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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2部 第4章 機関最強
328/374

第328話 「二色の爆炎」

「待っていたぞ、ゼクス・ミカオリ」


 自身の修練所に戻ったゼクス達一行とフレズを出迎えたのは、その場全体を焼き付くさんばかりに燃えさかっていた顕現力と、ゼヴァートであった。

 にやにや、と。しかし相手に全く嫌みを感じさせないような、太陽の様な笑顔を見せながら、じりじりとゼクスへ歩み寄る。


 ゼクスは内心、その熱気に対して逆に冷や汗をかき始めていた。

 今までとは確実に違う、顕現力の質。少なくとも自分と同等――もしくはそれ以上の顕現力を持っているだろう彼へ、彼は警戒を極める。


「では早速――」


 ゼクスは、相手の顕現力が「爆発」したのを感じ取った。

 敵意や殺意と言った濁った――自分の戦闘欲とは全く違う純粋なソレに。


 しかし、ゼクスはその純粋さから相手の拳の位置を把握することができる。


戦闘たたかうとしようか!」


 顕現特性を起動して、その爆炎の拳を受け止める。

 その一撃で手首が折れそうになる事を実感しながら、ソレを真っ正面から受け止める。

 顕現力はほぼ【拒絶】によってはじいたが、素の威力だけでこれだ。


「なるほど、――それが【拒絶リジェクト】か」


 拳を受け止められた事にゼヴァートは純粋な喜びを感じた。

 ――が、同時に大きく驚く。今まで、一度もこの拳を受け止めた人は居なかったのである。


 顕現力が、彼からはじかれるように退散していった。

 しかし、ゼクス・ミカオリの【拒絶】も同様に、使っているのは顕現力だ。


「申し訳ないが、今日は戦う気になれないんだ。今度にしてくれないかな」

「断る!」


 うんざりした様子のゼクスに対しても、彼の闘志は揺るがない。

 笑顔を浮かべ、爆炎を再び身に纏うともう片方の拳をゼクスにたたき付けようと振りかぶった。


「毎日張り合いがなくて困ってるんだ。……好敵手ライバルになれる見込みがある人間を目の前にして」


 赤い爆炎が、蒼い炎を内包し始めた。

 ゼクスはそれを彼の顕現力の内包と判断し、ゼクスもまた顕現力を高めた。


 2色の顕現力を持ったゼヴァートとは違い、ゼクスの持つ顕現力は灰色。

 6属性の顕現力がごっちゃに混ぜ合わさった、不純でありながら質の良い顕現力。


「この――心の滾りを、抑えられるか!」


 ふたりの顕現力がぶつかる。

 その熱量に、近くに居たネクサスやはやては一目散に待避したが――。


 フレズは顔を強ばらせながらも、その場から離れようとしなかった。


「滾る心はその程度か。……もう少ししっかり滾らせてから、再挑戦しておいで」

「……笑止。お前が秘めた、戦いたくないというその心よりも――!」


 炎が周りの全てを焦がし尽くす。

 フレズの氷の盾も、あっという間になくなってしまった。


 それどころか修練所全てが熱され、空気が膨張し始めている。

 訓練生たちは全員急いで窓を開け始め、また【顕現オーソライズ】で空気を冷やそうとなんとかしようとしていた。

 

 ゼクスは、彼の爆炎が――




 自分の、不可侵の【拒絶】を。

 自身の精神力を超え始めた事を感じて――。



 やっと自分に対抗できる人間ができたことを、心底嬉しく感じた。


「俺の戦闘欲の方が、強い!」




――――




「古都音、何か感じ取ったのか?」


 商談が終わり、終夜古都音と父であるすめらぎは食事の真っ最中である。

 その中で、娘がピクリと反応したのを、スメラギは見過ごさなかった。


「はい。嫌な予感がするんです。――ゼクスの身に、嫌な」


 スメラギは安らかに、笑う。


 そして立ち上がると、素早く帰りの車を用意した。


「行くと良い。急いで」



 古都音の姿が見えなくなってから、スメラギは。

 雲一つない空を見上げて、きびすを返した。

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