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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
1章 冒険者になりたいっ!
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10話 老婆の家へ

 少年が嘘を言っている様には見えない。

 メルの知り合いであるノルドにそう言われてしまい、渋々祖母の元へと向かったメル達。

 そう、祖母には特別な力があり、考えている事が見通せるのだ……

 その結果、少年が嘘を言っていない事が分かり……?

「シルフ!!」


 屋敷を飛び出したメルは風の精霊の名を叫ぶ。

 一度行った場所とは言え、絶対迷うからだ。

 こういう時、ユーリにも内緒にしている魔眼があって良かったとメルは考えた。


「さっきの家までお願い!」

『分かったよ、メル!!』


 しかし、今はそんな事より、急いで鞄を回収しようとメルは足を一歩踏み出した時だった。


「おい!!」

「うわわっ!?」


 急に止まろうとしたからだろう、彼女は前に転びそうになるが何とか踏みとどまると声の方へと振り返る――。

 そこには先ほどのボロフードの少年が立っていて、彼はフードを取りメルの方を睨んで居た。

 だが、今度は怒っている様には見えない。


「君は……まさか追いかけてきたの? なんで、危ないんだよ?」


 追いかけてきた彼に対し、メルは困った様な表情を作り、そう伝える。

 だが、それに対し少年は呆れた顔で答えた。


「あのな……それはこっちの言葉だって! いくら君の不手際でも女の子一人に任せるのはどうなんだよ……」


 事実を知ったからか、やはり怒気が抜けた声で少年はそう言うと、その瞳をメルへと向ける。


「何それ、女の子だからって――」


 メルが言い返そうとすると彼は大きなため息をつく。


「俺から鞄盗った時もだけどさ、お前……手加減するだろ」


 真剣な表情を浮かべた彼にそう告げられた。


「――え?」


 その言葉にメルはぎくりという音が自身の体の中から聞こえたような錯覚に陥った。

 先日も言われた事だからだ……ゼッキに言われるならともかく、恐らくは歳がそう変わらない少年にまで言われたのだから、彼女は何故分かるのかと尚更驚いてしまった。


「騙された時、俺を泥棒……悪人だと思ってたんだろ? なら普通の冒険者なら多少怪我させても荷物を奪い返すはずだ……だけど、お前は怪我を負わせない方法を選んだ」

「それは偶然――」

「だったら魔法で荷物引っ張った時になんで躊躇(ちゅうちょ)したんだよ」

「よ、良く見てるね……というかバレてたんだ……」


 少年が言ってる事が正しいと言う事は他でもないメル本人が一番理解していた。

 なにせ彼女は傷を負わせないよう……万が一の事が無いようにと魔法を使った……だからこそ強引に取る方法はあえて避けたのだ。

 ……メルがその時の事を思い出していると、何故か少年はその顔を逸らす。


「ん?」


 その顔はどこか赤く、何かあったのだろうか? と疑問に思っていると……。


「そ、その事だけどよ……あの、なんて言うか……」

「どうしたの? それに早く行かないと……」

「相手に手加減をするのは勿論、スカートで高い所に行くのは……気を付けた方が良い」


 少年が口にしたのはメルが思いもしなかったことで……。


「……………………は?」

「それにそれ、短いだろ? 見ようと思ってなくても見えてたし……その、周りの奴もお前が去った後に騒いでたぞ」

「――――っ!? 最ッッッッッッッ低ッ!!」

「いや、その……怒る気持ちは分かるけど、そんな抜けてる子一人で――」

「うるさいこの変態! スケベ!!」


 彼女は彼に怒鳴り声でそう告げた後に走り出す。


 心配してくれてちょっと良い人なのかな? って思ったけどそんな事無かった! さっさと荷物を盗り返してこの人とは今後一切関わらない様にしよう!!


 そう心の中で怒鳴り声を上げ、メルは走る。


「お、おい!? そんなに走ると危ないって……また!」

「~~~~!! うるさいこの馬鹿!!」


 そう言う事は大声で言わないでほしいのに! 彼女は再び声なき叫びをあげ――振り向かずに疾走し目的の場所へと急いだ。




 

 暫くすると彼の声は聞こえなくなり、メルの前を行くシルフは先程の少年が気になっているのだろう、チラチラと後ろを覗き込む。

 だが、実際には何の意味もない行動だ。

 彼女達精霊が見れるのはあくまでメルの見ている景色なのだから……。

 それでも後ろを見るのはメルが逃げている時の真似をしているだけだ、慣れ親しんだ行動だけどシルフの真似に思わずメルはちょっと可愛いと心の中呟いた。


『メル……』


 彼女がそんな事を考えていると、シルフは心配そうな顔を浮かべメルの方へと顔を向ける。


「急ごう!」

 

 その様子にはやはり可愛らしさがあり、メルは幼い頃シアに無理を言って縫ってもらい、今だ部屋に置いてあるシルフ達精霊の人形を思い出す。

 大事な思い出の一つだ、思わず顔がほころびそうになった彼女だが、今は和んでいる場合では無いと表情を引き締める。


「シルフ、今どの位?」

『えっと……もうすぐだよ!』


 メルはシルフが言葉と共に指した方向を睨み、頷く……。

 武器が無いのは不安……だけど、私が持ってるのはドゥルガさんが作ってくれた木剣だけだし……。

 取り返すのが目的なんだから、極力戦うのは避けた方が良いよね?


