24話 ジュピテールの想い
『何だあれは!?』
バランがサングラスを外し王城の方を見上げた。
王城には1本の大きな樹が生えており、雲を貫き天高くそびえ立っていた。
『あんな大樹一体誰が!?お父様も確か木の魔法を使うが……。
まさかマーズがあれを、だとしたらやばいな。』
バランが混乱しながら考えていた。
「おーいバラン!1〜10地区捜索終わったぜ、全部ハズレだったけどな。」
チタ達第2部隊が後ろから走ってきた。
「それとさっき凄い地鳴りがあったよなー、誰かの魔法か?」
「あれが音の正体だな。」
バランは王城を指指した。
「なんだありゃ!?あのでかさを魔法で作り出したのか……あっ消えちまった。」
大樹は静かに消えて大気中の魔力に溶け込んだ。
「バラン隊長13.14.15.16地区全てハズレでした。」
目の前の屋根から第1部隊の隊員4人が飛んできた。
「分かった、1〜16地区に居ないとなると後は王城だけだな。」
バラン達とチタ達は王城へと向かって走って行く。
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ジュピテールに向かって、1m程の青紫色の水晶の槍が飛んできた。
そこに騎士団長が飛び込んで来て、真っ二つに切った。
「すみません国王殿、騎士団長としての勤めを優先させて貰います。」
騎士団長はマーズに向かい剣を構えた。
「助かったのは感謝するが、今は下がっていてくれ!」
ジュピテールが声を上げた。
「ジュピテールいつの間にこんな魔法を…使える様になったんだ…。」
マーズが弱々しく声を出した。
「マーズ兄様が国を出てから私は国王になり、国王としての器の小ささに恥…強くなったのです…。」
「器の小ささか…。
俺は兄としてただ国王になりお前達を守りたかった、ただそれだけを目標とし生きていた…。」
「それなのにどうして兄様は国を裏切ってまで、国王になろうとしたんですか!?」
ジュピテールは声を荒げて話し、話を続けた。
「あの時お父様が国王の後継は私と言った。
けど私は望んでなかった、私も兄様が国王になって欲しかったからだ。」
「その事であの後、ジュピテールとあの老ぼれ国王が揉めていたのは知っていた…。
だがその時俺は思った…。」
マーズは不気味に笑い出し笑いながら続けた。
「あの老ぼれジジイの作った国などつまらないと!
そして俺はこの国を見つけて支配した!」
「なぜメルキュールまで巻き込んだ!」
ジュピテールは声を上げた。
「……さぁな、ただの人質だよ…。」
『マーズ兄様…もう昔の優しかった兄様じゃないんですね……。』
ジュピテールは少し潤った瞳を拭いて、剣を強く握った。
「そして俺は気づいた、国王は国を守るのではない!
国を支配し俺の物にするのが国王だとな!!」
「これで最後だ、マーズ兄様…。」
ジュピテールは走り出し切りかかった。
「ジュピテールお前の命の最後だな!」
マーズも血を飛び散らせながら走り切りかかった。