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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2部 第4章 機関最強
340/374

第340話 「【レヴェナント】と暴走態」

「【捕縛(キャプチャー)】」


 戦いの最中、特別観戦席で声が響いた。続く金属の擦れ合う音。

 ゼヴァートは「うっ」と声を上げ、隣に居た少年を睨みつける。


「どういう意味だ」

「……そろそろ行動を起こすべきだと判断したんだよ、ゼヴァート。いや、セヴォルト・エーテルと呼んだ方がいいかな?」


 この学園でフレズとゼクスしか知らない筈の事実に、ゼヴァートは目を見開く。

 いつの間に、この男に知られてしまったのか。


「君は僕唯一の友ですからね。……このままここで大人しく、最前席で見て頂きましょう」


 ヴィレンはそう言って、自制するために動きを鈍らせたセイレム=フレズのほうを向く。


「何をするつもりだ」

「もう潮時ですからね。……僕の計画が、始まります」

 



 ―― 




「フレズ?」


 ゼクスは、目の前に居る少女の動きがあからさまに違って来たのを感じて、攻撃の手を止めた。先程までの余裕もなければ、攻撃も防御もせず、何かを抑えるように硬直している。


「――嫌」

 

 声が聞こえ、ゼクスも硬直する。彼女の声が、あまりにも痛々しく悲しみに満ちていたものであったからだ。


 同時に、感じたのはただでさえ強大であった顕現力の更なる膨らみ。

 それは「セイレム」として偽装された顕現力ではなく、「フレズ」の顕現力だ。

 彼女の本質なる顕現力が、秒ごとに膨らんでいく。


「――この姿は、だめ」


 セイレムは既に涙声であった。ゼクスも戦いをやめてしまい、また観客席の多くの人々も何事かと首を傾げている。

 その時、頭上から声がした。


「だめですよ、自制しようなんて思ったら」


 そこに居る男の名前は、ヴィレン。しかしゼクスは、それを知らない。


「乱入者? 誰だよ?」

「【ATraIoEs(アトラロイス)】、三角が一角、ヴィレンと申します。まあそれも偽名ではありますが」


 ヴィレンは、セイレムを見下ろす。彼女が、自身になにが起こっているのかわからないことを確認して、口角をつり上げる。


「私は【Revenant(レヴェナント)】所属のアガリアと申します。以後、お見知りおきを」





 彼の言葉で一度に、多くの人が動いた。

  

 どこからともなく現れる黒いローブに身を包んだ人が、数十人。

 来賓席から飛び出す二筋の顕現力。


 そして、観客席に居る訓練生達も、素早く動く。


「おっと、やはり【ATraIoEs(アトラロイス)】は動きが速い。……では、セイレムは暴れて下さいね」


 ヴィレンは、少女に手を向ける。

 途端、彼女に付けていたブレスレットが怪しげに点滅したかと思うと、顕現力は爆発し――。



 

 セイレムの居た場所には、氷の竜が存在していた。





 ――



「こんな日を狙ってくるなんてな。……俺達の居る目の前でやったのはわざとか?」


 来賓席から飛び出した二筋の顕現力――御雷氷(みかおり)冷躯(れいく)とライガ・エーテルは、ヴィレン改めアガレアと対峙していた。

 【Revenant(レヴェナント)】。最近この地域の、有力者の子息を殺し廻っている犯罪者集団である。冷躯は情報を掴んではいたものの、【ATraIoEs(アトラロイス)】側から「問題ない」と言われていたのだ。


 しかし、こういう状況になってしまった以上、動かざるをえない。


「さて、どう思われます?」


 アガレアは口角をあげっぱなしで、後ろにいたローブ姿の人達に手で合図を送る。

 指令は、より多くの被害を出すこと。


「ライザ・グンディール、教官としての使命を果たしてからだ」


 冷躯は、加勢しようとこちらに近づいてきた男にそう言い放つ。

 ライガも、別の男に同じようなことを言っていた。


「ダルタニス・タロン。君もだぞ」


 アガレアの笑みは止まらない。

 目の前に居る二人の【顕現者オーソライザー】に、全く恐れを抱いていないかのように。


「勿論、御二方の事は存じていますよ。【解放者(チェインブレイカー)】エーテルに、【至高(ゼニス)】ミカオリでしょう?」

「それなら、話は早い」


 三人の内、最初に動いたのはライガであった。娘を暴走させた男に、娘の決断を邪魔した男に言いようのない怒りを感じ、バチバチと周りに顕現力が放出され始める。


「レイク。申し訳ないが、サポートに回ってくれ」

「いいよ」


 咆哮し、動き始めたフレズの暴走態に意識の数分の1を割きながら、頷く。






「お前が何者だろうと、ここで消し飛ばす」

「出来るものなら、やってみると良いですよ」


 

 

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