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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第3章 11家緊急会議
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第057話 「当主達の入場」

 その日、八顕学園の学園門周りは妙に落ち着きがなかった。

 金曜日、3日前に急遽決まった「日本顕現者協会常任理事会会議」の会場がここになるためだろう。


 候補生たちは【顕現者】関係で一番権力のある11人の当主を出迎えるために、またはひと目見ようと集結しつつあった。


 ま、俺とアマツ、アガミは別の場所なんだけれど。

 「子」は「親」を待つために別室である。車で来た「親」を会場に誘導するためだ。


 アマツやアガミでさえ、「こんなことしなくていいのに」とか言っているが、学園側としてはこういう教育をきちんと行っていますよと見栄を張りたいのだろう。

 俺は特に気にせず、寧ろこの学園に入ってから少なくなった養親との時間を楽しみにしている。


「ゼクスって、自分の親大好きだよな」

「アマツは違うのか?」

「……勿論尊敬はしてる。尊敬はしているが、……変人だからなぁ」


 そう呟いたアマツの顔には僅かな陰りが見えた。

 ちょうど彼が成長期の頃、俺という【特例】がやってきたせいで研究がかなり忙しくなってしまった。


 本当に申し訳ないとは思う。

 俺も、それだけ自分が特別だとわかっていなかったし、今も特別だと思っていない。


「アガミの父親は?」

「普通? かな」


 アガミは逆に、どうってことないようにひらひらと手を振った。

 特に不満はないらしいが、だからといって俺もみたいに特別なついているというわけでもなさそう。


 と、学園門の方から車が1台入ってきた。

 文字通りの黒塗りの高級車、リムジン。車を見るなり【三貴神】が立ち上がり、所定の場所につく。


 音も立てず車が止まり、中から出てきたのは2人だ。

 ……2人?


 須鎖乃すさのアズサの方へ近づいたのは白髪が目立つ70歳ほどの男性であった。

 その容姿からは、当主というより隠居しているのではないかと錯覚させるほど弱々しく見える。


「お祖父様、こちらへ」


 アズサさんがそう言って手を差し出すと、須鎖乃家当主は最初から充分に細い目をさらに細くして頷いた。

 仲いいじゃん。まあ、あれは祖父と孫の関係なんだろうけれど。


 次は月姫詠つきよみの当主。女。

 ……彼女の制服が改造されているのが何故か、ひと目で理解できる格好。


 年齢は恐らく50ほど。随分と若々しく見える。

 月姫詠と「おひさー!」なんて軽い口調で言ってるんだが、あれ本当に親子か?

 ていうか、流石にあの態度は無い。


 無いぞ。


「…………」


 で、亜舞照あまて鳳鴻おおとりは誰も迎えず、1人で会場へさっそうと向かっていってしまった。


「亜舞照家当主は今回不在?」


 気になってアマツに質問するが、アマツはただ笑って「いや、来るよ」とさ。


 ……もう来ていたり、遅刻だったりするのかね。よくわからん。


「次は……あー俺達だな」


 次は赤塗のスーパーカーが入ってきて、アマツがんなことを言い出した。

 あれなの? 本気であれなの?


「……父さんの悪ふざけだなこりゃ」

「ご名答。多分レンタルじゃないか……ないわ。あれ家にあるやつを改造したものだわ」


 何やってるんだ神牙家当主。

 そんなことを考えながら所定の位置につき、縦に開くドアを見つめる。


 もともと、4人乗りの車だったというそれは原型をとどめていなかった。

 4人乗っていることは確認できる。運転手は誰かと思えばアマツの運転手ではなく、カナンさ……じゃなくて母さんである。


 俺の視線に気づいた母さんは、いたずらっぽく舌をペロっと出している。

 ……おぅい、なーにやってるんだこの人達は。


「一週間振りくらいか? ゼクス」


 そう言って俺に近づいてきたのは、冷躯さんであった。

 やっぱり若々しいなぁ、と感じつつアガミとアマツの父親も見る。


 ……アマツの父親は何度もあったことがあるけれど、アガミの父親も若々しいなぁ。

 なんだこれ。多分3人共「歳の離れた兄弟です」って言って通じそうな勢いだ。


「ゼクス君、久しぶりだねぇ」


 ゆったりと間延びした話し方をして、アマツに引っ張られているのはミソラさんだ。

 神牙ミソラ。神牙研究所の所長であり、俺が今かけている【神牙シンガ結晶Ⅱ】の開発者でもある。


「それ、ちゃんと効いてる?」

「はい。もうバッチリです」


 刀眞遼を目の前で見ても、殺意が湧かなくなりましたと言ったらあっちは「やり過ぎた」と感じるだろうか。

 それはそれで楽しい気がするが。


「そうそう、君の砕いた【結晶】を分析して新しい説を提唱したんだよ。君が強い憎しみを抱いている時に負荷がかかってて砕けたからさ、本当はどうかと考えて色々と自分で実験をしたんだよ、そしたら蒼穹城そらしろのことを考えて【顕現】を発動させたら、通常時よりも3割り増しで発動しちゃったんだよ――」

「はいはい。早くいくぞ」


 熱心に話し始めたミソラさんを、乱暴にアマツは引っ張って引きずっていく。ミソラさんは「後でゆっくり話しようねぇー!」なんてごきげんだった。

 ていうか、今さっき自分で実験をしたとか話をしていなかったか?


「……なんだあれ」


 俺は父さんと歩きながらそれをじっと見つめていた。後ろには蜂統はちすべ家の当主が居る。

 ……正直、父さんよりも若いんじゃないか?


「はじめまして、八龍ゼクス」


 そういって、アガミの成長後形態である当主様は、俺に頭を下げたのだった。


「私の名前は蜂統ジン。名前で読んでは、欲しくないかな?」




 ああー。

 「亞神アガミ」の親だから「じん」なのね。


「すごい名前ですね」

「つけたのは俺とカナンだが、ゼクスも人のこと言えないからな?」


 うん、つけたのは父さんだね!

次回更新は明日。2時までには更新したいですね。

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