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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第080話 「アマツと颯の衝突」

「……んあー、最高」


 俺は今、膝枕されている。

 古都音先輩の膝、すべすべつるつるなこれ。それにおもいっきり頭を置いているのだ。


 先輩はにこにことして、俺の頭を撫でているし、多分このまま寝ていいか質問したら簡単に許可してくれるだろう。

 そんな確信を持ちつつ、颯を見つめる。


 颯は俺が座っているベンチの直ぐ側で立っていた。座るつもりはないらしく、校舎側をかなり真面目な顔で見張っているのを見れば、俺よりも颯のほうが護衛に向いているんじゃないかと勘違いするほどである。

 座らないのか? と訊いても「2人の安心できる場所を作るのが大切だ」なんて言って取り合ってくれない。


 あれーおかしいな。俺は確かに、「友人」でいてほしいと言ったはずなんだが。

 それとも、颯の中の「友人像」ってこんなものなのか。これは少し、いやかなりの考えものだと思われる。


 ちなみにここは、食堂群の直ぐ側。簡単に言ったらいくつかある中庭の1つである。

 栄都アインが爆発させたにも関わらず戻っている件については、さっき確認したが爆発の痕跡どころか、俺の【Rewriteリライト】の痕跡すらなかった。


 ……超常現象か何かだろうか、俺が勝手に使ったと錯覚した?

 いや、俺の【re】式は「発動しよう」とした時には準備が完了している。

 それが口から発声されたのは古都音先輩も確認済みだ。それなら、発動していないということはありえない。


 限定的な空間内の時間を自由に操作できるなんてものがあれば可能だが、そんなものがあるわけないよな。

 ……会ったは、って言うか俺が使ってるじゃん、【Recoil(リコイル)】。あれは時間を戻すというよりは状態を戻す方向だけれど。


「んお、ゼクスと古都音さん」


 約束の時間だ。俺達の前に現れたのは、にこにこ顔のアマツと顔を赤らめている冷撫れいなの姿だった。

 2人とも、俺が見た限りでは初めて手をつないでいる。


 サクラも散り終わり、新緑の見えてきた中庭に彼等はとてもまぶしく見えた。


「……なんでお前が居るんだよ」

「それはこちらが聞きたい」


 会えば会うなり、そのままバチバチと火花を散らして睨み合うのはやめてほしい。

 本当、それ。相性は悪くないはずなのに、何故ここまで合わないのか。


「俺は、ゼクスに変な虫がついて後ろから刺されてほしくねえだけだよ」

「……自分が悪い虫だと認識していない様子で」

「ああん!?」


 うわぁ始まった。俺は膝枕から起き上がって、怒り心頭のアマツを冷撫と一緒に抑える。


「颯もやめてほしい。俺は特別仲良くしてなんて言っていないんだし」

「……それは申し訳なかった。ただ、自覚の出来ない友人を持つと大変だな」


 煽るな煽るな。アマツはさっきの幸せそうな顔はどこへやら、実に恐ろしい顔をしている。

 簡単にいえば、蒼穹城そらしろに対する時の目だ。

 その顔には猜疑心も含まれていて、敵意すら垣間見れてしまう。


 それでも、神牙アマツという人間は自制することが出来る。自分から手を出すことは殆ど無く、決闘に持ち込んでからが本番だと。

 俺とよく似た考え方の持ち主だ。だから気が合うのかもしれないが。


「てめっ、覚えてろよ……!」

「その必要はない」


 んあ? っと、後ろの方から女性の声がして俺は振り返った。

 見れば、そこにいたのは「一応」担任教師の神御裂かんみざき律火りっかであった。いつの間にいたんだ、全く気づかなかったぞ。

 当主、神御裂創空郎そうくうろうの姪? だったっけ? 忘れたけれどまだ年齢的に30行ったか行ってないかくらいだしな、先生。


 一応としたのは、正直この学園に暮らすという概念はほぼないからだ。

 学年全体でやるようなものだけだな、必要なのは。


「一同、ついてこい」


 有無を言わせぬ口調で神御裂先生、俺達を引き連れ何処かへ案内する。

 ……これは知っている、職員室パターンだ。


 とも思ったけれど。校舎から離れてるな。

 ……どこに連れて行くんだろう?



---



「ここでどうだ。普段は使われていないが、ここで決闘するというのなら私が証人になろう」


 俺達が連れてこられたのは、体育館の一つであった。普段は教員が訓練に使う場所らしく、生徒の数はない。

 しかも今は昼休み、教員たちは授業の準備で忙しいのだろう。教員の姿も全く見当たらない


 本当に俺達だけ、貸し切りの状態だ。


「決闘中に本性を暴かせてもらうぜ」

「……本性も何も、【仕えたい】ひとが出来たというわけだと言っているのに」


 決闘に承諾したのか、2人が10メートルほど離れて向かい合う。


 先生が条件を連ねる。助命あり、武器使用は【顕現オーソライズ】と【顕現属法ソーサリー】のみ。【顕煌遺物】の使用は認めない。

 が、アマツも颯も今は持っていないだろう。


「戦意喪失、もしくは双方の同意によって勝負が決まる」

「はい」

「…………」


 アマツは先生の言葉に返事をし、颯は頷くだけだった。


 2人の緊張が高まっていく。


「それでは、戦闘準備」


 淡々と、粛々と、機械を思わせるイントネーションで試合の合図をする先生。

 まあ、どちらかに肩入れする訳にはいかないしな、今回の決闘は【八顕】同士の戦いだし。


 アマツも颯も、戦闘準備と宣言されて【顕現オーソライズ】はしていなかった。

 実戦での決闘に備えているのかな。


「……始め!」



もう80話。1月22日に投稿を開始したのでまだ1ヶ月経ってないという事実。


次の更新は今日だと思います。

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