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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第3章 11家緊急会議
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第062話 「【髭切鬼丸】との対話」

 俺が【顕煌遺物ゼガシー】の【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を手にした瞬間、目の前は真っ白になって。


 なんだか白い空間に俺はふっとばされていた。


「何、ここ」


 思わず、声が出る。ええと、本当に今さっきまで俺は蒼穹城そらしろしんと戦っていて、彼から引き剥がしたんだっけか。

 で、キチンと装備したらこうなった。


 なにこれ。

 で、目の前の女の子はなんだ?


 おほー。ロリに興味は無いが、くっそ美人になりそうな容姿だ。

 一番似ているのは……んああ。


 古都音ことね先輩に似ている気がする。姫カットの場所とか。

 服装は和服で、胸は壁。


「貴様が我の新しい所有者か」

「……おほー」


 鈴のなるようなコロコロとし、凛とした声。

 決して殺殺ではない、決して。


 あ、これ「我」とか言っちゃうやつですか。ありがちな設定ですね。

 冷静に判断したあと、俺は静かに彼女の言葉を待つ。


「我の名前は鬼丸オニマル。って、蒼穹城一族の者じゃなあああああぁぁぁい!?」


 突然叫んだ幼女に、俺は耳を塞いだ。

 蒼穹城の一族、なるほど。これがアレだろう。


「んお。俺の名前は八龍ゼクス」

「帰れこの野郎! 我を離せ! 離せええええ!」


 じったんばったんと喚く、自称オニマルに俺は首を傾げた。

 は? 何言ってんだこいつ。寧ろ俺が帰りたいんだけれど、寧ろここはどこだ? と。


 幼女が駄々をこね、気が済むまで待つことにした。


「くそおおおぉぉぉぉ! 誰だお前はぁぁぁぁ!」

「……所有者として認めたのはそっちだろ。……俺だってこんなつもりじゃなかったさ」


 そう言った俺に、目の前ののじゃロリは泣きわめいた。

 嗜虐心のそそられる素晴らしい涙だ。手籠めにした……いや何でもない。


「嫌じゃ嫌じゃぁ! ……我は國綱くにつなと約束をしたのじゃ」

「そんなになら、正直俺はどうでもいいから良いけれど」

「それが駄目なのじゃ」


 國綱? 誰だそりゃ。

 まあ、俺が「蒼穹城一族」でなく泣きわめいているのなら思い当たる節はある。

 初代蒼穹城家当主だ。


 ちなみに、一度所有者を決めてしまったら俺が死ぬまでそれは取り消せず、他に所有者を決定することもできないのだとか。


「うわーそれは大変だなぁ、でも俺本当にどうでもいいんだよなぁ」

「貴様に絶対力は与えん」

「なら廃品処理だな。折るから」

「折る!? 我を!? どうやって!?」


 ほほう。恐らく、どのくらいの力を与えるかは【顕煌遺物】が決めるんだろう。

 だから、相手はそれをネタに脅そうとしている。


 残念ながらそれだけだ。俺に彼女からの力は今のところ必要ない。

 それならば、オークションにかけるか捨てるか、しか無いだろう。


「同じ【顕煌遺物】にぶつけたら壊れるよなぁ?」

「…………」


 その沈黙は肯定をさす。

 可能なんだろうな。まあ、そんなことだろうと考えていたけれど。


 【三貴神】に頼んでぶっ壊してもらおうかな。「勿体無い!」って言われそうだが、持っている意味が無いのなら意味が無いし。


 さてどうしようかなぁ、なんて考えていると、彼女から俺に話しかけてきた。その瞳にあるものは恐怖だ。


「貴様から強い、蒼穹城の次代への憎しみを感じる。恨みを感じる。蒼穹城に仇なすものに、我は力を与えたくない」

「今の蒼穹城に対して何も思っていないのか。前からこういうのだったのか?」


 俺は彼女に取り合わず、今の現状を問いかけた。

 正直、そこまで初代と固く約束をしていたのなら、その人は偉大だったんだろう。


 でも、今はどうだ?


