40話 仲間を想う力
チタは刺さっている鋭い氷を引っぱった、引き抜くと血がドバッと溢れ出てとっさに傷口を抑えた。
もう片方の手で、残りの2つを引き抜き投げ捨てた。
『雷神の制限時間は確認していたが、まさか攻撃を受け過ぎると無くなるとわ…。』
左手の短剣をしまい右手の短剣1本を構えた。
『こっちから仕掛けるのは、太ももに刺さったせいで厳しいな、カウンターを狙うか。』
『チタの機動力は落とせたが、隙を見せたら一瞬で切りかかって来るだろうな。遠距離で様子を見るか…。』
「アクアボール。」
バランは大きな水の玉を作り、手で覆い蒸発させた。
そして大きく息を吸い、大きく吐いた。
「ミストブレス。」
闘技場中が煙で覆われた。
『流石バランだな、これは厳しいな…。』
チタはしまった短剣を、痛みを我慢しながら左手で持った。
『飛氷!』
バランは大剣を振り鋭い氷を4個飛ばした。
チタは二本の短剣を後ろで構えて、勢い良く大きく前に振ると、傷口から血が飛び散った。
「音速夢双・風神!」
風に乗った短剣から竜巻が発生して、竜巻は風神を形作った。
風神は勢い良く前に進み、鋭い氷を弾き落として、煙を吹き飛ばし、搔き消しながら前に進んだ。
『チタが何かしたのか?』
バランの方からは、ヒューー!と風の切る音が微かに聞こえた。
そして風神はバランの目の前に現れた。
『流石チタだな計算外だ、視界を奪った事で反撃は来ないと思い込んでしまった。』
バランは大剣で瞬時にガードするも、強力な風に吹き飛ばされて闘技場の壁に激突した。
煙が全て吹き飛び観客は、壁で倒れてるバランの姿に驚いていた。
バランはすぐに立ち上がり大剣を構えた。
『チタ!あの時の力を使わせてもらうよ。』
「氷天花・冬月の纏!」
バランの大剣は凍り、冷気を纏っていた。
チタはバランの魔法に立ち止まった。
『あの技は………!!??
昔、俺が入隊して間も無い頃の話…。俺はあの頃、親の力で入隊出来た奴らを嫌っていた。
俺が所属した第2部隊と第1部隊の合同任務があった。そこで俺が大嫌いなバランと、同じ任務に参加した事があった。
「チタ、今日はよろしく!協力して頑張ろう!」
少年の頃のバランが握手を求めた。
「フン、努力もせずに才能と親のお陰で入隊出来たお前と協力などするか!」
俺は握手を断り去って行ったんだったな。あの頃の俺はバカで、バランの努力など見ずに全て才能と、親 の力としか見てなかった。
そんな俺はバランより多くの魔族を撃退しようと、先陣を切り迷子になった。そこで武装ゴブリンの群れに囲まれて、俺は死を確信した。
あの頃の俺達は入隊したばかりで、ゴブリン1体すら、敵うか分からないほどの相手だった。
そんなバカな俺を、バランは必死に探して助けてくれた。その時の技はハッキリと覚えてる。
冷気を纏ったバランの剣で、切った武装ゴブリンは一瞬で凍結していた。
そしてバランは握手を求めてこう言った。
「俺達は仲間だ!そして親友になれる!」
あの時初めて分かった、バランの力は才能や家系の力ではなく鍛錬と、仲間を想う力だと。
あの時は、バランには敵わないと思ってた。
だけど、俺にもたくさんの仲間が出来た。
バランの仲間を想う力と互角に渡り合える力を…。』




