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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2章 授業選択期間
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第039話 「寄って来る悪夢」

「ということで、説明は以上だ。質問のある人は、解散後に個別で聞きに来るように」


 神御裂かんみざき律火りっか先生の声が響いて、俺の意識は眠りから覚醒へと向かった。

 すっかり寝ていた気がする。時計を確認すればすでに時間がかなり過ぎていて、ガイダンス開始時刻から2時間が経っていた。


 やっぱり過眠症なのか? と不思議に考えつつ、俺は後で冷撫れいなから情報を聞き出そうと思い立つ。

 冷撫なら教えてくれるだろうと隣を見れば、彼女は背筋をピンと伸ばして前を向いていた。


「本当に真面目人間だな、冷撫は」

「褒めているのか馬鹿にされているのかわかりませんけれど、すくなくともゼクスくんよりはマシなのです」

「ごもっともで」


 俺は特に反論せず、欠伸をしながらそう答えた。

 まあ仕方ないっちゃあ仕方ないだろう。何が、と聞かれれば返答に戸惑うが。


「後で簡単に説明するので、まずはお昼を食べるです」

「なんで不完全な敬語になってんの?」

「気分ですので」


 ……なんだか、調子が狂うな。

 

 解散の合図を聞いて、生徒たちはバラバラと会場から出て行った。

 ここは試験場ではなく、入学式のあった体育館だ。


 アマツが前の方でアガミと「疲れた飯飯ぃ」とぼやいているのが聞こえ、彼等に向かって手を振る。

 すぐに2人とも気づいたようだ。


「1日に授業って4コマしかないのか。余裕だな」


 合流して最初に口を開いたのは、アマツだった。

 全く話を聞いていない俺が首を傾げると、冷撫はため息をついて「90分授業が4コマ、午前2コマ午後2コマが基本だそうです」と補足をしてくれた。


「おま、また寝てたのか」

「なんか眠くなってね」


 よくあの状況下で寝れるぜ、とアガミ。中立の立場で監視役とも囁かれている神御裂律火が話しているのは分かるが、眠気には勝てなかったよ……。


 という冗談はさておき、アマツたちに食事はどうするかを問う。

 アマツは「この4人と古都音さんでいいだろ」と返答した。


 出来るだけ古都音先輩から離れるなと言われているんだろう、アガミの表情を考慮しての話だと思う。


「第1食堂のファーストフード店で席とってるから」

「おう、じゃあまた」


 出口へ走っていくアガミを見送り、いつもの3人になった俺達は顔を見合わせた。

 第1食堂は一番大きい食堂だ。6つの巨大な校舎にはないが、一つの校舎がそもそも巨大な食堂群になっている。

 ここにいけば和風洋風中華風全て揃っていると言ってもいいだろう。


 企業も幾つか提携しており、まだ世に出回っていない新商品を「モニター」として格安で購入できたり、例えばピザを作っているところを外から眺めることすら出来たりする。


 欠点として、15時には閉まることが挙げられる。夕方や夜は利用できない。


「さて、いくかー」


 アマツが大きな欠伸をしてからそう言い、歩き始める。

 俺たちは彼についていく形で、後を追いかけた。


須鎖乃すさのさんたちは呼ばないのですか?」

三貴神アイツラは、それぞれ用事があるって何処かに行ったぜ」


 確かに、月姫詠つきよみ亜舞照あまて・須鎖乃はそれぞれ日本の神話から取られているかもしれないけれど。

 それを「三貴神」って呼ぶのどうにかならないかね? ならないか。


 それにしても用事があるのか、【八顕】って忙しいんだな。

 ……ん?


「暇人で悪かったな。……いや、俺は冷撫やゼクスと一緒に居るのが役目みたいなものだから」


 アマツを見つめていると、そう言う風にわけのわからないことを言い始めた。親友でもちょっと気持ち悪いぞ。何が役目なんだかよくわからんが。


「それにしても、【結晶】無しでもなんとかなるもんだな」

「今は穏やかでも、スイッチが入ったら戻らなくなるから。その時は止めてくれ」

 

 そう、今俺は【神牙シンガ結晶】を装着していない。

 正しくは今日の朝からだ。流石に入学3日にして2つぶっ壊したら、次は無いからな。


 アマツは【結晶】をサンプルとして親に送っているらしいけれど、まだ新しいそれが支給されるかはわからないと。

 今は出来るだけ、あの人達の事を考えないようにしているからなんとかなっている状態だ。


 ……視界に入れなきゃこんなに穏やかにいられるのに。

 アレほど、目障りなものを俺は見たことがない。


「あっ、あの」


 ほら。


 こんなことを考えているから、悪夢が寄ってくるだろう……。

 声がして、振り向けばそこにいるのは東雲しののめちぎりである。


「……何か?」


 俺は出来るだけ感情を乗せずに彼女へ話しかけた。

 正負の感情どちらも乗せなかった言葉は、アマツと冷撫が思わず身じろぎしてしまうほど不気味だったのだろう。


 しかし、相手は引き下がらない。

 少女は何かを決めたように右手を握りこみ、俺をまっすぐ見つめた。





「やっぱり、八龍ゼクスくんは誰かに似ています。入学時が初めてじゃない」

次回更新予定は今日です。16時までには更新したいですね。

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