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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第098話 「親から子への信頼」

「先輩、模擬戦をしましょう。俺と」


 ゼクスと通話が終わり、カナンの攻撃によるダメージを回復して意識を取り戻した冷躯は、談話室に座って笑いをこらえている善機寺ぜんきじ夫妻に宣戦布告をした。


 その言葉に、おろしは顔を引きつらせ、いやいやと首をふる。

 颪はよく分かっている人間である。自分と冷躯が戦って、自身が勝つ可能性が1%も無いことを。


「冷躯ぅ、俺はしたくないんだけれど?」

「なら、颪先輩の得意な【顕現属法ソーサリー】だけで良いです!」


 情けない声を出した颪に対し、奏魅は「受けてあげたら?」と呆れ顔である。自分の伴侶が思ったよりも弱気なのを見て、あまりいい気持ちはしない。

 カナンが回復を得意としているのにも関わらず、戦闘を好むのと同じように双子の姉である奏魅もそうである。


 出来れば自分が変わって冷躯と戦いたい。そんなことすら考えている彼女であるが、流石に颪が許してくれないだろう。


 しかし、弱腰だった颪も自分が得意な【顕現属法ソーサリー】のみでの戦いならば話は違う。少々自信を取り戻した颪に対し、冷躯はしめしめと内心笑顔だ。


「ん、それでいいの?」

「はい! 厳しい条件のほうが燃えるので!」


 勿論、冷躯としては【顕現オーソライズ】で戦ったほうが強い。

 【不可侵】の及ぶ範囲は自分の体と、腕から離れず【顕現オーソライズ】したものまでである。【顕現属法ソーサリー】は影響されない。


 しかし、戦闘狂であり守護者であるちぐはぐな面を持つ冷躯は、最終的に「危害が自分たちに及ぶ前に相手を倒せば問題ない」なんていう、問題のありすぎる思考を持ち始めてしまったのだ。


「……うーん、でも後輩にハンデを負わせるのかー」

「こうでもしてくれないと戦ってくれないでしょう」


 確かにそうだが、と颪は頷く。

 そして立ち上がると、八龍家の鍛錬場に案内してもらった。





 ゼクスは自分の家を「一般家庭」と称しているが、その実態はまったくもって違う。

 家に鍛錬場があるのはほんの一握りだろう。それも、最新の対顕現障壁が組み込まれている場所は【八顕】の物以外ほぼない。


 冷躯は颪と向かい合い、リラックスしながら朗らかな表情で話をしていた。


「久し振りですねぇ。……学生時代の異名はなんでしたっけ、【神薙ぐ魔風】でしたっけ」

「やめろ」


 八顕学園時代の黒歴史を掘り返され、颪は懇願した。

 颪は、学園時代に1人で風属性の【顕現属法ソーサリー】のみを扱い、上級生200人に対し無双をしたことがある。

 その時に付けられたのがこれだ。その頃は研究も進んでおらず、どう強くなるのかわからなかった【顕現者オーソライザー】の中でも、発見されたばかりの【顕現属法ソーサリー】に取り憑かれ熟練していた颪は学生時代に一つの局地に達していたとも言える。


「完全に黒歴史なんだが」

「はっはっは」


 過去を掘り返され、精神攻撃をいきなり受けた颪は「くっ」と歯を食いしばって冷躯を睨む。

 睨まれた本人は笑って流し、颪が報復するように口を開く。


 その状況をカナンと奏魅はふわふわした雰囲気で観戦していた。


「冷躯のもひどかった気がするぞ、【守護狂者バーサーガーディアン】だっけか」

「あれは確かに、的を射ていると思いましたけれど」


 しかし、冷躯には効かない。うわーそのとおりだーと笑っていた記憶が蘇り、冷躯は昔を懐かしむように目を細める。


 と、急に真面目な顔になった冷躯は、先輩である颪に教育について質問をした。


「そうそう、ついでにどうやって【顕現属法ソーサリー】の教育を施すか尋ねたかったんですよね」

「【顕現オーソライズ】とそう変わらないはずだ。最初から無詠唱でなく、簡単な単語を発動の起点にすればいい」


 先輩として頼られたのが嬉しかったのか、颪はにこにこと笑って簡単に教える。

 【顕現属法ソーサリー】も、【顕現オーソライズ】も。自分の空想イメージを現実世界に構築する能力である。

 だからこそ、そのイメージを固定するためにキーワードを指定させ、段階的に短くして最終的に「無し」にする方法がいい、と颪は判断した。

 


 正解だったのか、息子であるはやても彼と同じ習得方法で、颯の強さを証明できていた。


「古都音嬢を魔の手から守るためにも、2人を強くしなければ」

「そうですねー。まあ、ゼクスには正直心配していないんですが」


 冷躯は笑い、颪はその言葉に驚く。

 確かに、蒼穹城進を一方的に叩き潰したのは事実だが、その圧倒的強さが持続するわけではない。


 そもそも、ゼクスが本当の強さを発揮するのは自身で開発した【re】式、【exe】式を発動した時である。

 授業内では、肉弾戦特化なだけだ。

 【顕現者オーソライザー】として強いかどうかは判断に困る場所であろう。


「でも、もっとつよくなりますよゼクスは」

はやてだって負けていないさ」


 しかし、冷躯は信じている。

 今はいびつな心を持っている彼であっても、いつかきっと「誰かを守る」という気持ちが芽生えれば、彼は今以上に強くなり冷躯を超えると。


 そのために、鍛錬も欠かせてはならない。

 冷躯は決意し、夏をゼクスへの地獄にしようと変に決心した。








 その後、冷躯と戦って颪がこてんぱん、けちょんけちょんに負け。

 カナンと奏魅かなみの回復を受けたのは別の話。

バトルは割愛。申し訳ありません。

この話で第4章は終わり、第5章は夏休み編です。

学園モノっぽい場所を見せていきたい……見せられない?


活動報告にて質問を受け付けております、何かあればコメントを。

勿論人気投票で貰ったものも採用する……かも。


次回更新は明日になります。明日はまとめQ&Aまとめ小話の予定。


↓人気投票の締め切りは今日です!

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