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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第1部 第1章 入学
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第022話 「金曜日、学園長室にて」

 長い2日間だった、と本気で考えたことは今までなかっただろう。

 そのくらい、入学式と顔合わせの日は長かった。

 何が長かったって、密度が違う。


 今までは学校が終わったら、家に帰って座学して。

 父さんに鍛錬を教わって、やってたらすぐに時間が過ぎたのに。


 この学園に入ってからは、何もかも自由だものな。

 学園に遅れなければ、いつの時間に寝ても構わない。


 代わりに、食物は自分たちで調達しなければならないけれど……。


「やっべ」


 というわけで、今俺は走っている。

 理由は簡単、学園長室に昨日の件で呼び出しを食らっているからだ。


 どうも、俺が顕現式【re】を使ったことについて言いたいことがあるらしくて。

 ちなみに、八龍家全員呼ばれている。


 ……遅刻したら洒落にならないどころの話ではない。


「ここか」


 俺がズササッと滑りながらたどり着いた先の看板には、【学園長室】としっかりと刻まれていた。

 正しくはここも学園ではないけれど。学園っぽさはきちんと徹底しているのが伺える。


 重苦しい雰囲気の戸を、ドアノッカーを使って4回ノックする。

 獅子が輪っかを噛んでいる感じのものだ。見ているだけで、重苦しい雰囲気の威圧感を感じる。


「どうぞ」


 待っているとすぐ声がしたため、中に入る。

 失礼します、と恐る恐る話しながら中に入ると、そこにいたのは……。


 両親と、見たことのない白ひげの男。

 多分、この人がここの代表なんだろう。


「3日振りだな、ゼクス」


 父さん、頼むからそんなことは言わないでくれ。

 俺は自分の頬が赤くなるのを自覚した。申し訳ないという気持ちで自分が情けなくなる。


 学園長は俺を席へ誘導し、自分も座り込んで俺を見る。

 壮年というよりは初老、だろうか。俺が考えた以上に若い。

 その目を見ていたら、心を見透かされるような気がして。


 俺は無意識のうちに目をそらしていた。


「さて、何の話からしますか」

「そうですね、まずは……昨日。私達が認知していないオリジナルの『顕現式』を発動させたことについて、聞きましょうか」


 学園長が俺に対して何を聞きたいのかは分かった。

 この人だって、ここの学園長をするくらいの人間だ。日本顕現者協会のお偉いさんなんだろう。


「それについて、話せることはあまりありません」


 俺が返答に困っていると、父さんが代わりに返答してくれた。

 たしかに、話せることはないなと今気づく。


 自分で構築したし、他の人がどうしようと発動出来ないんだから説明のしようがない。

 既存式の改変とか、一部引用とかなら問題はあったかもしれない。でも、これは違う。


 神牙かみきば家の当主たちも、何故それを使えるのか頭をひねっていたくらいなんだから。


「これは私達の息子、ゼクスの努力と産物です。他の人には……私を含め扱えないし、彼の類まれなる才能がなければならない」

「成績を見たが、試作品の【神牙シンガ結晶】をつけてやっと正確度が基準ですけれど?」


 父さんの怒りのボルテージが、静かに上昇するのを感じた。

 俺はというと「ああ、この人も詳細を見ない人だ」と呆けている。


 まあ、そうだろうねーとしか考えない。


「詠唱から能力発動までの時間が極端に短いことを考えれば、詠唱途中で発現が開始するのがわかると思うが」

「……少し確認させてください」


 【三劔みつるぎ】の八龍やりゅう冷躯れいくがついに感情を表に出したことへ対し、慌てたのか学園長は急いで俺の成績を確認する。

 そしてすぐに、その目が見開かれるのを感じた。


 「詠唱開始から発動までの時間」の、【顕現者オーソライザー】平均値を1とすれば、俺の発動は0.01だと記録上には残っている。

 勿論これなら詠唱途中もしくは、開始と同時に【顕現】が始まるということが相手にも分かるはずだ。


 成績も、わざわざ個別の理由を書かないからね。


「これは失礼いたしました」


 素直に非を認めた学園長に、父さんは矛を収め……なかった。


「さらに言えばこの子は6属性扱え、更に4属性は特に制限なく扱える」


 ああーバラすなバラすな。

 ここに他の人いなくてよかった。


 学園長に戦慄が走ったような顔をしていた。

 驚愕は勿論のこと、恐怖も混じっているような気がする。


 それもそのはず。


「馬鹿な。この歳で2属性扱えるのが全体の1%ですよ!?」

「世界的に見ても、6属性使用可能なのは1億人に1人の才能だろうな」


 あくまでも「統計」によると、だが……。

 【顕現者】の5割は、どう頑張っても扱える属性数は3まで。

 さらに4割は4までで、ここから才能の壁になる。


 本当なんなんだろうな、俺は。

 正確度がゴミなだけで、少し父さんの訓練を受けただけで属性は次々と開花するわ。

 自分で式つくるわで。



 今なら言えるよ、どこが「無能」なんだかと。

 


 ゼクスを誇りに思っていると、父さん。

 はあ、俺のために怒ってくれるなんて本当。


 思ったよりも。俺は幸せものらしい。


「6属性……ゼクス……なるほどね」

「才能があるのは知っていたから。あとはその開花を促すだけで済んだ」


 あとは、後始末の云々を俺が適当に聞き流すだけで済んだけど……。

 今日の呼び出し、俺は必要だったのか?

次回更新は明日中。二回予定。

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