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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2部 間章 凱旋準備
354/374

第354話 「斬灯の秘密」

「――と、言うわけで。来年度も絶対に気を抜けないんだよ。……多分、【Revenant(レヴェナント)】が来る。【ATraIoEs(アトラロイス)】には来たし、ブリンク学園にも来た。八顕学園に来ないはずがない」


 鳳鴻は、斬灯に説明していた。いま現在、八顕学園に在籍している人。もしくは来年度に在籍する予定の生徒の中から、【Revenant(レヴェナント)】が狙っている人のリストを読み上げた所だ。


 ある程度の警護が充実しているはずの2学園でいとも簡単に進入されたのだ。

 警護の薄い八顕学園なら、簡単どころの話ではないだろう。


 鳳鴻ははぁ、とため息をついた。時計を見上げれば、既に休憩の時間は過ぎている。

 説明に時間を掛けすぎてしまったことに若干の後悔を覚えつつ、斬灯を見た。


「そろそろ場所を変えようか。……次の用事までの移動もあるし」


 こくりと頷く斬灯。今から亜舞照あまて月姫詠つきよみ須鎖乃すさのの3家で会議を執り行うことになっている。

 勿論、会議の場はここ八顕学園ではない。


「大丈夫です。護衛は要りませんから」


 部屋の外で待機していた護衛をことわり、彼女を伴って出口へ向かう。

 護衛は必要ない、と言われて斬灯は不安げだ。


 一応は相手側の末端から、状況はある程度把握できている。

 しかし、それが掴まされた偽のものであったなら、どうすればいいのだろう。

 斬灯は不安を隠せない。


「ねえ、本当に大丈夫なの?」

「僕よりも弱いだろう護衛が、僕を護衛できると思わないけれど。寧ろ、こっちの方が安心できるよ、君のことも考えるとね」


 ウィンクしながら飄々とのたまう鳳鴻に、反論する気力もなく斬灯は頷く。


「日本は本当に平和ぼけしてると思うよ。もっと警戒するべきなのに、どうして普通に生活できているのか、僕には分からない」

「自分達とは関係ないと思っているから、かな。私も正直、日本の顕現者のトップに近い立場で居ながら、あまり気にしてなかったから――」


 尻すぼみになっていく言葉に、少年は若干眉をひそめながら前を向く。

 しかし実際、日本【八顕】は動き始めている。きっとゼクス達も親から状況を聞いて、予定を早めたのだろうと鳳鴻は推測していた。


「さっきは言ってなかったけど、君も【Revenant(レヴェナント)】の標的であるんだからね」


 その言葉に、斬灯の表情が固まる。どうして――。


「どうして、その事を知ってるの?」


 情報は月姫詠家でも限られた人間しか知らない筈だと、少女は考えていた。

 自分が何者であるか。まだ誰にも言っていないはずの情報を、この男が知っていることに、警戒せざるを得ない。


 ……しかし、鳳鴻は安心させるように、また自分の存在を誇示するように次の言葉を発した。


「僕を誰だと思ってるのかな」


 少年の言葉に、斬灯はハッとする。

 目の前の存在がどういうものか、思い出す。


「日本【八顕】が一角の当代で、なおかつ三貴神だよ。僕は君の情報を教えてもらっている――、知ってしまった以上、責任をもつつもりでは居る」


 でも、と。鳳鴻は頭を掻きながら話を続けた。


「でも、約束して欲しい事があるんだ」

「なぁに?」

「僕一人でも、斬灯ちゃんを護りきれない事もあるだろう。他にもいっぱい生徒はいるし、僕だって自分を守り続けないといけない」


 頷く斬灯。こう、今でこそ鳳鴻は自分と一緒に居てくれているが、彼には聖樹みさきという将来を背負うべき少女が既にいる。


「君のその能力は、ちゃんと自衛の為にも使うんだ、いいね?」

「……うん」


 もう一度、頷いた。――頷きはしたが、その表情は優れない。

 実際、悩んでいる。この力はそう簡単に使ってはいけない物だと自分が一番分かっているからだ。


「分かってるよ。我が身が一番、だものね」

「うん、そういうことー」

 

 朗らかに笑い合う二人。その両方ともが、きちんとみらいを見据えていた。




 しかしこのとき、誰もがまだ知らなかったのだ。

 来年度の始業式その日が、「八顕学園の悪夢」と呼ばれる日になることを。

 

次回からは第3部です。

大抵の骨組みは出来ているので、今週中にはじめられると思います。

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