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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2章 授業選択期間
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第047話 「止まらない殺意」

 正直、蒼穹城の目をぶっ刺した時。俺……八龍ゼクスは奇妙な感覚に襲われていた。

 やっと復讐できたという気持ち、安堵。これからまだまだ始まるという気持ち殺意の爆発。


 刺せば終わると自分でも考えていたが、湧いていくのは殺意の塊でしかなかった。

 自分でも何故起こっているのかわからなくなって。


 ただ、「殺したい」という感情が、殺意が、噴き出すように思考全てを覆った。


「痛いか?」

 

 俺の質問に、相手は答えなかった。

 答えられないという方が正しいか。口を開けば悲鳴が出、それを無理やり押し込めようと努力している。


 その姿が、妙に腹立たしかった。

 

「……ぁぐ……」

「蒼穹城進、お前は人ごく一部の人以外を【モノ】だと認識していたよな」


 相手からは声にならない悲鳴が聞こえる。

 出力をおさえていても、そりゃあ刺せるよな?


 【顕現オーソライズ】で切断の禁止はされている。だから出力は抑えろと命令されているし、銃なら貫通は禁止だ。

 剣やナイフはついても肌に刺さらないように出力調整の義務がある。


 しかし、それでも目は? 調整していても、目は貫ける。


 俺の心の傷は治せないんだから、お前の目一つも潰して【顕現者オーソライザー】人生を一つぶっ潰してやるよ。

 素質がないって判断されて、「ゴミ」なんだったら。

 自分がそうなる覚悟は、できているんだよな?


「なら、お前は只今を持って俺の復讐対象である【モノ】扱いしても、構わないよなぁ?」


 ゆっくりと彼に近づく。蒼穹城進は、俺の姿を認識しているのかしていないのかすら、わからない様子でこちらを呆然と見つめていた。

 右手を思い切り後ろに振りかぶって、筋肉を圧縮。


 そして一気に爆発させ、彼の無意識に発動した【顕現オーソライズ】による障壁を正面から叩き割り。


 右目にストレートを直撃させる。

 後ろに吹っ飛び、二転三転と地面を転がった男を取り押さえてまっすぐ彼を見やる。


 ああ、無様な姿だ。


「がっ……つ、……つ……」


 俺の「元」名前を呼ぼうとしているらしいが。

 そんなこと、俺とは関係ない。


 ただ、相手を殺したかった。

 殺さないなら、何度でも。生き地獄を味あわせてやるんだ。

 




 そこから先はあまり覚えていない。

 気がつけば、目の前にはボロボロの蒼穹城が転がっていて、俺はアマツに羽交い締めにされていた。


 ずっと蒼穹城に呪詛を吐いていた気がする。

 頭がはっきりとせず、アマツの拘束から無理やり抜けだして……地面に転がっている男の腹に蹴りを加えた。


 一瞬だけ蒼穹城の体が宙に浮いて、周りから女子の悲鳴が上がる。

 すでに蒼穹城は動かなくなっていた。……その姿がまた妙に怒りのトリガーを引いて、俺は再度近づこうとしアマツに取り押さえられる。


「そのままじゃ殺人になるんだよ! ゼクス!」

「……何故駄目なんだよ」


 俺がそう答えると、アマツは困惑したように力をゆるめ、その隙に俺は再度走りだす。

 駈け出した先には、ビクビクと体を震わせ未だ意識を失っていない蒼穹城の姿があった。


「死ね」

「八龍ゼクス、そこで止まりなさぶっ!?」


 俺と蒼穹城の間に割って入るようにした男の教授、その腹を思い切り拳で振りぬく。

 拳が空気を切り裂き、人間が到底出し得ない衝撃音を鳴らして教師は上へ吹っ飛んだ。

 相手は、何が起こったかわからなかっただろう。


 教師は危険と判断したら止めると言っていた。しかし、それに「従う義務」と「教師に反撃する事への禁止」はされていない。

 1年なら、教師で止めることができるからだろう。でも。


 でも、俺みたいな1年だったら。

 本当に止められるのか?


