25話 最期の想い
互いに切りかかった瞬間、マーズは剣から手を離した。
そしてジュピテールはマーズのお腹を突き刺した。
「ぐわぁっ! ……なぜか余り痛くないな…。」
マーズは小さく呟き吐血した。
マーズはジュピテールにもたれ掛かり立っていた。
マーズのお腹から血が垂れ出し、ジュピテールの剣を伝って剣を握る手にまで血が垂れていた。
「ジュピテール、メルキュールの事はすまなかった。
2年前に病気で死んだ……。」
血を吐きながらジュピテールに囁いた。
ジュピテールの剣を握る手に一瞬力が入った。
ゆっくり剣を抜きマーズを横に寝かせた。
「くっそぉおーーーーーぉぉお!!!」
ジュピテールは叫び、壁に拳を叩きつけた。
『もし私が国王の後継にされなかったら、マーズ兄様とメルキュールとずっとずっと…コスモス王国で暮らせていたんじゃないか…。
もし私が居なかったら、マーズ兄様とメルキュールは平和に暮らせていた…のか…。』
ジュピテールは壁に手を添えつつ、膝から崩れ落ちた。
「ジュピテール、今のお前の思考は丸分かりだな。
お前の器は少し大きくなり過ぎたか?自分を責め過ぎだ…。」
マーズはかすれた声で呟いた。
『俺は突発的な怒りに飲まれるほど器が小さ過ぎた。
メルキュールは人質として無理やり拐った俺に対して、普段通り接してくれた。
器の大きな2人の弟と妹に何もしてやれなかったな…。』
「ジュピテール子供達には平等にしてやれよ…。」
マーズは声を絞り出し呟くと、静かに目を閉じた。
「マーズ兄様ぁあーーーーぁああ!」
昔の様な優しい表情で目を瞑ったマーズを見て、ジュピテールは泣き叫んだ。
『最期に声を絞り出して言った言葉が、自分の失敗した理由を当て付けの様に言ってしまったな。
最期に少しジュピテールに甘えてしまったか…俺の事など忘れてくれたら良いのだがな。
もし叶うなら俺もメルキュールと同じ世界に行きたいな………。』