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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第091話 「選択肢」

 太陽の柔らかい日差し、目覚ましの音。

 隣には温かい存在を感知して、俺は目を開けた。


「…………」


 目の前に居るのは古都音である。柔らかな笑顔を浮かべて、目を閉じてまだ眠っていた。

 もしかして、朝弱いタイプなのかな? などと考えつつ時間を確認し、朝8時。

 授業が9時頃だから、普通だと思うのだけれど。やっぱり昨日の顕現力放出のせいで、疲れているような気がする。


 今日は授業をサボって、古都音とゆっくり過ごそう。

 そんなことを考え、俺は彼女の顔を覗き込んだ。


 長いまつげ、目の下に泣きぼくろ。

 うーん美しい顔立ちをしている。


 そういえば、最近よく休んでいる気がするけれど、まあいいか。

 幾つかの授業は、「単位はやるからもう来るな」と言われているのに行っているものもある。

 例えば、この前【re】式を実践した「顕現式構築の基礎」とかだ。


 もともと、既存の式を改造して自分の武器を顕現することを目標にしていたらしいが……。

 ――うん、俺のあれは流石にまずかったらしい。


 あとは「【顕現オーソライズ】戦闘の基礎」も良いッて言われた。

 これは颯も一緒で、颯は【顕現属法ソーサリー】のみで50人抜き、俺は【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を持ちだしただけで良いって言われた。


 基礎系はどうも、異端を許してくれないらしい。2年度に期待するしか無いな、と。


「……おはようございます」

「おはよ」


 と、じっと見つめていると流石に気づいたのか。

 古都音が起きて、俺を見つめていた。


「もうこんな時間ですか……今日の授業は?」

「休むつもり、古都音と過ごしたいし」


 堂々とサボると宣言すると、古都音は「いけない子ですね」と少々たしなめるように、しかしとんでもなく扇情的に囁いたあとにっこりと笑顔を作る。


 その目に、悪戯っ子っぽいものが映っているのが見えて俺は困惑した。


「ええ、休みましょう。私も初めての正当な理由のない、おやすみですが」


 古都音は真面目な子だったのに、俺みたいな不真面目な生徒と一緒にいさせて大丈夫なんだろうか?

 彼女のクラスメイトも、何か文句を言ったりしない?


 そういえば、俺は古都音の友人を見かけたことがないな……。


「朝ごはんはどうしますか? 食堂で?」

「うん、行こう」


 と、その前に。

 アガミからメールが届いているな。


「昨日、アガミ君に何の連絡もしていなかったのですけれど」

「……ちょっとまってください。……んん?」


 メールの件名はなし、本文は『寮食堂で待つ』。

 ……よくわからないけれど、とりあえず向かえば問題はなさそうだ?



---




「あれ? 月姫詠つきよみ、アズサさん、鳳鴻おおとり久しぶりじゃん」

「ちょっと忙しくてね、学園に来る暇がなかったよ」


 学生寮の食堂はとても混雑していた。

 なんせ、颯も含めれば【八顕】5家。【三劔みつるぎ】2家とそれに次ぐ名家が2家の集まる場所に、誰も寄り付きたがらないからである。

 そして、空いた場所をこぞって一般生徒たちは取り合った。


 けれど、俺達の周り半径4席には誰もいない。

 こういうのも2ヶ月もすぎれば慣れっこで、特に気にすることもなく俺は古都音を座らせた。


「八龍ゼクスは古都音さんを選んだのか」


 俺と古都音の雰囲気を察したのか、アズサさんが苦笑して呟くのを俺はきちんと聞き取った。

 何も言わず、ただ頷いた。


 俺の反応に鳳鴻は分かってた、みたいな反応をし。

 アズサさんは今まで以上に興味を惹かれたような反応で。

 月姫詠は、なんだかしょげている。


 ほんとう、月姫詠だけよくわからないんだよなぁ。

 何でしょげてるの?


「そしてあれだ。善機寺ぜんきじはやて、君はあくまでも八龍派として動きたいんだよね?」

「……ああ」


 颯は頷く。どうもやはり、アマツたちと和解はしているもののそれは俺が居るという条件下でのみらしい。


「両親も、学生時代から八龍冷躯さんと秘密裏に組んでいたと聞く。だから問題はない」

「【三劔みつるぎ】に加担するのは問題なくとも、【八顕】としての立場は中立だから、それだけは気をつけてくれると有り難いかな」


 しっかりと釘を刺す当代亜舞照あまて家当主に、颯は「分かっている」と言葉を返す。

 鳳鴻はその言葉に笑顔を浮かべると。


「でも、学園生活では友人として接してくれると嬉しいかな!」


 なんて言っていた。

 心配なんだが、颯って寡黙な性格だから友人とかできにくいイメージが有る。

 でも、問題はなさそうだな。

 きちんと馴染めているし、問題はなさそうだ。



 ……と。


「みつけ……た?」


 栄都アインがやってきた。

 やってきたのは良いものの、俺達の姿をきちんと見ていなかったらしく俺や古都音に向けていた悪意が尻すぼみになっていった。


 そんな姿を見て、鳳鴻が驚くような笑顔で「なにかな?」と栄都へ訊き……。

 栄都は、虚勢を張る余裕もなくそのまま帰っていった。


「なにあれ?」

「1ヶ月前ほどに襲撃してきた、ってゼクス君から報告をもらっているよ」


 疑問の表情で栄都アインの後ろ姿を眺める月姫詠に、鳳鴻はポテチをつまみながら何でもないように答える。

 鳳鴻は特に脅威と考えていないようだったが、どうすればいいんだろう?


「そんなの、みんなの前で攻撃すればいいよ」

「へっ!?」

「あっちから襲ってるんだから、古都音さんを庇いながら反撃くらいしても許されるよ? 殺したり、身体に不自由を負わせない限りは、【顕現者オーソライザー】って緩いし、決闘なら不自由さえ負わせても問題はない」


 論理的な考え方なんて捨てちゃえ、と。

 そう言い捨てた鳳鴻に、笑顔はない。

 多分、鳳鴻は大切なもののためならば、その他全てを敵に回しても守り通す人なんだろう。


「ゼクス君、君は君のお父様のように守護者になりたい?」

「……まだわからない。古都音を好きになっても、それが【守りたい】からなのか、別の気持ちから来ているのかわからない。そもそも古都音を思うこの気持が、恋愛感情かどうなのかも定かでない」


 父さんのように守護者に成る、か。

 八龍冷躯という人物は、大切な人を守りつつ周りも守って、そして危害を与えた人だけを正確に処理していった人間だからな……。

 そういえば、父さんには憧れていたけれどそれは考えたことがなかったな。俺は、もし父さんの力を持った時、何にそれを利用するんだろう?


「時間はあるようでないからね、これはきちんと考えた方がいいし、古都音さんも出来るだけ支えてあげて」


 支配? 蹂躙? ……どれもしっくりとこないな。

 俺は……俺の仲間を侮辱したり、傷つけた人々をぶち殺したいだけなんだけれど。


 これを、どう表現すればいいんだ?


 ――分別の出来る狂人、か。

次回更新はまたもや今日になると思われます。次回の更新で本日4回め。


↓人気投票の理由を必須にしないで欲しいとの意見がありましたが、

 3回めからは必須を取り外すので、今回だけお付き合いください。

 何故そのキャラを嫌い、好きになったのかはかなりの参考になります。

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