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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第086話 「Neシリーズ:001-始焉」

「お付き合いという予定は衝動的に出てしまった言葉なのですが、こちらが私達終夜家からの贈り物です」


 部屋につくと、「どうぞ」と中に招き入れられ。

 手渡されたのは、細長く装飾の施された箱だった。

 箱は金属製だが、ひんやりとしているわけではなく僅かな熱を持っている。


 俺は首を傾げて、これはなんだろうと考えてみた。


「とにかく、開けてみてください!」


 プレゼントを上げて反応を楽しみにする子供のように、古都音は俺を見つめていた。

 座っても良いんですよと促され、誘導された椅子に座る。


 この部屋に来るのは2回めか。……2回めにはもう付き合っているとは考えたことなかったな。


「これは……」

「はい、【顕現機巧装置(AMDe)】です。ゼクス君の事を色々と聞いて、あとは神牙研究所の研究結果もある程度吟味した後、2ヶ月でオーダー品を作りました」


 蓋をあけると、そこにあったのはこれまた長方形の物体だ。

 柄の部分だけ。【顕装】の攻撃型によくあるフォルムで、ラバーが巻かれている。


 スイッチは4つ。多分電源マークがあるのがそのまま電源だろう。

 それにしても、この……高級万年筆を触っているような質感というか、ものの風格よ。


「……これ絶対高いやつだ、違います?」

「終夜家がどれほどゼクス君を気に入っているかの指標になるかと。私もそうですし、お父様もそうなのですよ?」


 古都音は、正確な値段をぼかしたがこれ絶対高い。終夜スメラギ氏だっけ、1度だけあったことがあるけれど。

 かなり俺を見て目を輝かせていた。あれは絶対何かあるっていう顔だったと思う。


 俺が掌で遊ぶように転がすと、……やはりずっしりと来るものがある。なのに扱いやすそうだ。


「もうすでに【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】はありますが、授業中には使えないでしょう?」

「……うん」


 【顕煌遺物】を授業中に使ったら、どんな顔をされるか分かったものじゃないしな……。【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】でこの前試し切りしたら、殆ど顕現力を供給していない状態でもダミーがすっぱり切れてしまった。


 俺は腰に差している【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】に話しかける。


『残念だったな、オニマル。ますますお役御免だ』

『ぬかせ、この先数十年、いつまでも【それ】に頼るわけではない。それに【顕装】は燃費が悪いと聞いているのじゃ』


 虚勢を張って強がっているオニマル。確かに数十年、この先生きていくのなら、父さんと同じ道に進むのなら【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】のほうが使う事が多いだろう。


 顕察官の特殊チームが父さんと母さんの所属している場所だ。

 殆どが非番で仕事が少ないけれど、護衛とか突発的な事件に対応するために本当の「休暇」以外は臨戦態勢である。


 【顕現オーソライズ】関係の事件から一般人や、俺達を守る仕事。

 ……の、はず。よく分からない。

 顕察官と警察官は違うからなー。俺は前者に安心を置いているけれど。


「感情で顕現力が作用するという研究結果を聞いて、それに対応できるようにしました。あと、この2つのボタンはそれぞれ押し込むと……」


 と、俺に一つ一つ説明してくれる古都音。

 持ち心地は良い。すっかり手に馴染んでいるし、どれも直感的に操作できる。


 これはいいものだー!

 しかもスメラギ氏が直々に設計したものだという。


 これはいいもの!


「こちらが1回押すごとに1段階、供給する顕現力が増す代わりに出力が上がり、もう片方が1回押すごとに1段階、供給する顕現力が減って出力が下がります。省エネルギーは長押しで最小出力になり、丁度学園の授業規定に変わります」


 1つ目のボタンが電源。2つ目と3つ目が出力調整。

 4つ目が……説明されていないけれど、後でためしてみるか。


 自爆ボタンではなさそうだけれども。


「名前は?」

「……ちょっと読みにくいのですが、【Neシリーズ】の【001-始焉シエン】、と。『これから始まる』ということらしいです」


 【Neシリーズ】の意味は「New era」――つまりは「次代」を意味するらしい。

 古都音はなんとかかんとか、と云々言っていたがこれは外堀を埋められている気がしてならない。


 少々強引な気もするけれど。冷撫れいなの持っているものが数十万の大量生産品であることを考えれば、数百万は行くな。

 ……でも、このくらいでないとオーダー品は信用出来ないというのも分かる。


 おほー! 早く試し切りしてえええええ!!


「最初から親公認でいいの?」

「はい。何か不都合でも? 一生支える、と言ったのは最近の若者が使うような軽いものではないですよ。きちんと支えます」


 溢れ出る興奮を抑えながら確認を取ると、古都音はしっかりと頷いた。

 続く言葉は少々重いとも感じたが、それが愛なのだろう。


「今は安定していても、いつ崩れるかわかりませんから。それなら墓場まで付き添います」


 墓場まで、と宣言してくれるのは本当に有り難い。

 信頼できるし、外堀だって気にならなくなるほどだ。


 正直、もし俺が古都音と相思相愛になった時、親の反対があればかなり難しかっただろうし。

 スメラギ氏にはきちんと感謝しなければ。……夏に終夜家へ行くとき、お礼を言いに行かなければ。


 うわーそれにしても持ってて違和感を感じないというのは凄い。

 初めて触ったはずなのに、今までずっと使ってきたかのような手の馴染み方。


「ありがとう、古都音。……その心に答えられるように頑張るよ」

「はい。……試し切り、行きますか?」

「うん、戻ろう」


 彼女の差し出した手を、躊躇せずに取る。

 ……やはり温かい手だ。



 この手を離さないように、努力しなければ。

【顕装】はどんなに頑張っても、現時点では【顕煌遺物】に勝てません。


次回更新は今日。


↓人気投票は古都音さんが優勢です。

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