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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第1部 第1章 入学
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第005話 「路地裏での異変」

 冷撫と校舎を歩いてみる。

 基本的には大きな本館と呼ばれる校舎が一つと、AからEまでに割り振られた校舎があるらしい。

 らしい、というのは。残念ながらこの園内図、手書きで書いたものらしく細かいことが全く書かれていない。


「別館は園内図にも載ってない」

「テニス部の勧誘が主目的なのでしょうし、必要ないのではないでしょうか」


 星型に配置されている校舎のうち、俺と冷撫が向かっているのは一番奥にあるC棟。

 各部活動の本部がそこに密集している、らしい。この学園に部活動への強制参加、などという校則は存在しないが。

 完全寮制、ということもあって空き時間を部活動に費やす人が多いということだろう。


「ゼクスさ、じゃなくて。ゼクスくんはどこかに所属するという気はあるのですか?」

「ない」


 この学園に来た目的って、最初が「復讐」だったしそれを起こすためには自由時間が多い方が勿論やり易い。

 出来れば、それ以外の時間はアマツや冷撫と一緒に過ごしたいんだけれど。という希望を彼女に話してみると、彼女は嬉しそうに目を煌めかせていた。

 

「鍛錬はもちろん、忘れずにですよ」

「そりゃあ、父さんから貰った訓練メニューは毎日やるさ」


 先ほど少しだけ、少しだけだったけれど他の人たちの顔をみたが、俺よりも強い人はあの時はいなかったと思う。八顕がアマツ以外来ていなかったし、三劔も俺以外いなかったことを考えれば当たり前といえば当たり前なのだろうけれど。

 ちなみに今、アマツよりも俺の方が強いっていうような口調だったけれど、挑発とか驕りとかそういうことを差し置いても俺の方が強いと断言できる。

 

 いや、彼には仕切れないほどの感謝をしているんだけれどもね。

 

「あ、忘れ物ですよこれ」


 今思い出した、というように冷撫は制服のポケットの中から、一つのペンデュラムネックレスを取り出した。

 振り子ペンデュラムの石は光の反射によって虹色に輝いている。

 

「ありがとう。忘れてたよ」

「戦闘になった時困るのは私ではなくゼクスくんなんですからね。しっかりするのです」


 この石のことを、みんなは【神牙しんが結晶】と呼んでいる。

 もちろん開発はアマツの両親。未だ試作品であり、一般には出回っていない希少価値の高いものだけれど、俺はその実験台というか、試験体になる代わりに所持することを許されている。


 効果は、今回の場合「【顕現オーソライズ】の発動をわざと遅らせる」ことと「【顕現】の正確度を上げる」ということ。後者はともかく、前者はデメリットしかないかと思われるけれど。俺にはメリットなのだ。


 俺は、「【顕現】の発動が速すぎる」ことによって、「【顕現】の正確度がゴミ同然」となり、試験に落ちたのだから。

 

「もう。私が予備を持ってなかったら」

「その時はその時」


 訝しげな顔をする彼女に、俺は話を切り上げるため周りを見回し。

 少しあとに、違和感を覚えた。

 

 ここは校舎と校舎の間、つまりは路地だ。そんなところにいる人間というのはたいていが禄でもないのであり、そして。

 そして、今。目の前には在校生らしき4人の男の影、そして彼らが囲んでいる1人の新入生の女子が、そこにいた。

 

「助けないんです?」


 冷撫は、なんというか泣きそうな顔でこちらを見つめていた。

 助けるとか助けないとか、そういう話ではないような気もするけれど。

 

「そんな気にはなれないな」

「何故ですか」

「第一に、俺と関係のない事項だからだ」


 俺がそう言い捨てると、少女の目線は咎めるようなものに変わっていた。

 正義らしい心を持っている少女だな、というのが感想であった。


 でも、俺は違う。

 

「私に行けとは言わないんですね」

「冷撫は俺に関連するから」


 俺が信用できる少ない人間の一人だ、そんな少女を俺がわざわざ危険な場所に放り出すとでも思っているんだろうか。いや、思っていないんだろう。だからこそ、そういって俺を脅迫かんゆうしようとしている。

 

「本当に行かないんですね?」


 行かないなら、私が行きますよ。と?

 冷撫なら言いそうだ。これから何が執り行われるのか、黙って見過ごせない顔をしている。


 くそ。

 やっぱり、俺が行くのか。

 こんな恋愛小説の、出会いみたいなことをやらされるのか。

 

「……わかったよ」

「わーい」


 無邪気に笑う彼女を本気で張り倒したくなって、ぐっと堪える。

 でも、正直。俺の力を試すのには、ちょうどいい機会だと考えてしまった。 

次回更新は明日。また2話更新かもです

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