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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2章 授業選択期間
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第026話 「アマツの復活と結晶の異変」

 なんとか蒼穹城そらしろを撒いてアマツの病室まで向かうと、彼はすでに目覚めていた。

 そばには嬉し涙を浮かべている冷撫の姿がある。


「お早い復活で」


 茶化すようにそういうと、アマツはおどけたように胸を張ってみせる。

 極々自然な笑顔が浮かべられているあたり、完治とは言わないが快復に向かっているということか。


鈴音すずねから聞いたよ。俺を助けてくれてありがとうな」


 アマツは、優しい動きで冷撫の髪の毛をすきながら礼を言った。

 その動作を行われながら、彼女はという蕩けたような笑顔を浮かべていた。


 ……んあー、なんていうか凄い顔をしている。

 大好きなご主人に撫でられている猫のような感じ。


「助けたいから助けただけだよ。俺がああなったら、アマツだって助けたろ?」

「そりゃそうだけどさ。俺ほら、顕現力かなり強いから……」


 確かに、試験場は半壊したからな。

 暴走しやすいのかもしれない。特にあの時、どんな感情が引き金になったのか俺にはわからないけれど。


 そもそもあの能力はなんだろう? 俺の【re】式は短いながらも詠唱が必要で、でもアマツのソレに詠唱がなされたという記憶はない。

 アマツがキレて両手から金色の焔を噴き出した。そこから暴走した。


 俺は、アレが【八顕】の人々が真に属性を開花させた結果だと知っている。

 だけれど、その正式名称が何かしらあるはずなのだ。俺はそれを知らない。


 アマツはそれを語ろうとしないように思えた。

 だから俺も特に追求はしないでおこう。


「いつ頃退院できるって?」

「とりあえず、週末はここで過ごすつもり。何かあってもいけないし、月曜日から授業……はなくなったって?」


 授業選択機関は5月初めまでだ。

 それまでに、3週間自由に授業を見学できる。


 本当は今日ガイダンスがあって、来週から早速見学と行く予定だったのだが。

 アマツの件でできなくなり、代わりに月曜日に入学式の行われてた体育館ですることに。


「一応土曜日も授業はあるけれど、ガイダンスは来週だと」

「ほうー。まあ、この土日は外出許可書が必要ないんだっけ」


 新入生だけだけれどもな。

 概要的には、寮生活にて買いだめしたり、家具をある程度揃えたりということらしいけれど。


「うん。アマツの分も幾つか買っておくよ」

「助かる。……ところで」


 アマツの顔が、妙に真面目なものへ変わった。

 俺をじっと見つめ、何かを確信したような顔をしている。


「ちょっと、鈴音。席を外してくれないか?」


 冷撫の髪の毛をすく手を止め、そういう。

 彼女も彼女で何かを察したようで、不満げながらも頷き部屋を出て行く。





「ゼクス。使ったろ、俺の回復のために」

「なんのこと?」


 さて、何を言っているのやら俺にはわからないな。

 俺は何も特別なことはしていないぞ。うん、何もしていない。


 首をふると、嘘つけと一蹴される。


「病室で使っただろ、鈴音にバレないように【re】式」

「いやーなんのことか分からないなー」


 医者に昨日は来週まで目覚めないと断定されていたんだぞ、とさ。


 そうだな、確かに俺はやったな。

 ……認めるしかないか、ぐぬぬ。


「体に負担かけたんじゃないか?」


 アマツは、どうも自分のことを棚にあげて俺の心配をしてくれているらしい。

 正直問題はない。


 ただ、冷撫にバレないようにして能力を使うのが厳しかった。

 彼女本当に離れようとしないんだもの。


「そんなことよりも、さっき蒼穹城に会ったよ」

「概要は鈴音から聞いた。助けたんだって?」


 俺は正直助けたのを後悔していると漏らす。

 さっきのアレをみたら、本当にそう思う。


 蒼穹城にそうしたところで、後で色々御礼返ししないといけないしな。

 それが蒼穹城進の墓場……は無理かな。


 無理か。墓場は無理だが、入院送りは可能だろうな。

 昨日のアレ程度で善機寺を入院させることができたんだ、簡単だろう。


「寝てたんだが蒼穹城って強いのか?」

「【顕現オーソライズ】ではどっこいどっこいだろうぜ。だからあっちの力を使おうとしたんだし」


 アマツとどっこいどっこいか。なら少し気をつけたほうが良いかもしれないな。

 憎い相手と戦う時、一番力を発揮できるだろうし。


 神牙家と蒼穹城家って決定的に仲が悪いからな……。


「あの、そろそろいいですか?」


 そんなに時間がかかっただろうか。

 外の方からノックがして、冷撫が隙間からこちらを見つめている。


 さながらホラーだ。怖い。


「ゼクスくんはこれから無理しないでくださいね」

「それは、約束しかねる」


 俺は二人の為になら無理をすると約束してしまった。

 助けるときには多少無理をしなければならない。


 だから、冷撫の願いは聞けない。


 ……と。

 アマツが妙に真面目な顔をして、俺を見つめている。


 正しくは俺の首を見つめていた。








「【結晶】、ヒビ入ってんぞ」

次回更新予定は今日中。

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