 とメルは考え――シルフへと視線を動かした。


「……行こう、シルフ」


 相棒であるシルフへと声をかける。


『うん!』


 するとシルフは元気な声を発し答えた。







 それからメル達が少し走ると辿り着いたのは間違いなくあの家だ。

 勿論、メルが居るのは目の前、ではなく窓から見えないよう路地の裏に身を潜めていた。

 その様子は随分と怪しいが、家の前でどうしたものかなんて悠長に考える程、メルは愚かではなかった……。

 なにより、ばれた時に戦いになるかもしれないのだ。

 いくら甘いと言われようとそれだけは避けたいと考える彼女は――。


「なら……こうするしかないよね」


 彼女はぼそりと呟いた後にユーリに教えてもらった魔法の詠唱を思い出し……。


「我望む、数多の危機を避ける身を、クリアトランス」


 唱えると彼女の身体は徐々に透明になっていき周りの景色に溶け込む。


「よしっ!」


 透明化の魔法、一般的なものでは無くあまり知られていない魔法だ。

 これなら忍び込むのに最適だろう。

 だが、魔法をかけている内は当然、魔力を消耗し続ける。

 メルは母ユーリから教わった事を肝に銘じて置くと相棒へと声を掛けた。


「シルフ、ちょっと待っててね? 危なかったら呼ぶから」

『うん、分かった!』


 シルフの答えを聞いたメルはその身を消したまま扉へと近づき、辺りを見回す。

 見たところ空いている窓などは無い……だが、一つ気づいた事はあった……。


「…………」


 彼女の視線の先、窓には人影があった……。

 今は隠れており、良く見えないが少なくとも先程の老婆ではない。

 いや、そもそもあの老人と見間違えるはずが無い。

 メルが人影を睨んでいるとそれは再び窓へと張り付きはっきりと見えた男性だ――。

 彼はキョロキョロと辺りを見回している。


 な、なんというか……あれは、怪しすぎる。

 私でもやらないよ……。


 メルがそう思っていると窓の男は後ろから誰かに叩かれた様で彼は頭を擦り始めた。

 彼が窓際から去った後、そこに誰も居ない事を確認しメルは扉を叩く……。

 そして、もう一度窓を見ると今度はカーテンの隙間から先ほどの男がメル――扉の方へと目を向けているのが分かった。

 あれで隠れてるつもりなのだろうか? そう思っていると男は顔を引っ込め――暫くすると扉がゆっくりと開く……。


 それに対し、メルはあんなに警戒しててそんな簡単に開けるの!? と驚かされ、扉からすぐに離れる。

 扉から顔を出したのは窓の男だ――。


「やっぱり誰も居ませんぜ、兄貴……ガキの悪戯かもしれない」


 彼は窓に居た時と同じように辺りを見回し、そう言うとそのまま開っぱなしで扉の陰に身を隠した。


「馬鹿野郎!! 簡単に開ける奴が居るか!!」


 男性の声に答えたのは男性の怒鳴り声だ。

 あの老婆の姿は魔法を使っていたのかもしれない。

 そう思いつつメルはこの好機を逃さないために物音を立てないよう注意し家の中へと入る。

 中に入るとそこに居たのは男性が三人……扉を開けた窓に居た男、薄手の服に小さいナイフ、小瓶が腰についてる、恐らくは傷薬かなにかだろう。

 呆れ顔の大男、筋肉が目立ち、メルは当然のように殴り殺されてしまうかもしれない。

 彼のすぐ後ろにある鉄棍棒が武器だろう……。

 そして、初老の男性……ヒゲは白く、でも体つきは決して貧弱ではない。

 今手入れしていたのだろうか? メルの母親、フィーナの程ではないが大ぶりな剣にぽんぽんとなにか白い粉を付けていた。

 メルはその剣を見て初めて見る形だ……と声に出さず呟いた。

 薄い刃は欠けた月の様な曲線があり、簡単に折れてしまいそうだ。

 だが異様に剣の腹の部分は広く、数多の武器防具を揃えるリーチェの店でさえメルは見た事が無い物だった。


「この馬鹿が!! 早く閉めねぇか!!」

「す、すいやせん」


 扉の男は謝りつつ、扉を閉める……その様子を呆れ顔で見ていた大男は一つ溜息をつくと老人へ顔を向け、ニヤリと笑った。


「んで、親父……他によさげな売り物あるって言ってたな? それはすぐに手に入るのか?」

「ああ……世にも珍しいもんだ。売れば金貨百……いや二百はいくかもしれない、なにせ恐らくこの世に一つだ」


 メルは会話を聞き、呆然とした。


 あんな事をしてまで手に入れた鞄……それも持ち主のあの人が慌てるぐらいの物。

 相当、高い物に違いないのにそれを手にして、この人達はまだ足りないの?

 これ以上誰かの物を盗むつもりなら、暫く冒険者になりたいって言えなくなっちゃうけど、戻ったらすぐにママ達に事情を説明しよう――そして、すぐに捕まえてもらわないと! こんな人達野放しに出来ないよ!


 そう心の中で固く誓うとメルは部屋の中を見回す。

 とにかく今は来た目的を果たして逃げる――後の事は思った通り母達に任せようと思ったのだったが……。


「ま、先にコイツをさばきたい所だが、まだこの街を出ていく訳にはいかねぇ、それを手に入れてからだな」


 メルが初老の男の視線を辿ると……求める物が見えた。

 だが、よりにもよってその鞄は部屋の真ん中にある机の上にあった。

 あれではいくら透明化の魔法を使っていると言っても鞄だけが浮かべば、バレてしまう……。


 どうにかして隙を作らないと――。

 で、でも……一体どうしたら良いんだろう……。

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