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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第3章 11家緊急会議
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第063話 「二択問題」

 蒼穹城そらしろしんが、自分は目の前の人間に勝てないとやっと理解したのは、ゼクスが【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を青白く光り輝かせ、来賓席にいた蒼穹城こうが頭を抱えたのを見た瞬間であった。

 今の蒼穹城家に、それの所有者はいない。それどころか、代々伝わっているのは良いものの初代から一度もほんとうの意味で『受け継がれた』者はいなかった。


 しかし、目の前の男は簡単に認められてしまった。

 1本何億するか、何兆するかすらわからない貴重なもの、それを奪い取られた進は、ただ焦り、更に隙を多くする。


 八龍ゼクスが顔を狂喜に歪めるのを認識できずに。


「か、かえせ!」


 情けなく叫んだ進。しかし【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】が相手の手にある以上、打って出る訳にはいかない。

 自分で【顕現オーソライズ】することも忘れ、いじめっ子から大切な物を取り上げられたいじめられっ子のように喚く進を、ゼクスだけでなく会場の人々も冷たい目で見つめていた。


「……なら、奪いとってみな」


 ゼクスの口調は、淡々としていた。

 以前までの異常な殺気はなく、「決闘に付き合っている」程度の感情しか抱いていない。

 【神牙シンガ結晶】は腕にはないが、効き目が強すぎて全体的に負の感情が抑制されているのだ。


 まるで子供のお遊びのように、目の前をジタバタとする進を冷ややかな目で見つめ続け、【execution】の効果を利用して左右前後にゼクスは避けてみせた。


 【execution】は直接的な【顕現オーソライズ】を一切しない代わりに、体の周りを薄い【顕現オーソライズ】で包む。意識すれば誰にでもできるものではあるが、そちらに意識を向ければ戦闘時に別の部分で意識が疎かになる。

 そう冷躯れいくに教えられ、ゼクスは元から『顕現式』として認識することで肉体のドーピングを顕現によって成したのだ。


「くそっ」

「そんなに近づくと……、触れただけで斬ってしまうぞ」


 ゼクスの言葉に、進が一瞬だけ躊躇した。

 その躊躇いにつけ込み、ゼクスは前へ出ると横薙ぎに刀を振る。


 彼には日本刀の使い方がよくわかっていない。しかし、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】の切れ味と【execution】が補助し、当たれば斬れるという状態には持っていた。


『……眠る前に、一つだけ』


 頭のなかで幼女の……【顕煌遺物】の声が聞こえ、ゼクスは心のなかで返事をした。

 

 その間も、視線は先程から躊躇いに躊躇っている進へ向けたままだ。


『ん?』

『我には、5つの【顕現特性】がある。そのうちの1つだけ、貴様と一緒に居る祝福として開放しよう』


 その言葉は、例えば進が与えられていたのなら必ずと言ってもいいほどすがりついていたものだ。


 しかし、男は違う。


『いや、いらない』

『……なんだと?』


 拒否の言葉。

 怒気を含んだ質問をしたオニマルは、ゼクスがどれだけ己を過信しているのか、と問う。

 しかし、ゼクスは自分を過信しているわけではなく。


 ただ、自分に自信を持っていた。


『気を使わなくていい。俺には信用できると判断した時に能力を解放してくれ。あと、万が一でも負けた時に、オニマルのせいで負けたなんて言葉すら思いつきたくない。……【伸縮】は最初からあるんだな?』

『変な奴だ……。【伸縮】は最初からあるものだ』


 変な奴はお前だ、とゼクスは返す。

 武器の一種、と研究結果がなされ謎の多い【顕煌遺物】でありながら、人格を持ち人間と"約束"をして現在の蒼穹城家を嘆く幼女。

 

 正面では、動かなくなったゼクスを進が訝しげに見つめている。


『では私は眠る。自由に使ってくれ』

『分かった、これが終わったらカップ麺の蓋の重しにさせていただく』

『やめろ! なら終わったら起こしてくれ!』


 初代がこの世から去った時から次の所有者をまち、百年以上眠りについていたオニマルにその"カップ麺"が何かはわかっていない。

 しかし、とんでもなく嫌な予感がして、叫び返してから。


 ……オニマルは、ゼクスへの通信を断った。







「何警戒してるんだよ、さっきまでの蒼穹城君はどこに行った?」

「…………」


 戦場では、進がついに警戒を始めたせいで攻めてこなくなっていた。


「そっちから行かないのなら、こちらから行かせてもらう」


 ゼクスはうんざりしたように呟き、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を手に地面を駆け出す。進が後ずさりするように後ろへ下がり、斬撃を避けるが間に合わない。


 3回めで理解し、「直接手で掴む」と対策を講じた【顕煌遺物】の特性は使わず。

 彼は刀身の逆――峰を進行方向に構え直すと、ブレる重心を無理やり膂力りょりょくで抑えこみ、そのまま肩へ横から衝撃を加える。


「安心しろ、峰打ちだ。さっきの調子はどこに行った? 顕現する時間はやるから来い」


 横から衝撃を受けたものの、それは線であり面での攻撃ではない。

 切るのに適した方向でなくとも、進の肩は軽くえぐられていた。


 しかし、進は悲鳴を上げるわけには行かなかった。

 ここで上げれば、追撃が間違いなく来る。


 ……上げなくとも来るのだが。


「元素の属せし物、名乗るしは【氷】。顕現せし様のそれは――――っ!?!?」


 ゼクスに言われて気づき、やっと進は自分の手で【顕現オーソライズ】を開始する。


 しかし、その途中で斬りかかられた。

 次は峰打ちではなく。


 一瞬の判断が遅れていたら、首が飛んでいただろう。

 それほどの殺気を孕んだ一撃に、進は内心ヒヤヒヤしながら目の前の男を非難するように、視線を向けた。


 向けられた男は、完全に脱力しながら挑発気味に問う。


「どうした、【顕現オーソライズ】しないのか?」

「汚いぞ」

「何が? 実戦で相手が待ってくれるの? ん?」


 本当にこれが復讐対象でいいのか、とゼクスは嘆息した。

 復讐対象にはしたが、ここまで馬鹿なのならばしなくても勝手に自爆するのではないか、とも考える。

 

 しかし、考える。目の前の男が勝手に自爆したら、こちらに被害が及びそうな気がするのだ。

 それはゼクスの直感が伝えた「予感」であった。


 復讐は、きちんと完遂させたほうが良い。

 

「……今から、お前に2択を与える」


 ゼクスは全く持って興味を失い、復讐と決闘を同時に終わらせる為に進へ2つのうち、1つを選ばせる。


「自分自身のやっすい命を取るか、この刀を返してもらい自分は死ぬか。選べ」


次回、蒼穹城への復讐はひとまず完了。


次回更新予定は今日です。


↓人気投票の結果出ました。ちょっとした奇跡か何かが起こりました。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/203855/blogkey/1347728/

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