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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第2部 第2章 同盟
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第259話 「改心の否定」

「こんにちは。お話、いいかな?」


 ゼクスたちが集まってから数分後、話しかけてきたのは蒼穹城そらしろしんであった。

 その姿を認めるや否や、立ち上がりかけた颯をゼクスは手で制しながら、空いている席――自分の向かい側を指さし、そこに座るように指示する。次に栄都えいとアインの方を見つめ、同じように椅子を差し出して座るようにすすめる。


「颯、俺が承諾したんだから、止まれ」


 颯以外の人々も、状況がよくわかっていない昴と楓以外は厳し目な表情で座っている。

 特に颯に次いで表情が険しいのは、雪璃と斬灯であった。どちらかと言えば、ゼクスのことを理解できている斬灯のほうが幾分か敵意をむき出しにしていたのかもしれない。


 しかし、進はそんなアウェーな雰囲気に対しても一切臆さず、腰を落としてこちらを向く。


「刀眞遼とは決別した」

「……へー」


 進の切り出した話に、ゼクスは正直どうでもいいといったように肩をすくめて見せる。

 ゼクスは、もともと彼らを一つの団体として見ているわけではないからだ。蒼穹城進と刀眞遼はそれぞれの復讐対象であり、そこに何かつながりがあるかと問われればゼクスはないと答えるだろう。


 しかし、ゼクスは少々栄都アインのほうへと興味を向けた。

 栄都家は刀眞家の護衛を任されているはずで、彼女が蒼穹城進の隣りにいる事自体が既に可怪しいことである。

 

「そこで提案があるんだけれど」

「話だけは聞こう」


 進の言葉に返したのは、敵意をむき出しにしたままの颯であった。

 ゼクスには何があったのか良く分かっていないようだが、颯は思った以上に進へヘイトを溜め込んでいるらしい。

 それは進も同じで、表に出さないものの自分の味方をせずゼクス側につき、みるみるうちに本気を出し始めた颯に対して良い思いは抱いていない。


「颯、落ち着け」

「……わかった」


 ゼクスに静止され、しぶしぶと言った風に颯は記を落ち着かせた。颯を雪璃に任せ、ゼクスは次に進が何をしたいのか質問する。

 自分たちと同盟を組みたいのか、それともかかわらぬべきなのか。

 

 この辺でやっと昴は状況を察し、緊迫感に押しつぶされそうになりながら隣にいる少女――楓の方を向き、彼女が全く動じず買ってきたハンバーガーを頬張っているのを見てあんぐりと口を開けた。


「僕達としては、できるだけゼクス君たちとはもう敵対したくないかな。その心は折れてしまったしね」

「それなら、今までどおりに接触を図ってくる必要はなかったんじゃ? 俺としてもソッチのほうが都合がいいし」


 今のところはそちらが接触してこないかぎり、こちらも何もしてこなかっただろうとゼクスは主張し、要件をさっさ言えと彼に迫った。

 

 対して進は何度か意見を言おうとしては口をつぐみ、また口を開く。

 自分がなぜ今回、ゼクスにアポイントをとってまで話そうと思ったのか、未だはっきりしていないのである。


 数分後、やっと話し始めた彼の事柄はこうであった。


「事情が、変わったんだよ。遼は完全に暴走を始めたんだ、ツグ」

「……その呼び方についてはもう何度も忠告した」


 ゼクスはそう、吐き捨てるように言葉を吐き出す。

 そして両手を広げて、可視化された顕現――金色のいかづちを行き来させる。


「俺は既に『刀眞』でも『胤龍』でもないって言った。……不愉快だよ、俺は証拠として【神座:雷】に与えられた権能もあるというのに」


 彼は八龍ゼクスだったころに、刀眞遼を含む刀眞家を「全員」【神座】から【拒絶】させている。

 ある意味で言えば【神座】が直接跡取りとしてゼクスを選ばず、八龍家と名乗っていた御氷みこり家を選んだということが証拠ともなり得るだろう。


 ゼクスの言葉と呼応するように、雷はもともとの金色から氷をも連想させる青白いものへと変化する。

 進には、彼の後ろに妙齢の美女が強くこちらに敵意を向けているようにも見えた。それが【神座】に宿る人格であると本能的に感じ取った進は、思わず椅子ごと後ろに下がり、そのままつんのめって後ろに倒れこむ。


 慌てて起き上がった進に対して、心配そうに手を差し伸べるアインに、先程から落ち着いていられない颯と静観していたアガミがふんと鼻を鳴らす。


 しかし、次に声を発したのはまたもやゼクスであった。


「そもそも、何故刀眞遼と決別した?」

「……え?」


 彼の言葉に、進は理解できず聞き返す。進としては、栄都アインを邪険に扱う彼を許せなくなり衝動的に、というものが大きい。自分のことを棚に上げて、と言ってしまえばそれまでであるが改心したいからこそ、一人の女性を護りたくなってしまったのだ。

 その結果があの決別であるが、進としてはすべきことをした、という程度の認識である。


 しかし、ゼクスはそれが気に入らないようだ。


「何も改心してないな、蒼穹城。……俺が何故、お前に復讐しようと思ったか……まだ分かっていないようで何よりだ」


 復讐としてはもう終わったと考えていたが……と、ゼクスは息を吐くと気分を害したように立ち上がり何処かへ行ってしまう。

 

 古都音と颯が真っ先に反応したが、この状況下動くことも出来ずお互いに目を合わせるばかりで。

 

「まあ、ゼクスが言いたいことは見捨てるなってことなんじゃないのかね?」


 緊迫した空気の中で、アガミが言い放った言葉は昔も今も変わらない――進がやってきたことであった。

 

「栄都アイン、お前もそうだよ。……俺だって最初は自分の意志で古都音さんの護衛になったわけでもないし、将来的にはゼクスの護衛も兼ねるだろうが……。俺は【あの】事件が起こっても、やめようとは思わないぜ」

「俺は前に言ったはずだ。『自分の本当に仕えたい人に仕えろ、その人を支えろ。刀眞家自体はもう終わる。次代からは、新しい時代が始まるんだから』と」


 その結果がこれか! と咆哮えた颯のあたりには、トラン=ジェンタ・ザスターと対面した時のように顕現力の颶風が吹き荒れていた。

 途端、食堂が静かなパニックへと陥り、数十秒後には【八顕】達以外の生徒・職員がともにいなくなる。


「ゼクスが怒る理由がよくわかった」


 颯とアガミも席を立ち、やっと意味がわかったのかピンとした古都音や斬灯がそれに続く。

 最後に意味がわからなかった少年:昴と兄である颯の言葉に心酔しきった様子の楓が出ていき、最終的に蒼穹城進と栄都アインのみが食堂に取り残された。


 唖然としたまま、進はアインの方を向く。アインはそんな彼に視線を合わせようしない。







「……僕、何か間違えたかな」


 【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】に問いかけても、刀は返事をせずため息を吐くだけであった。


なろうが重い。……更新できないじゃないか!(憤慨)


次回更新は月曜日です。


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