115話 クロアナ
「なんか、暑いな!」
サタン達とエルフ王が、激しい闘いを繰り広げている箱の外で、チタが戦闘服を摘みパタパタと扇いでいた。
フォリネが右手に水の玉を作り出し、チタの顔にぶつけた。
「そうか?…なら、水風船。」
バシャッ!チタは首を振り水を振り落とした。
「何すんだよー!」
「ふふっ」
「いやでも少し暑いよ、というか箱の方から魔力の熱気が溢れているね。皆さん警戒を!」
アルスが話した。
「りょーかい!アルス隊長!」
「ボス了解!」
アレイユとリュンヌとキャンディスが返事をした。
「アルス隊長了解しました。そして皆様遅くなりました。」
『この声は!』
「フォリス!!」
チタが振り向くと、フォリスが微笑んでいた。
チタはフォリスに飛びつき抱きしめると、フォリスが何かを話そうとした。
その瞬間後ろから歓声が上がり掻き消された。
フォリスの後ろには、援軍を呼びに行ったノワール・ブラン・ルミエルの三人が空を飛んでおり、その下に各国の王や、騎士団の手練れ達が並んでいた。
「マーズ兄様、油断しないように。」
ジュピテールが話した。
「昨日のエルフ族の親玉だろ?油断するかよ!」
マーズが声を上げた。
「あれはお互いの可愛い部下達に、助けられましたな…。」
ジュピテールが呟くと、フォリスとカールが顔を見合わせた。
コスモス王国では昨日の夜に、ガーベラ山脈での闘いの時に見逃していたエルフ族の隊長が、宣戦布告の時にキュリノスと来て、捕まっているジュールを助けるために、コスモス王国で小さな戦いがあったのだ。
「色々あったみたいですね、父様。」
「バランもな。」
「シュヴァードは何処なの?」
ムーシュがバランに尋ねた。
「あのキューブの中で、猫剣王さんとランクスさんと、ブリズクイーンさんとウルフードと、サタンさん共に、エルフ王と闘ってます。」
『今回の戦争を仕掛けて、世界を…全種族を敵に回したエルフ王と、たった6人で…!?』
「そ…そうですか。」
ムーシュは不安気に呟いた。
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『凄まじい光と魔力に、とっさに目を瞑ってしまったが……生きてる…。』
シュヴァードがゆっくり目を開くと、九角形の紫色の障壁がシュヴァード達を覆うように、囲まれていた。
「大丈夫かぁ?すぐに奴の追撃が来るぞ。」
サタンが声を上げた。
シュヴァード、ブリズクイーン、ウルフードはすぐに立ち上がった。
猫剣王は周りを見渡すと、声を荒げた。
「ランクス!ランクスはどこだ!?」
「すまんのー、彼の死体を庇うのは、間に合わんかったぁ……。」
「……そうか。」
「わしの宇宙魔法をこうも防がれるとは、それにこの中に四天王魔法使いは、誰もいないというのに。
仕方がない、1週間に1回しか使えぬとっておりを、見せてやろうか!」
エルフ王がそう話すと、両手で地面を突き声を上げた。
「黒空無!」
すると、ウルフードの足元が真っ黒になり、一瞬でウルフードを吸い込んだ。
真っ黒な魔力は瞬く間に広がっていき、ブリズクイーンを吸い込み、シュヴァードの足に触れようとした。
「飛べ!」
『サタンさん!』
シュヴァードはサタンの声を聞き、とっさにジャンプすると間一髪、魔力を逃れた。
そしてシュヴァードの足元に、紫色の魔力の足場が出来ていた。
足場に触れると、ビキッ!とヒビが入り足場が崩れ魔力に飲まれ、踏み損なったシュヴァードもそのまま魔力に飲み込まれた。
「甘かったな、黒空無からは逃れられない。魔界の王であってもな!」
エルフ王が両腕を上げると、真っ黒な魔力はサタンを捕らえるように、動き出した。
サタンは紫色の魔力で防いで、凌ぎ続けようとした。
『我慢比べ……魔力の絶対量が圧倒的に負けてるのー、さて残された者の為に、少しは爪痕を残しておこうか。』
サタンは両手を合わせると、目を瞑り大量の魔力を解き放った。
「将覇魔王陣!!」
サタンは大量の魔力を解き放つと、共にエルフ王の真っ黒な魔力に飲み込まれた。




