表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第3章 11家緊急会議
66/374

第066話 「冷躯の顕現特性」

100万PV感謝です。

 ゼクスが崩れ、終夜よすがらスメラギと古都音ことねの2人が手当を行う。

 古都音はすでに半泣きで、そんな彼女をなだめながらスメラギは彼の様態を確認した。


「救護はまだか」

「俺が運んでいきます。ソッチのほうが早い」


 そういってゼクスを抱き上げたのはアマツで。

 まるで女性を抱きかかえるような自然な動きでお姫様抱っこすると、彼は一目散に会場から離脱し医務室へ向かう。


 それを終夜親子が追い、鈴音すずね冷撫れいなが続く。


 決闘が一つ終わった中、決闘スタジアムではもう一つの決闘が行われようとしていた。

 11家の当主対当主の戦い。これが祭りごとのエキシビションマッチだったらどれだけ良かったかと、またもや審判役をやらされることになった神御裂かんみざき創空郎そうくうろうはため息を付いた。


「10年ぶりくらいだな、刀眞獅子王」

「……俺は楽しみに来たのではないぞ」


 冷躯は爽やかに、獅子王はふてぶてしく。

 お互いに10メートルほどの間を取って、睨み合う。


 その状態だけで、2人の【顕現力】が会場に充満し。

 数人が、顕現力に当てられて酔い気を失う。


「そうかぁ? 俺は楽しいけどな」

「1撃先取で良いか? 時間を掛けたくない」


 なぜならば、二人共日本トップクラスの【顕現者オーソライザー】であるからだ。

 数千人の観客の中、1撃で勝負を決めようとする獅子王に。


 にやり、と冷躯は爽やかながらどこか裏が有る笑いを見せる。


「良いけど、一瞬で終わるぞ?」

「ふん、史上最強か何か知らんが、俺は認めん」


 認めなくてもほれほれ、と冷躯は左手につけている腕章を見せびらかし獅子王が目を見開く。

 今日、冷躯は礼服として顕察けんさつ官の制服できていた。


 腕章は、彼が公式に認められた【三煌さんこう】である証だ。

 日本に数人といないその人材に、獅子王はしかし戸惑いを隠そうとする。


 冷躯の笑顔がさらに広がった。


「親がこうだと子も歪むな」

「……なんだと?」


 容赦無い口撃に、獅子王は顔をしかめた。

 冷躯は余裕が顔に出すぎてちょっと良くわからなくなっている。


 彼の、戦闘狂の部分が見え隠れする。

 それも「誰かの為に」という信念のもとでのバトルジャンキーさだ。


 冷躯の姿に、獅子王は昔の彼を思い返していた。

 学生時代。獅子王は5年生の時に、新入生である冷躯に道場破り紛いの事をされて。


 クラス全員対冷躯1人で、完敗した苦い思い出があるのだ。


「なんだとしか言えないのか?」


 だが、今回はそういうことにならないだろうと。

 獅子王は、「慢心」してしまった。


 刀眞家は【八顕】の中で雷属性を司る家。攻撃のスピードと威力には自信がある。電光石火で敵に近づき、雷を纏った顕現力を相手にぶつけ、試合終了。


 八龍家の鼻っ柱をへし折り、胤龍という「駒」を手に入れる。

 そして再教育を施してやるんだ、と。


「創空郎さん、お願いします」

「……助命あり、1撃先取だからな冷躯」


 創空郎は、20年経っても血気盛んな若者である冷躯を心配そうに見つめていた。流石に、冷躯であっても刀眞獅子王は無理だろうと考えている。


 称号では「日本最強」といったって、今の【八顕】と拳を突き合わせたことは今回が初めてだろう。

 創空郎は若いころ、冷躯の教師として技を教えてはいた。が今はもう引退してご覧のとおりだ。


 中立という立場ではあるが、創空郎は教え子である冷躯を応援したくなってしまう。

 どちらに利益があるないを別として。


「はい」


 冷躯が姿勢を低くし、構えた。

 それはゼクスの構えとよく似ており――。


 勿論、ゼクスに伝授したのは冷躯であった。


「はじめっ」


 創空郎の声が会場に響いた瞬間、2人は激突した。


 1撃で決まるというのに、様子を伺いもせず……双方が双方に向かって突進したのだ。






 勿論、勝負は一瞬で決着する。









 1撃目、冷躯の長い足からしなる弓のように放たれた強力な蹴りが。




 それを見切って防御した獅子王の、【顕現】した障壁をすり抜けて腹へクリーンヒットしたのだ。


 その攻撃は獅子王が持ち合わせていた障壁すべてを無視して体に突き刺さり、彼は「え?」と疑問を浮かべた顔のまま、後ろへ地面と水平にすっ飛んでいく。


 ――攻撃の威力もスピードもとんでもなく、障壁があったところで破られて敗北はしていただろうが。


「はっ!?」

「俺の顕現特性、明かしていなかったっけ?」


 転がった先で立ち上がって。

 何だ今のは、という顔の獅子王に。


 冷躯は、先ほどの笑みを消した顔で立っている。


 刀眞獅子王はそれがわからなかった。遼もわからなかったし、ほとんどの11家当主は冷躯が何をしたのか、わかっていない。

 

 ただ分かるのは、八龍冷躯の勝利である。ただこれだけ。


「最初から勝負は俺の勝ちって決まってたんだよ、獅子王先輩?」


 冷躯の顔は凛々しく、それでいてどこか生意気なものであった。

 とても40半ばと判断する人は少ないだろう。


 20後半と、10年以上さばを読んでも許されそうな容姿で、冷躯は言い放つ。








「俺の特性は【不可侵】だ。攻撃は必ず当たる。昔はカナンを、今はカナンとゼクスを守るために宿った、俺だけの顕現特性だよ」






 こうして刀眞獅子王は、


 八龍ゼクスに、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を持って挑んだ蒼穹城進のように。


 自分で突きつけた条件によって敗北を、自分の手によって生み出したのだった。


あっけねぇ……。


次回更新は今日です。今日は予定3回更新のつもり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