第371話 「黒い殺意」
「勘違いするなよ、蒼穹城。刀眞。
特に刀眞……お前は今、特別措置として行動を許可されているだけだ」
普段なら、神牙研究所で今頃も監視対象になっているはずだ、と神牙アマツは警戒度マックスな眼で、刀眞遼を睨みつけていた。
ここは顕現者協会、ロビー近くの喫茶店。
【Revenant】に誘拐されている善機寺颯と。
八顕学園の学生寮にて待機を命じられている、御雷氷ゼクス以外の【八顕】の次代達は、そこに集合している。
その中で、一番厳しい顔をしているのがアマツ、だ。
記憶をなくし、精神が不安定な冷撫のケアで自分もダウン寸前であるが、そんなことを言っていられる余裕ももはや、残されていなかった。
対して、そう意見を貰った蒼穹城進と刀眞遼は、互いに眼を見合わせる。
そして、少しだけ可笑しさを堪えるようにクスッと笑ったのを、アマツは見逃さない。
「何がおかしい」
「【顕現者】は、意志が顕現として現れる。
顕現力と、そのオーラを見れば。僕達に悪気も変な気もないことくらい、分かってるんじゃないかな?」
実際、2人の身の潔白は、【三貴神】も認めることであった。
何しろ、亜舞照鳳鴻の【精神操作】を知っていながら、それを恐れずに手を握ったのである。
会議内で、暴動が起こるほどの影響力を持つ鳳鴻の能力に対して、一切躊躇しなかったのは、確かだ。
それを思い返しても、敵意ほどではないにしろ、ある程度の疑いを持っているアマツに対して……。
進は、言葉を続けた。
「僕が気になるのは、こんなに【八顕】の次代が集まってて良いのかな、ってことなんだけどね。護衛もいつもと比べて少ないし」
【八顕】の当代達は本日の一大作戦の為に動き、それに加えて顕現的な有力者も多くが席を外している。
ここにアマツ達がいるのは、単純に「人の目が多いから」という理由だけだ。
唯一、例外として当代でありながら次代達と同い年である、鳳鴻だけがこの場にいる。
「何が言いたいんだい、蒼穹城君」
もったいぶっても仕方ないよ、と。
鳳鴻は、澄んだ目で進を見つめていた。
「少々、平和ボケしてるんじゃないかな、って思ってね。
八顕学園は普段、警備が厳しい事で有名なはずなんだけど。
襲撃されたあの日は、易々と進入されたんだよ?
つまり……」
裏で誰か、糸を引いているのかも知れない。
アマツ達はそう考えながら、次の言葉を待つことにしたが……。
その続きは、聞くことが出来なかった。
――しかし、その答えが、「やってきた」のだ。
突然の気配。
鋭く、明確な敵意。
そして、おぞましくも感じてしまう、黒紫の顕現力。
狙いは、進だ。
「――そんなことだろうと、思ってた」
殺意による、後ろからの一撃を。
あらかじめ手をかけていた、【顕煌遺物】:【氷神切兼光】で完璧に近い形でいなしきった進は、周りに恐ろしい程の緊張と恐怖が駆け巡る中、振り返ることもなく、言葉を続ける。
「久しぶり。刀眞獅子王さんに、契。
――いや、今は【ギリタストルドー実体】と呼んだ方が、いいかな?」




