表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハッピーエンド

作者: あめ

灰色に塗りつぶされた空と黒ずんだアスファルト。色を求めて窓の外を見渡しても、無機質な秩序が存在しているだけだった。


真っ白に照らされたオフィスで、仕事が上手く行かずに上司に怒鳴られ、その様子を見た同僚達には相手にもされず、完全に俺の居場所はない。

上司に謝り続けた後、定時になると誰にあいさつをすることもなく帰宅する。身体が重くて椅子を立つのに苦労した。


窓から眺めるよりも、外の世界は病的なほどに秩序を守っている。ビルの群れは等間隔に並び、行き交う人々は青い信号を見ると一斉に歩きだす。

簡単そうに秩序を守る。そんな誰にでも出来ることが俺には出来なかった。

生きているのがひどく不安定な状態で、揺らめきは身体の中を直接伝わり、俺はトイレに駆け込んで吐いた。


事が終わり、ふとトイレの床を眺めるとタイルの溝にミミズがいる。しかし何かが違う。それは頭でっかちで、しかもその頭には歪んだ猿の顔がついていて、キチチチチと妙な音を立てながら、こちらに近づいてくる。

気味が悪く足で踏み潰そうとした時に、素早くこちらの足を伝って、目の中へ飛び込んできた。


「おはようございます!」

俺は生まれて初めて、周りと同じようにあいさつができた。上司はニタリと笑っていった。

「やっと社会人らしくなってきたね。君にも仕事を回してあげるよ。」

同僚達も微笑みながらねぎらいの言葉をかける。世界中の人が俺を世界の一部として認めてくれていた。


全員、その目に例のミミズを泳がせながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