94話 ラムム救出
「エクスボム事件はE部隊隊長のエクスが、見張り中にうっかり魔法が付与された矢を落としてしまい大爆発を起こし、死傷者を数十人出した事件です。」
『うっかり落として数十人の死傷者か…。』
呆れ顔のシュヴァードが自分の背中に指差し尋ねた。
「この妖精の羽が生える魔法の効果時間は?」
「この羽は妖精力の持つ私達の10m以内に居なければ、効果がありません。」
「なるほど…。」
『効果が時間制なら、めんどくせぇーが俺がエクスの相手をしようと思ったが…。』
シュヴァードは少し黙り込み、作戦を考えた。
「まず俺が1階の見張りを引きつける、その隙にルルさんは妹の救出に向かってくれ。
そしてエクスはルミエルさん、頼めるか?」
「………。」
ルミエルは無言で頷いた。
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塔の1階付近まで、ルミエルのカモフラージュ魔法で近寄った。
「めんどくせぇーが、まず俺が暴れ少し離れた所まで引き付ける、その後は任せた。」
シュヴァードはルミエルの魔法の範囲外へと飛んでいき、剣を大きく振った。
「巻き踊れ!龍渦舞踊!」
剣から見張りと同じ数の、数十の小さな竜巻が放たれた。
小さな竜巻はそれぞれ見張り1人を包み込んでいく、包み込んだまま竜巻は不規則に移動し、竜巻同士が何度もぶつかり合った。
少しして竜巻は全て消えると、30人ほどの見張りは全員気絶していた。
「マジかよ…弱い。」
「シュヴァードさん上です!」
ラトュールルがルミエルの魔法の範囲外へと、飛び出し声を上げた。
シュヴァードは上を見上げると、三本の弓矢が飛んで来ていた。
「おいおい、仲間も巻き込む気かよ、巻き斬れ。」
剣を振ると、渦を巻く白い斬撃が飛んでいき三本の矢全てにぶつかると、空中で大爆発した。
『エクス…ボム……。』
爆煙の中をルミエルは飛んで行き、ラトュールルは塔へと走り入って行った。
シュヴァードは塔から少し離れ周りを見張った。
爆煙の中を飛んでいたルミエルが、エクスの正面に飛び出した。
「……。」
『…仕方ない、この光を使うか…。』
無言で両手を向けると、黄色い光を放った。
エクスは黒髪ロングヘアーで前髪も目が隠れるほど長く、赤いメガネを掛けていた。
ルミエルの目の前で足を大きく上げ、戦闘服のスカートが捲れ白いパンツが露わになった。
「あなたはL部隊隊長のルミエル?
何のつもりですか?」
恥ずかしがりながらもう片方の足を上げて、大きく尻餅を付いた。
「いったーい、身体が全然違う動きをする!?」
「まさかあなたの仕わダッ!」
ジブの手で自分の頬をビンタし、舌を噛んだ。
「効果は10分…大人しくしておけ。」
ルミエルは呟き拳を構えて光らせると、周りの見張り9人を一瞬で気絶させた。
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「なぜここにラトュールル様がおられるんで…。」
塔の地下でラトュールルは見張りの警備員に触れると、警備員は力が抜けた様に倒れてた。
地下の奥へと歩いて行くと、殺風景な部屋にポツンと寂しそうな背中を向けた、1人の少女が座っていた。
「ラムム!」
少女が直ぐに振り向くと、ラトュールルに飛びついた。
「ルル姉ー!」
オレンジ色のショートカットのラムムは顔を上げて、不思議そうに尋ねた。
「どうしてここに来られたのですか?」
「ラムム…助けに来ました、逃げますよ。」
ラトュールルは手を差し出した。
「はい!」
ラムムは笑顔で手を取り、2人は走って行った。
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猫剣王、ランクスの周囲には、固まっているエルフ族の集団がいた。
その時、少し離れた所から青の信号弾が放たれた。
「青って事は上手くいったみたいだな!」
「そうですね、シュヴァード様と合流して戻りましょう。
フードル・ウルフード信号弾をお願いします。」
「了解した。」
ウルフードはポケットから信号弾を取り出し、空に放った。
信号弾は空で破裂して、青い光が放たれた。
その後シュヴァードと合流した、猫剣王達は支援部隊が待機しているポイントへと向かって行った。
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