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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2章 授業選択期間
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第040話 「未所持:救う権限」

「は?」


 やっぱり誰かに似ている、と言われた俺の第1声はドスの聞いた疑問符であった。

 その言葉に、突っ込みたいことはたくさんある。


 まず、その尋ね方はかなり失礼ではなかろうか。

 俺がそうでないとき、相手は完全に「勘違い女」である。

 そして、今もそれであることに変わりはない。


 誰か、という曖昧な指定も神経を逆なでする。

 誰だよ、ってなるだろうが。ちょっとは考えてくれよと叫びたくなる。


 あと、俺は東雲しののめと話をしたくない。


「はいはい、誰かに似てるとか良いから、どっか行ってくれ」


 アマツが耐えかねたのかしっしっと手を振る。

 しかし、彼女は動かない。


 ここで腹蹴ってふっ飛ばしたら気持ちが清々するだろうか、とどす黒い感情が流れ出してきた当たりで俺は考えるのをやめる。

 深呼吸して、なんとか普通に話をしようと試みてみる。


「何故、八龍ゼクスくんは私を助けてくれたのに、あなた達は私に敵意を持っているんですか?」


 東雲だと知っていたなら助けなかったし、そもそも俺が東雲を助けたのは冷撫の頼みがあってこそなんだよな……。

 でも、目の前の少女はそれを知る由もない。


 俺は善人ではない。寧ろ言えば「復讐に取り憑かれていながら、安らぎを求めている」矛盾したもの。


「自分に自覚がないのなら、お話することはありませんね」


 冷撫ですら冷酷。その意味を、目の前の少女は未だ分からないでいる。

 ただ、「自分に向けられた不当な敵意」と認識しているのか、憤慨しているようにも見えた。

 ふんがー。


 ……まあ、俺がもしかして誰かに似ていると感じているのなら、それに対して相応の態度をするとかあると思うんだけれど。

 それもない。それとも、今の態度が相応だとでも考えているのだろうか?


「……まあ、すぐに分かる。巣に帰りな」


 俺はそれだけを言い残して、後の一切を無視した。

 大分、我慢したほうだと思う。あのまま殺したくもなったが、流石にまだ抑えるべきか。


 いくら11家でも殺人は処されるからな。

 ……やっぱり、どこかのタイミングで顕現による決闘をさせないと。



---



「……反応があるかと思ったのですが、無いですね」


 俺……刀眞とうまりょうは、しょんぼりとして帰ってきた契をみてため息をついた。

 

 彼女は本気で八龍ゼクスを胤龍つぐりゅうだと思っているのだろうか、くだらない話だ。

 俺の元弟は、親父に投げ飛ばされて家から追放。

 そのあと1度も「見た」という人間は出ていない。


 とうの昔に死んでいておかしくないはずだ。

 ちなみに、死亡確認をしなかったのは「刀眞家でないならどうでもいい」と親父が宣言したからなんだけれどもな。


 ……まだ、八龍にぶん殴られた腫れが残っている。

 あの拳は、怒りだけからくるものではなかった。


 少なくとも、強い憎しみを表情から感じ取ることができたけれど。

 それは、俺が終夜よすがら古都音ことねに迫ったのとは関係がない気がする。あいつは友情とかで動かされる人ではないだろう。

 蜂統はちすべをからかった時は、反応がなかったから。


「まあ、刀眞家は嫌われるだろうさ」


 と、俺は意に介す必要のないものと判断する。


 刀眞家がやってきたことなんて、多すぎて数えきれない。

 俺が知らないものも多いだろう。俺が知り得ているのは氷山の一角で、恐らく今想定しているものよりも遥かに多いはずだ。


 例えば……契の親の会社に圧力をかけて潰しかけ、それへ蒼穹城そらしろに援助させて契と会社を手に入れたりとか。

 その代わりに、会社から最新の【顕装】を手に入れたりとかな。



 【顕装】を作る会社に【八顕】のスポンサーをつけるようになったのもその時からだ。

 まあ、俺達の場合は支配に近いけれど。


 あとは、神牙家に牽制をかけて50年間【顕現】の研究を遅らせたりもしたらしい。

 神牙家が刀眞家・蒼穹城家を敵視するのはそこからだろう。


「そろそろしんのところに戻らないと、また怒られるぞ」

「……そうですね」


 可愛い人形だ。自分で喋りもするし、動き、しかし実際は誰かに流されながらしか生きていけない少女。

 契の上にはいつ何時も、直接彼女を縛り付ける人が存在する。


 まあ、それが蒼穹城そらしろしんだが。

 救ってやろうとは思わない。中途半端にやったところで、両方にダメージが及ぶだけだ。安らぎを与えるのも、後で余計ダメージを負わせてしまう。


 ……胤龍がいたら少しは変わっていたかもしれない。

 だが、あいつはもういない。【顕現者】でない人は人として扱われないのが刀眞家である。


 俺は父親に憧れた。力が全てというその考え方に憧れた。

 だがそれに反発する、胤龍が邪魔だった。

 弱き者を助けて、後でどうするのか俺は知らない。


 だから、正直いなくなって俺は助かったけれど。

 ……契はそうではない。


「遼さん?」

「……悪い、考え事を」


 救ってやりたいのは山々だが、怨むなら俺ではなく現当主たちを怨むんだな。

 俺には契を救う権限を持っていない。

次回更新予定は日をまたいだ頃。

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