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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第094話 「対峙と【干渉】」

 刀眞とうまりょうの差金で来たという栄都えいとアインは、どうも正々堂々といった感情が中々に強いらしい。

 目的は古都音ことねであるはずなのに、その前へ立ちふさがった俺にまずは切りかかってきた。


 俺は前に重心をかけながら、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を構える。

 正直、【顕現オーソライズ】による戦闘では剣術なんて碌な物を教わってこなかった。

 【顕現オーソライズ】の扱いでいっぱいだった俺だが、発動の速さも何もかも、この【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】さえあれば問題はない。


「はぁっ!?」


 一閃。栄都の刀から放たれた斬撃は、彼女が地面に着地し大きく踏み込むと共に飛翔体となってこちらへ迫ってくる。

 飛んでくる斬撃。前回はとりあえず古都音を逃がすのに手一杯だったが、今回は違う。


「なんだ、こんな程度だったのか」


 俺は無造作に、縦薙の斬撃に十字架を作るように【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を構えた。

 そのまま横に、右から左に薙ぐと斬撃がはるか前の方で割れる。


 残った斬撃を「蹴り」飛ばして、反射するように斜め上に飛んでいった斬撃飛翔体は途中で霧散する。

 斬撃が飛んで来るのは彼女の持つ【顕現オーソライズ】によるものと判断してやってみたが、上手くいったようだ。


 周りに人は殆どいない。

 これも都合のいい一つで、まさか防がれるとは思っていなかったのか困惑している栄都へ俺は走りだす。


 こいつも過信タイプか、なら対応は蒼穹城そらしろと同じだ。

 ――まあ、蒼穹城よりは強いんだろうけれど。


「……じゃあ、これはどう?」


 栄都の言葉を聞いて、嫌な予感がした俺は向こうに接触する寸前で急ブレーキをかける。ブレーキを掛けたと同時に目の前に、ベンチがいくつも飛来してきてバリケードを形作った。


 ――――は?


 飛来してきたベンチに押しつぶされないですんだという安堵と、何故飛んできたのかという疑問に目を白黒させながら俺は古都音を後ろで感知する。

 古都音はどうともなっていない、少し予想と違ったのは全く怯えていないということ。


「どう?」

「驚いたが、結局はその程度だ」


 俺は虚勢を張るでもなく、そう言って息を整えた。

 瞬発的に最高速力まで加速する俺の脚は、勿論【顕現オーソライズ】による強化のものである。


『オニマル、少しだけ本気を出してもいいか?』

『やめておけ。遊ぶ程度にした方がいい』


 オニマルは、俺が戦闘に集中し古都音を認識しなくなることを畏れているようだ。

 だから、実力は出来るだけ出すなという。

 それが分かっているからこそ、俺は……。


 俺は、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を手放した。


『自分で動くくらいは出来るだろ?』

『ゼクスの視界を通さないと無理じゃぞ?』

『なら、見ていよう』


 今回は、【始焉これ】を使う。




---




 私、栄都えいとアインは八龍ゼクスという人間が嫌いだった。

 神牙派にいながら、独自の勢力を築いているのが気に食わないし、配下を飽くまでも「友人」扱いというのも気に食わない。


 同時に、その欠点を実力としていることを私は嫌う。

 【顕現オーソライズ】までの時間が短いのなら、それ相応に戦い方は不安定なはず、なのに。

 【顕装】を、【顕煌遺物】を、果ては独自に生み出した顕現式で補う、異端の方法が私は嫌だった。

 それをして良いのは、基本を極めた人間だけ、だから。


 今回は遼から「古都音さんを連れて来てくれ」という依頼を受けてここに来た。正直、遼が終夜古都音に執着する意味がわからない。

 優秀な回復系の顕現特性をもっていたって、それが遼に向けられるとは思えないのに。


 私なら、彼のためにこうやって刀を構えられるというのに。


「はぁっ!」


 私は強く左足で踏み込み、刀に【顕現オーソライズ】した『斬撃』をのせる。

 身体の重心移動と――手首のスナップを効かせてムチを振るうように刀へ力を伝導させ、しならせる。


 最も威力の高くなった瞬間に刀を止め、斬撃を飛ばす。

 引いて切る。それと同じ動作で私は引いて飛ばした。


 この前は抵抗がなく、ただ逃げまわるだけの相手だったから今回もそれが通用すると考えていた。

 でも私は、特に洗練もされていない動きで横薙ぎに同じ物を「当て」、分断された斬撃を蹴り飛ばす相手を見て、どうしようもなく困惑してしまう。


 自分は基本に忠実に、それを極めてきた。

 なのに、なぜ。


 ――――何故、剣術も知らない目の前の男は、それを模倣出来るのだろう?


「じゃあ、これはどう?」


 自分の声が、震えているのが分かった。

 私は突っ込んでくる八龍ゼクスに己の危険を感じ、私は【顕現オーソライズ】していた短い棒で、自分の顕現特性を使いながら、後ずさりするように後ろへ移動する。


 指揮棒を【顕現オーソライズ】するのは私だけじゃないかな。

 これは私の顕現特性を使うための起点。

 顕現力の込められていない無機物を自由に操作する、【干渉】。


 やろうと思えば建物だって動かせるだろうけれど、今時の建物に顕現力が込められていないわけがないし、多分1センチも動かせば私が死ぬけれどもね。

 器物破損がなかったコトにされたのは私のせいじゃなく、八龍ゼクスの【書換リライト】? のおかげだったけれど。


 彼は、自分の力の可能性にまだ、気づいてはいないようだね。


次回から本格的に。


次回更新は今日です。


↓人気投票、もう140票も集まりました。

 そろそろ第4章も終わるので、100話になった当たりで受付完了にします、

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