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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2部 第4章 機関最強
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第349話 「フレズの目覚め」

 フレズ・エーテルの覚醒は、まるでそこを狙ったかのように、ゼクスだけが病室にいるときに行われた。

 薄目で周りを確認する。【ATraIoEs(アトラロイス)】の病室で、隣にはベッドに突っ伏して寝ているらしいゼクス。


 そんな彼が無性に愛おしくなってしまって。フレズは力の入らない右手をそっと動かす。


「ゼクス……?」


 最初の反応は、ピクリとした痙攣。

 彼女の手が、頭をゆっくりと擦ると、次は彼が覚醒する番だ。


「フレズ、起きたか」

「……うん、大丈夫」


 倒れた直前の記憶がないことに気づくフレズに、ゼクスは柔らかな笑顔で「心配ない」と首を振った。

 ――が、彼女は納得しない。


 自身が【龍化】した、いやしてしまったことに、彼はどう思っているのだろう。

 精神空間で交わした言葉を、フレズはまだ、思い出せていない。


「正直、引いたでしょ?」

「ライガさんから話は聞いた。……引いていたならここにいないと思うが、どうかな?」


 本当に喜ばしいことだ、とフレズは目を細める。【ATraIoEs(アトラロイス)】で初めてであった、嫌われたくない人にまだ嫌われていない。


 一方、ゼクスはというと。

 フレズが無事覚醒したという安堵は徐々に弱くなり、顔が真面目なものへと変わっていく。


「フレズ。……俺は約束を守りたいんだが、話を聞いてくれるか?」

「うん、大丈夫」


 フレズは軽く起き上がって、自分に意外と力が残っていることに気づく。

 顕現力は、それほど失われていないらしいが――いや。

 誰かが回復させたのか、と理解する。


「古都音は、俺に妾を作ってもいいと言った」

「うん、私もそれで構わないのだけど」


 エーテル家の次を継ぐのはフレズではなくセヴォルトだ。フレズは分かっている。


 逆にゼクスは、今まで自身を異性として好いてくれた少女たちを思い返していた。

 冷撫れいなは自身の記憶を抹消されていて、これからはアマツと仲は良好になるだろう。

 斬灯りとは……よくわからないが、周りは認めてくれないのである。


「俺は、フレズを受け入れる。ただし、フレズと『そういう』関係になるのは、【学園】を卒業してからにして頂きたい」


 ゼクスの言葉に、フレズは2回頷いた。


「学業は全うしないとな。御雷氷家の次代の話は、その後だろうし」

「――うん」


 感謝する。自身を受け入れてくれた男性に。

 誓う。その選択を後悔させないと、強く。


「――ところで、【ATraIoEs(アトラロイス)】の最強三角が崩壊してしまったわけなんだが、どうするんだ?」


 ゼクスの言葉に、フレズは首を傾げた。


「どうもしないんじゃない? まさか三角のうち、一人が反社会結社に所属していた構成員で、残り2人がそれぞれ別の棟に在籍していた兄妹でした、なんて――面白くもなんともない」


 最強伝説は目の前の男が打倒してしまったようなものであるし、伝説は時と共に霧散していくだろう。

 フレズはじっと、ゼクスの方を見つめている。


「ともかく、あなたは私を救ってくれた。エーテル家からはそれ相応のものがもらえるでしょう」

「ん。……そんなにほしいものなんてないけどな」


 心の「ほしいものリスト」はほぼ空なゼクスは、「褒美」というものに対して欲が出なかった。

 唯一、あり得た「フレズ」という最上級のものも。結局は褒美にするでもなく彼女自身が望んでしまった。


「無欲ね」

「今のところは、父さんくらい強くなれる場所があればいいけれど」







 ゼクスのボヤキを、フレズは聞き逃さない。

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