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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第081話 「信念と信念の戦い」

「始め!」


 神牙アマツは、その言葉を聞くなり前に向かって走りだした。

 善機寺ぜんきじ家の特色は頭のなかに入っている、【顕現属法ソーサリー】を得意とする彼等に対して、懐に飛び込めば先制攻撃を与えることは困難ではない。


 アマツは両手から金色の焔を噴き出した。そして焔を分散させるように数十個に分けると、自分の周りに囲いながら再び加速する。

 たった10メートル、2人が激突するまで数秒とかからず――アマツは全ての炎球を善機寺の位置に叩き込む。


 充分な顕現力によって生み出され、1点に向かって正確にコントロールされた炎球は、立て続けに20回ほどの炸裂音を響かせた。

 土埃が撒い、赤い霧が善機寺を覆う中……アマツは「大したことねえじゃねえか」と思い、次の瞬間に驚愕するハメになる。


 全く無傷で、善機寺颯が立っていたからだ。


「開幕ぶっ放しとは、中々手荒な攻撃手段だ」


 どこかすました顔で、なんでもないように颯は呟く。

 驚愕が顔から剥がれず、「これでも普通なら瞬殺なんだが」とアマツは獰猛に笑って無傷の理由を探る。


 そしてすぐにそれは判明した。颯は風属性の膜で自分の周りを包み、攻撃をシャットアウトしていたのだ。

 アマツの数十発を耐えてなお、穴の開いていないそれを見てアマツが目を細める。


 ――多方面から駄目なら、一点特化ならどうだ?


 身体を引き締め、アマツは再突撃する。

 颯はまだ動かない。ただ、その拳打を見つめるだけだ。


 一点特化の一撃を、風の膜だけで防御しようとする颯に、アマツが勝利を確信して笑い声を上げ、左足で踏み込み


 今にも当たる、その瞬間――――。








 ――颯は、その場に居なかった。

 おもいっきり空振りして体勢を崩した、神牙アマツの後ろへいつの間にかいどうしている。

 アマツが振り返るまもなく、攻撃。


 その左足から放たれた強烈なそれは、アマツを吹き飛ばすのに充分すぎる威力で、反応ができず防御すら取らなかったアマツは前方へ何度も地面を転がった。


「くそ……!」

「どうした? 攻撃に迫力がないぞ?」


 神牙アマツは、5年間ゼクスを援助し続けてきた。これまでの誰よりもゼクスを知っているし、彼を援助すること事態が自分の使命だと信じて疑わない。


 ゼクスの隣を歩くため、アマツは研究者以外の道を選んだ。研究者ではなく、ゼクスが目指すところへ一緒に行くために。

 アマツとしては、ゲームで勇者と行動を共にする僧侶の認識でいいと思っていた。


 しかし、目の前に男がいる。

 もともと神牙家の敵である、男がいる。


 善機寺颯が信用出来ない、というのが一番の理由だった。


「お前は【顕現属法ソーサリー】が苦手なようだな」


 颯は、冷静に判断し次は俺の番だと地面を滑るようにして移動した。

 一旦アマツから離れ、彼が心で思っていることをよそに襲いかかる。

 

 アマツが両手から発現したのが焔なら、颯は竜巻であった。

 小さなミニ竜巻をいくつも発現すると、アマツを取り囲むように配置。


 指揮者のように右手を振って、アマツに送り込む。

 力も何もこもっていないように感じたそれだが、アマツはその竜巻一つ一つに込められた強い顕現力を察知し、地面を思いっきり自分の右手で叩いた。叩いた衝撃を加速力に変え、上へ。 その後空気を圧縮して蹴り、獣のように颯に襲いかかる。


 ダイブするように、焔の塊となって突っ込んだアマツを颯は身体を捻って避け、竜巻に載って上へ飛び上がった。





「なんというか、うわぁ」


 少し離れた安全地帯では、ゼクスたちが観戦していた。

 ゼクスは若干引き気味で、そんなゼクスを気遣うように冷撫れいな古都音ことねが。

 アガミは顔色を一切変えず、ただその戦いを見つめている。


 神御裂かんみざき律火りっかは、そんな生徒たちの顔をひとりひとり見て、ゼクスに視線を向ける。


「……引いている場合ではないぞ、八龍やりゅうゼクス」


 担任に目を向けられ、ゼクスはなんのことかと一瞬首を傾げる。

 そして直後に、ああと。


 自分が復讐をした時、勿論のこと担任にはしっかり見られたのだろうと推測した。

 けれど、ゼクスは彼等が何故戦っているのかよく分からない。


 2人がゼクス自身のことを思ってやっているのか、それとも何か別なことがあるのか。ただただ、家柄の対立が子にも反映されているのか。

 沢山の疑問があった。だからこそ、ゼクスは一番無難な答えを導き出す。


「でも、これは不毛すぎません?」

「……これは、信念と信念の戦いだろう」


 信念、という言葉にゼクスは反応した。そもそも信念とは。

 事柄が正しいと堅く信じこむことだ。では、何を持って正しいと彼等は考えているのか。


 ゼクスは、自分の復讐を正しいと考えているのか。それすら、自分でよくわかっていない。

 ただ、このままでは気に入らないのだ。見捨てられた時に受けた精神的なダメージは、5年経った今でも影響を及ぼした。


 誰かを「守る」という意味がまだ理解できていないゼクスは、やはり自分が何者であるのか分かっておらず、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】に『だからまだまだなのじゃ』などと言われる。


 が、反論ができない。


「信念、か」

「そう。愛情であったり、忠誠であったり、使命感であったり、はたまた別のものであったり。戦う理由を見出せる限り、【顕現者オーソライザー】は強者になり得る」


 例えば、程度は違えど古都音や冷撫は愛情だろう。

 颯は忠誠で、アガミとアマツは使命感。


 それがひとつの信念となっていることに、ゼクスはやっと気づく。



「君はまだ、それを理解できていないのだな」

「いや、今わかりかけた気がします」


 ゼクスは、空中戦に持ち込まれて上空でぶつかり合っている2人の【八顕】次代候補を見つめる。

 両方の目は本気で、お互いが叫んでいた。


 しかし、それをゼクスが聞き取ることは出来ない。


「……信念……、か」


 何度も心で反芻し、ゼクスは決着がついた時2人に訊いてみようという気持ちになったのだった。

やっぱり戦闘描写はなんとも言えない……努力しないと。

次回更新は今日です。朝起きて、早く書き終われるのならお昼ごろには更新したいな。


↓第2回人気投票始めました、次は冷躯さんに投票できます。

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