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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第4章 春から夏へ
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第072話 「あらたなる友人」

第4章始動。予定的にはほのぼの章ですが……。

「……八龍ゼクス、話があるんだ」

善機寺ぜんきじ……遅かったな」


 俺が蒼穹城そらしろ家の色々な部分を完膚なきまでに叩きのめしてから、1ヶ月が過ぎていた。

 

 【醒遺物ゼガシー】の【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】が蒼穹城國綱くにつなとの別れを告げたのもすでに記憶から遠く。

 ……周りの人から避けられながらも、限られたコミュニティーで俺は生活を送っていた。


 そして、今。ゼクス達の目の前には善機寺がいる。

 訝しげに見つめるアマツ、その隣できょとんとしているアガミ。


 そんな彼に、俺は何かを感じとって頷く。


「色々と手間取った。親を説得したり、……離反の旨を伝えたり」

「そっか」

「……俺の言いたいことは、分かっているはずだ」


 ああ、よく分かっているとも。

 というか、親を説得しようとしたのか。なあなあで付き合っていた自分だけでよかったのに。

 善機寺家全体で2家から離反する?


 ……大きく未来が変わりそうだな、善機寺。


 俺がそんなことを考えていると、改めてというか。

 かしこまって、善機寺は頭を下げる。


「善機寺はやては、八龍ゼクスの傘下に入りたい」

「俺は拒まないよ? 善機寺は敵じゃないし」


 俺は即座にそれを承諾した。傘下、という表現が少し気になったけれど、相手から敵意は一切感じられない。

 だからといって、恐怖心を外にだすことも彼にはなかった。


 もしかしたら、彼はすでに俺の本質をわかっていたのかもしれない。

 「敵」と判断した人以外に出来るだけ危害を与えたくないということを。


「……俺は反対するぜ。コイツは信用出来ない」


 しかし、俺の隣で厳しい声が飛ぶ。荒々しい口調はアガミかアマツか、と予想すれば断然後者だろう。

 2人の方に目を向けると、アマツは善機寺を睨んでいた。

 アガミは状況がよくわかっていないのか、ぽかんとしていたけれど。


 ……と、善機寺も目を細め、どこか怒ったようにアマツの目線を正面で受ける。


「お前の傘下に入るつもりはない」

「何を言ってるんだ?」

「俺は、八龍ゼクスだけに従う」


 その言葉に、アマツが敵意をむき出しにした。

 せっかく"彼"は敵意を見せていないのだし、んなことを言うのはやめて欲しいのだが。


 ……まあ、アマツの事だったら聞かないんだろうな。


「俺としては"颯"、君を友人として迎え入れたいんだけれど」

「……そういうのなら」


 彼の態度は完全に、なんというか部下が上司に対するそれだったため、慌てて否定する。

 なんか、……あまり彼とは話をしていない気がする。ただ、蒼穹城や刀眞と一緒にいたから、見せしめとして叩いてしまった。


 あの時も頭を下げたが、本当に申し訳ない。

 いや、"友"になったのならば、その分返そう。


『彼から敵意は感じられぬ』

『わかってるよ、オニマル』


 "彼女"も、俺を通じて見ているのかそんな評価をしている。

 敵意はないよな。むしろ、敵意を剥き出しているのはアマツのほうだ。


 颯はまだ、アマツとは友人でないと主張している。

 ……そこはのちのち何とかするとして、今回は俺と颯の関係を考えよう。


「同等の関係でいてほしい。いいかな?」

「……八龍ゼクスがそういうのなら」

「あと、俺のことはゼクスで頼むよ」


 ではゼクス、今日はこれでと一礼すると、颯は俺達から離れていってしまった。

 アマツやアガミとはずっとつるんでいるし、お互いに仲がいいから問題はないのだろうけれど。


 颯はそうも行かない。アガミは問題なさそうに笑っているけれど、アマツが許さないのだ。

 一緒にいることを許そうとしないアマツに対して、颯は一緒にいたら争いが増えると考えたんだろうか。


 俺達から離れ、見えなくなった彼にアマツはふんと鼻を鳴らした。


「気に入らねえ」

「……アマツ、落ち着きなよ」


 諌めるように彼を制止しようと、話しかけたのはアガミであった。

 が、ふんすふんすと鼻息の荒いアマツに対し、「こりゃだめだわ」と俺を見て肩をすくめる。


「ゼクス脳だな、やっぱり」

「まあ、使命だし?」


 アマツもアマツで、それを否定もせず、ごまかしもせず。

 誇り高く、それをさも当然のように言うのはやめてほしい。


「仲良くなれとは無理して言わないけれど、共通の友人である俺としてはちょっとな」

「……分かったよ、ゼクス」


 俺が少々真面目な表情をすると、渋々といった表情で彼は頷いた。

 全く納得がいっていない顔をしているが、この際スルーする。


 と、「あのこと」に対してどうだったか彼に聞く。


「あとアマツ、止めてくれたか?」

「……俺からは言ったが、直接言え」


 冷撫のことだ。どうも俺は、彼女に恋愛感情を持たれているらしいという事を、アマツから小耳に挟んだ。

 古都音ことね先輩もだそうだ。古都音先輩は分かる、出会って間もないというのに俺を「一生支えます」なんて言っているんだから何かあったんだろう。

 先輩の方は良いよ。


 でも冷撫はどうなんだ。5年間一緒にやってきて、今頃好きって言われても困る。

 冷撫が綺麗じゃない、とか、可愛くないとかってことはない。


 勿論冷撫は美少女だ。まちなかで10人に写真を見せ、可愛いか聞いたら10人がYESと答え、周りの野次馬が割り込んで「絶対かわいい!」と叫び散らすような美少女。


 でも……俺の感覚としては、ちょっと童顔なお姉さんって感じだよな……。

 ということで、アマツにそれとなく言ってくれと頼んだんだが、相手が少々機嫌を損ねたらしい。


 自分で言う、言います。最初からそのつもりだったけれど!


「おう」

「……あーっ」


 わかった、と頷くとともに次はアガミから。

 アガミが俺の方を見ながら、申し訳無さそうに携帯端末を見せてきた。


 画面にはメールが表示されていて、んー。

 アズサさんに呼ばれている。


「ごめんゼクス、今日も古都音先輩を頼みたい」

「うん。授業は?」

「出席だけでもとっといてくれると」


 分かったよ、とアガミを見送る。

 それにしてもあいつモテるなーとアマツに、軽口を叩いてみたら真顔で「あれ別の件だぜ」なんて即答された。


「じゃ、ゼクスは古都音さんのところへ?」

「ん、昼の授業は一緒だし。またね」

「おうよ」


 アマツが俺から背を向け、周りにガンを飛ばしながらのっしのっしと去っていく。

 ……なんだあれ、怖い。


 【八顕】というよりはチンピラだよなぁ……。やめてくれないかなアレ。


 さて、古都音先輩のところに向かいますか。


次回更新は明日です。深夜中の予定

今日もまとめと小話があったとはいえ4回更新でした。


では、また数時間後にお会いしましょう。

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