第241話 「白い空間にて」
「……申請した人数は、こちらが総数5人。あちらが200人だ。蒼穹城進は参加していない」
颯の部屋に集まった俺たちは、彼から情報を聞いていた。
正直、特に気にする人数ではない。注意するのは刀眞遼と晦蓮屋だけだ、と俺は予想している。新7年生も参加するが、正直それらはネクサス達にまかせてもいいだろう。
「八顕学園のレベルってどんなものなのかな?」
そう、俺達に質問してきたのはミュラクさんであった。
俺はその言葉に対して言葉を詰まらせる。八顕学園のレベルというのは、正直言えばそこまで高くないようにも思えた。
学園では飽くまでも現状,実技でも座学でも基本的なことしか学ばない。【顕現】の使い方。通常の生活を【顕現者】が送っていく中で必要なものは、習得することは出来るだろう。
ただ、俺はそれ以上のことをしらない。
更に上級生になれば何関わるのかもしれないが、それでもおれにはわからないことのほうが多い。
そもそも、この学園に来たのは復讐のためであった。
「説明できないのかな?」
「いや、【ATraIoEs】がどういうものなのかわからない以上、どう説明するべきなのか」
「そうだね、【ATraIoEs】は学びたいことを、学びたいだけ学べる場所」
【顕煌遺物】を扱いたければ、信念の強さを鍛える方法を教えてくれる。
【顕装】で高みを目指したければ、自分に合う自分だけの【顕装】を作ってくれる。
【顕現】を極めたければ、それをする手助けは惜しまず。
入学は難しいが筆記試験のみであるため【顕現者】と認められていない人間であったとしても、それを【顕現者】なみの戦闘力まで高めさせるほどの教育を施してくれる。
「そういうところ」
「……こちらのほうが数段階下だと思う」
「そう。……なら、私達で問題はないね」
ミュラクさんははぁ、と息をつくと俺のベッドに寝っ転がる。
……無遠慮な女性だ、と印象を抱くが。今日もここで寝ることはないから特に気にしないでおこう。
「ミュラク、おやめ」
「……はーい」
こちらの表情の変化を読み取ったのか、ネクサスがミュラクさんに注意をし、それに従う。
ネクサスはというと、こちらにウインクをして「では俺達はこれで。幸運を」と部屋を出て行った。
「……なんだか、キャラの濃い方々ですね」
「俺達が同じようなことを言っても仕方がないさ。それよりも明日だ」
また半年、俺は鍛錬を重ねてきた。
刀眞遼への復讐は終わっていなかったが、今回で終わらせるとしよう。
そうしたら、俺は生まれ変わる。
復讐ではなく、何か別の……。別の目的を持って、この学園に通う。
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『なんだ、つまらないの』
白い空間で、謎の少年は俺に話しかけた。
この感覚も、約半年ぶりか、久しぶりであるのは確かであるが、はて。
『つまらないよ、君。もっと復讐心を滾らせてこの世界を【拒絶】してくれなきゃ、カウントダウンが全く進まないじゃないか』
「カウントダウンが最後まで行けば、どうなる?」
『君は【顕現者】を超えた存在になる。ただそれだけれだけれど?』
含みのある笑みを見せて、どうも嘘くさいことを言った少年に俺は首を振った。
「俺の力は、俺自身で決めて使うよ」
『復讐心は何処にいったのかな、もしかして東雲契を殺した時になくした?』
「……その魂はお前の近くにあるんだろ」
『よく分かったねえ』
いやみったらしい笑みを浮かべながら、少年は消える。
……どういうことなんだろうな。
俺はこの、ただただ白い空間をじっと見つめた。
この空間って結局何なんだ。古都音たちに聞いても、そんなことはないと返答されたことはある。
鳳鴻も同じ復讐を心に秘めた人間だっただろうし、彼に聞いてみるか。……鳳鴻は婚約者である愛詩聖樹さんが1年遅れで入学してくることもあって、なんか上機嫌であった。
明日、入学式の後に決闘が行われる。新入生もいっぱい居ることだろうし、観客は多くなること請け合い。
殆どの生徒は、俺達が見世物になることを望んでいるのだろうが……。
絶対にそうはならないだろうな。
明日は勝ち、俺達のちからを証明する。
こちらの陣営を固めよう。
次回更新は明日です




