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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第3部 第1章 迎撃と襲撃
360/374

第360話 「兄弟」

3月5日分2話目。

「……殺してないよね?」

「殺してない」


 場は一瞬で決着がついた。ゼクスの特攻により、進たちを取り囲んでいた【レヴェナント】の構成員は全員が意識を失っている。

 そんな彼らを、進と遼が丁寧に縛り上げたところだ。


 蒼穹城進は、リーダー格の男を【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】の柄で小突いてみる。――起きる気配はない。


「それにしても手加減――いや。もしかしたら僕達のどちらかが捕縛されていたかもしれない。ありがとう」

「問題ないさ」


 目の前の音が「意図的に」荒技を繰り出したのは、おそらく何か考えが合ってのことだろうと進は判断した。

 特になかったとしても問題は解決してしまたのだから、文句を言う筋合いはないだろう。


 それよりも、面食らったのはあの顕現力の濃度と量だ。進は本気になった自身の父親を見たことはないが数回、御雷氷みかおり冷躯れいくの戦いは見たことがある。

 ――そのときと同等の顕現力だった。その殺意が自身に向けられていたら、おそらく相手が物理的に何もしてこなかったとしても、卒倒する自信すらある。


 実際、ゼクスが巻き込んできた【レヴェナント】の構成員を見る限り、数人は物理的外傷がないののに意識を失っているように見えた。


「ちょっと強くなりすぎじゃない?」

「今回に限っては、顕現力で殴りかかっただけだから強いとか弱いとか多分関係ない」


 拳を確かめるように握り、ゼクスは端的に話をした。

 思ったよりも手応えがなかった、と感じているだけではない。少なくとも目の前の男は、高濃度の顕現力でカモフラージュした自分を認めて回避行動には入っていた。


 つまりは、行動が間に合わなかったとはいえ判断はできる程度の敵ということだ。他の構成員たちがどんなレベルか分からないが、少なくとも部隊のリーダーはこのくらいと考えて問題ない。


 ここまで考えて進のほうに向いたゼクスであったが、相手はすでにもう1人の方へ意識を向けていた。


「で、何故ここにいるの」

「謹慎中は模範生だったから」


 なんでもないことのように話す遼に対して、進は首を振った。

 精神汚染され、半ば洗脳のような状態であったといえども、半分ほどは自分の意志で八顕学園内の連続殺人を起こした張本人だ。

 刀眞家はすでに【八顕】でもないため、権力でなんとかするということはできない。


「それだけで戻ってこれるはずがないじゃないか。ゼクスみたいに特殊な措置をとられていないことが奇跡みたいなものじゃないか」


 ――特段、進は遼を憎んでいると考えているわけではない。かわいそうな人間だと思っているだけだ。

 同時に、自分も同類だということは分かっている。


 しかしそれでも、彼は少なくとも進の友人であった。


「取られたさ」


 肩をすくめる遼に、進は「は?」と声を上げてしまう。

 しかしそれ以上に、次の言葉に驚いた。


「母が親権を破棄して、今は一時的に御雷氷家に引き取られている。学園卒業後にどうなるかは分からないが」


 これで俺も御雷氷姓か? とゼクスの方を振り返る遼。

 返ってきたのは短いうなずきだ。


「奇妙な話だな。11ヶ月離れた兄弟が袂を分かって、殺し合って。――最終的にまた兄弟になるんだから」

「流石にもう『兄さん』とは呼ばないがな」


 そんな『兄弟』の会話を聞いて、進は思わず吹き出してしまう。

 何はともあれ、素晴らしいことだろう。



「素晴らしいことだね。またこうやって話ができるなんて、思ってもいなかったから。――!?」


 何気なく空を見上げた進は、そこにあった光景を見て、






 まだ自分たちが戦場にいることを、思い出した。

 うっかりしていた。自分たちが助かったなら、次は【三貴神】の方へ援護にいく必要があったはずなのに、失念していた。






 そこには、男に拘束されて連れられた、斬灯の姿があった。


月姫詠つきよみさん……?」

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