしてその義理の姉ジェネッタが得意とする。

 精霊魔法以外で精霊の力を借りる手段。

 それは――。


「精霊召喚……」


 森族(フォーレ)の中でもソレが出来る者は決まって生命の精霊が見えると言う。

 エスイルは首飾りの後継者としても選ばれており、それが出来てもおかしくはなく――。


「でも、危険なのは……」

「おいおい嬢ちゃん! その坊主が心配なのは分かる。だが、自分の身は自分で守る、そん位の事出来る方が良いに決まってるだろ!」


 店主の言っている事は分かる。

 だが――。


「僕もう我慢できない! だって僕なにも出来なくて……でも精霊が力になってくれるって言ってくれたんだ! 僕だって皆の役に立ちたいよ!」


 その瞳は真剣な物でメルは冒険者になりたいと言う夢を語る時、自分はあんな瞳なのだろうか? と考えると強く否定することが出来なくなってしまい……。


「ぅぅ……分かった分かったよ……でも無理だけは絶対にダメだからね?」


 メルの言葉にぱぁっと表情を明るくした少年エスイルは――。


「うん!」


 ――嬉しそうにそう言うと防具を選び始めた。

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