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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2章 授業選択期間
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第029話 「土曜日朝、冷撫の酔い」

「んー、んあ?」


 どこか近い場所で、目覚まし時計が鳴っている。

 細く目を開けると……すでに朝だった。


「…………」


 深呼吸。頭のなかに酸素が入り、眠気が冷めたのを確認してのそのそと起き上がる。

 そして寝るときは流石には流石に外している【神牙シンガ結晶】を見つめて、つけるのはまだいいかと判断した。


 昨日、あれからどうしたっけか。

 冷撫れいなと別れて、軽く学園の購買で朝の分だけ食料を購入して。

 そのまま寮に帰って寝たのか、そうだったっけ?


 やっぱり、最近寝すぎている気がする。

 何をしてきたんだろうね、俺は。過眠症かもしれないけれど、動こうと思うときには動けるから大丈夫だろう。

 

 今日の予定を確認する。

 冷撫と学園の外に出て、アマツの分も合わせて多めに食物を買わないとね。

 俺は自炊ができないから、殆どの場合はインスタントになるだろうけれど。


 米くらいは炊ける、大丈夫。

 ソレができればなんとかなるって聞いたことがある。


「あっ」


 おっ? 窓の方から声がしたぞ?

 そちらの方に目を向けると、そこには起きている俺に気づいて窓際で固まったままの、冷撫の姿があった。


「何やってるんだ」

「……朝の膝枕をしようかなっ、って思って来たんですけど」

「それは有り難い。……じゃなくてだな」


 何故、普通に開けてきたんだ。

 窓はきちんと閉めたぞ、昨日それだけは忘れなかった。


 冷撫が入ってこないように、ロックはかけた。

 なのになんで入ってこれるのか?


「って、あ」


 ……ちゃんと窓が閉まってなかった、というのが原因か。

 よく見ると、かかっている状態ではあるが溝に嵌っていない。


 俺のミスというわけか。……今日は運が良かったな冷撫よ。

 本当に運がいいのは俺なのかもしれないけれど。


「アマツはいいのか?」

「目覚めたのなら、もう心配する理由はありません。だってアマツさま、じゃなくてアマツくんですもの」


 ……目覚めない間は、涙をぽろぽろ流して泣いてたっていうのに。

 

 あと、たまに冷撫はアマツの呼び方をミスる。

 公的な場所ではアマツの許嫁という立場で居る時、彼女はアマツを「様」で呼ばないと周りの人々に睨まれるからな……。


 冷撫も大変だな、公私で使い分ける必要があるなんてさ。


「いや、今日はいいや。早く準備しようかな」

「えー? 膝枕しますよします。します! させてください! させろ!」


 最後は冷撫らしからぬ完全な命令だった。

 何? 膝枕に命でもかけてるの?


 ……その顔は本気で命をかけているような目だった。

 俺は仕方なく……仕方なく? 彼女の準備を待つことにする。


「はい、来なさい」


 びしっ、と厳格な態度で正座した状態の冷撫は、自分の太ももを叩いた。

 そこに頭をおけということだろう。ええと、右耳を上にした方がいいか。


 見れば見るほど、柔らかそうな白い肌だ。

 美しい。頭をのせるのではなく触ってみたい。


「耳かき棒がいいですか? 梵天ぼんてんがいいですか? それとも、綿棒?」

「ようしちょっと待て」


 俺は嫌な予感がして彼女から逃れる。

 冷撫の顔を見つめてみれば、心なしか少し頬が染まっている。


 これは何か。少なくとも恥ずかしさに拠るものではないだろう。


「酔ってる?」

「酔ってないです」


 酔ってないのは本当なのか、質問を重ねてみる。


「さっきなにか飲んだか?」

「初めて『こーら』というものを飲んでみました」

「酔ってんじゃねえか!」


 多分カフェインで酔ってるんだろうな、と予想する。

 カフェインで酔うっていう人は実際いるし、今目の前にも居た。


 冷撫はカフェインだめなのか? でも、お茶は普通に飲めるんだよな。

 なにが問題なんだろう……。コーラはこれから飲ませてはいけないと確信する。


 そもそも、【顕現者オーソライザー】向けのコーラがこの学園には売られている可能性がある。

 よく知らないけれど、一般人よりも成分が強そうだ。


「めまいとか、する?」

「ないです」


 ないです、って言いながら吐きそうな顔をする冷撫。

 頼むからここで吐かないでくれ。


 キッチンに行け、今すぐ。


 今すぐにだ!



---



「もう、カフェイン取るのはできるだけやめておきます……」


 結果、コーラと冷撫が説明している飲料を確認したらコーラじゃなかった。

 所謂エナジードリンク、って奴。確かにコーラ風味ではあったけれど、カフェインの量が半端じゃない。


 俺は即時、それを没収した。


「なんでこんなに買った、言え」

「買ったんじゃないです」


 吐気がするけど吐けない、そんな生き地獄の最中である冷撫は本当に苦しそうな顔をしている。


「それ、お父様から頂いたのです」

「……納得したよ」


 俺は、冷撫の父親で俺の父さんと一緒に日本の第一線で活躍している男をイメージする。

 確かに、あの人だったら何時も飲んでいそうだ。だけれど。


 コーラを飲んだこともない娘に、カフェイン増々のエナジードリンクを箱で、24本セットで与えるのはどうだろうか。


「吐き気が収まるまで出かけるのはなしだ」

「……でも、お昼に約束しちゃったんですよ」


 どうも困ったような顔で、そう呟くのは他でもない冷撫である。

 約束? 2人で出かけるのではないのか?


「誰とさ」

蜂統はちすべアガミくん、って知ってますか?」


 ……ああー、昨日会った気がする。

 アズサさんに「これ」扱いされてた男だ。

次回更新予定はまた今日中。

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