「無論、違う。國綱は我を1人の人間として接してくれた」

「今は?」

「……物以下だ。真価を発揮できぬ器を持って、『役立たず』など言いおって」


 悔しいが、認めざるをえないと言った表情の少女は、同時に寂しげにも感じた。

 俺は特に憤りを感じているわけじゃない。誰かの為に何かを思うってのが、俺には多く欠如している。


 けれど、まあ、俺のものになったのならば。

 俺の敵でないのなら、俺は危害は与えたくない。



「そんな人でも? 蒼穹城につくのか。【顕煌遺物】の格が下がりそうな事態だな」

「……でも、約束だから」

「んな面倒なもの、破棄してしまえ」


 俺の言葉に、オニマルは「ふぇ?」と声を漏らした。

 口を開けたまま、「何言ってんだこいつ」みたいな目で見つめる。


 だが、俺は話を止めない。

 約束……ねえ。まるで代々一緒にいるから一緒にいます、と受け入れかけていた善機寺のようだ。


 善機寺は何も気にせず、勝手に目をさましてくれたけれど。

 コイツは無理だろうな……。言葉で聞いてくれる人間なら良いんだが。


 俺は前の蒼穹城なんてどうでもいいんだ。

 ただ、今の蒼穹城家ってのが最高にクソやろうだから、"彼女"をなんとかしたいだけなんだ。


 敵にならないのなら、味方に引き込む!


「もう死んだんだよ。その蒼穹城そらしろ國綱くにつなってやつは。もうこの世にいない人に対して永遠の約束だあ?」

「でも、でも。我の心のなかで、生き続けている。次代も当代も、今はああでもいつか……、私が所有者と認めるような器に」

「そのいつかって何時いつ? 祈りは本当に届くと思っているのか?」


 現実を突きつける。

 当代も所有者として認められてないのかよ……。


 まあ、俺を認めているからそうなんだろうとは、考えたんだけれど。

 いいや。

 俺は彼女が【國綱】と名前を呼ぶ度に、その言葉へ他の何かが混じっていることに気がつく。


「ははん、好きだったんだな」

「……ぐ」

「まあ良いや。で、どうするのさ」


 オニマルは答えない。

 ただ白く、ただただ白く、広い――そんな世界に、俺と彼女はいた。


 時間経過はどうなっているんだろうか。

 大丈夫だろう。攻撃されているのならば、戻っているはずだろうし。


 まさか、これが戻ったらスタボロになってましたなんてのは無いだろう。

 ……ないよな?


「お前は俺が嫌でも、一度認めたのは取り消せないんだろ」

「…………」


 コクリ。頷くオニマル。

 その目には涙が浮かんでいて、なるほど初代蒼穹城家当主も、彼女を人間扱いできるはずだと。


 でも、彼女に認められなければコミュニケーションは不可能か。


「ならお前の力は真価を発揮出来ない状態のでいい。でも、お前は俺の物だ」

「…………國綱の墓に連れて行ってくれ」

「んお?」


 俺は彼女の口調が、ほんの僅かに変わったことを感じ取った。

 変に恨まれている? いや、渋々だが俺の言葉に従うことにした?


 ……一生の約束ってもこの程度か。なら、俺も警戒しよう。

 一度あったことは再発するのだから。俺もそうされないとは限らない。


「挨拶がしたい。別れの挨拶を、したい。……蒼穹城に誇りが戻るまで、我は"ゼクス"、貴様と一緒にいる」

「その程度でいいの?」

「勿論、我は貴様に力をまだ与えない」


 んあー。それはどうでもいいや。

 力なんて自分のもので充分だとは言わない。


 でも、蒼穹城程度と戦うのなら。自分の力を過信している人間と殺り合うというのなら。

 彼女の力は必要ない。


「貴様が、誰かを想い。本気で愛することができたら真価を発揮してやる。それまでは『八龍ゼクス』、貴様をずっと見ている」


 それは難しそうだ。何年先になるのやら。

 でも、いいか。


 ……いいのか?


「良いけど……。俺、直後すぐあとに蒼穹城進に酷いことするよ?」

「……完了するまで、我は一人になる」


 小さな口から寂しげな言葉を紡いだ彼女は。

 目を閉じ、俺の前から消えた。






 そして、決闘の現場へ引き戻される。


 ……時間はさほど経っていないようだ。

 ただ、先程になかった【顕煌遺物ゼガシー】の輝きが。

 キラめきが、そこにはある。








「こりゃあ、いい」

次回更新は早くて今日のお昼。

何話更新できるかは不明ですが、予定を立てるなら最低3回。


今日中に蒼穹城の件は決着まで行きたい。

日常が書きたいです。


↓人気投票の回答があと11回で200になります。

 200になったら集計して、

 活動報告にて結果をお伝えさせていただきます!


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