「邪魔するな」


 頭が、妙にすっきりしていた。怒りにとらわれ、殺意に囚われていながらも自分が何をしているのか、分かっている。

 だからこそ、蒼穹城に牙を剥いた。


「ゼクス……!」


 後ろで必死になって止めているアマツが、顕現力を爆発させたのを感じた。膨れ上がるように彼から焔属性の顕現力が俺を包み込み、後ろから強い衝撃が襲う。


 が、俺はそれを足場変え跳躍。


 蒼穹城に向かって一直線に飛び出す。


「胤龍、止めてくれ」

「次は刀眞遼、お前だぞ」


 【顕現】された強固な障壁が、俺の目の前に横から割り込む。


 庇ったのは、俺の元兄であった。

 腕力で突き破れない障壁が彼の前に展開され、俺は一時的に停止せざるを得ない。


「俺はもう、刀眞胤龍じゃない」

「なら、八龍ゼクス。止めてくれ」


 彼は、どこか儚げな表情で俺を見つめていた。

 それは、軽蔑が少しも感じられず、俺を対等の人間として扱っているように感じる。


 しかし、それは俺の怒りを増幅させる要因になりえていた。


「俺が強くなって力をつけたから、そういう表情をするのか」


 5年前の表情が頭からこびり付いて離れない。

 俺は吼え、持っていた【リアサルト】の柄の先から自分の腕の長さ程度の刃を出現させると、障壁に向かって突撃する。


「神牙! 今だけでも良い、協力して八龍を止めてくれ! 蒼穹城がこのままじゃ死ぬんだ」

「……分かった! 今回だけだからな!」



 アマツと刀眞遼が協力した、その事実に俺はよく分からない気持ちになって、

 ……憎しみの一部が蒼穹城からアマツへ割かれる。


 この一時だけ、アマツを敵と判断した。


「俺の、邪魔をするなあああああぁぁぁぁぁ!」


 俺の叫びを聞いて、アマツが顔をしかめる。無意識に俺は振りかぶり、後ろにいる彼に向かって渾身のストレートを叩き込む。

 しかし、アマツは金色に煌めく手で俺を抑えこんだ。


 位置は彼の下腹部。そこに来るのが予想できたかのような動きで俺を抑えこむと、もう離すまいと力を込めている。


「あいつを殺せば……!」


 蒼穹城を殺せば、俺の気持ちも少しは和らぐんだ。

 俺はそう叫んで手を振りほどこうとするが、それは固定されたように動かなかった。


 アマツは非難するでも拒絶するでもなく、ただ俺を見つめてから首を振る。


「……ゼクス、それは違う」


 その言葉は、容赦なく俺を切り捨てた。


「復讐するのを俺は否定しない。ゼクスの苦しみを一部でも知っているし、それをやめろとは言っていない」

「なら……ッ!」

「でも、殺すのは違う。ゼクスが人間じゃなくなるのは、俺が許さない」


 その言葉で一瞬だけハッとなり、力が抜ける。

 アマツが後ろの方にアイコンタクトを送り、刀眞遼が動く気配がした。

 

「くっそ、なんでこうなったんだよ。胤龍」


 クソと叫びたいのは俺の方だ。誰のせいだと思っている。

 どいつもこいつも俺の邪魔をして……!


 ぶっ殺せない。

 目の前の蒼穹城を再起不能以上にしたいのに、このままじゃ目以外が治療で回復してしまう。


「はいはい……、もう試合終了だから」




 別の声が、上の方からした。

 俺が唖然としてそちらを向くと、見計らったかのように3方向からアガミとアマツ、刀眞遼が衝撃で俺を塞ぐ。


 ……恐らく全力だろう。

 3方向から同時に強い顕現力を感じ、拘束効果によって身じろぎすらできない。


「ちょっとだけ、意識をなくしてね」


 最後に見えたのは、空中で神々しい真っ白な3対の翼を展開し。

 俺をじっと、見つめていた……






 ……亜舞照あまて鳳鴻おおとりの姿だった。

ゼクスの滅茶苦茶な心境を表すために書いたら、凄く支離滅裂な文章に……。


次回の更新予定は明日です。

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