第213話 「愚痴と悲鳴」
2日も更新できず申し訳ありませんでした。
「【顕現者】としての自立を目指すための準備……か。そうとはいっても体のいい八顕学園の名声上げにしか感じられないのは、俺の心が汚れているからだろうか」
「……そうとは言っても、俺も同じように感じられたのだから何も間違ってはいないと思うのだが……」
ガイダンスが終わったあと、俺達は最寄りの食堂の一角を陣取りながら集まっていた。
もらった資料をぱらぱらとめくりながら、愚痴を言い合う。
俺はどうも腑に落ちなかった。
なんだか、八顕学園が便利屋か何かとかしているような気がして不快感すら覚える。
けれど、……【八顕】とはいえども、成績のためである。さっさとなんとかしないと……な。
「1グループは最大10人。1年毎に更新されるから上級生下級生関係なく組ことが可能。今回は試験的に11月からだが、来年度は5月決定……か」
今回はお試し期間というわけだ。教師陣は、不満など足りない場所があれば補完していくと説明してたけれど……どうなんだろうな。
俺は少々悩みつつ、周りの斬灯や古都音を見やる。
斬灯はアズサさんと何やら目を輝かせて話をしていたし、古都音は何も言わずこちらの行動を待っているような感じだったが。
最初に口を開いたのは、鳳鴻だった。
「どうする? 【八顕】で固まったほうが良いかな?」
「自分の思い思いにやっても良いんじゃないか?」
「といってもねえ。……【八顕】に近寄る人なんてめったにいないよ?」
切り返され、俺はそういえば俺は【八顕】と【三劔】以外に知り合いはどれくらいいるか、と考えてみた。
冷撫は神牙家繋がりであるし、古都音も【三貴神】繋がりで知り合っている。
他の人は……そう考えて見れば、いない。
確かに、思い思いにやってもいいとは言ったが。そもそも選ぶだけの人間がいない。
「そうですね、出来れば近づきたくないですね」
「……古都音さん、ちょっと直接的に言い過ぎ」
古都音は言うべき時には一切躊躇せずに言う女性である。
本心を口に出した古都音に対し、鳳鴻が「うー」と唸った。
「普通に考えてくださいよ。気に入られなかったらほとんどどのような家庭であっても潰されるのですよ?」
「……まあ、そうなんだけれどもね。でもこの学園でその実権を持っているのは僕だけだろうし、僕もそんなことしないよ。……聖樹に実害が起こらないかぎりは」
「そういうところが一番怖いんだよ……」
愛詩聖樹のためなら言葉通り「なんでもする」覚悟の鳳鴻に対し、俺は戦慄に近いものを感じ取る。
確かに恐ろしいが、それが彼のあるべき形なのだとするのならば、しかたのないことなのかもしれないと考えてしまう。
俺はその気持ちがわからないから、投げるようにしてパンフレットを机においた。ああ、これはただの八つ当たりである。
「そうかな? ゼクス君、君だって普通に考えてご覧? 古都音さんに何かあったら、ゼクスはどうする?」
「……まだ良くわからないな、俺は」
古都音は大切な人だと思う。けれど、例えば古都音が危険な目にあった時の想像ができないのだ。
俺は頭を悩ませた結果、結論に至る。簡単にいえば「その場になってみないとわからない」ということである。
「ゼクス君なら、鳳鴻くん以上の大惨事を引き起こしそうですけれどもね」
「復讐とそうかわらなんだろ? なら何の躊躇もなく出来るよ」
よく考えてみた。復讐とかんがえるのなら、確かに古都音へ危害を与えられたのなら仕返しをしないわけないは行かないだろう。
復讐……か、今回の復讐が完遂してから新しい物がこれば良いのだけれど。人生何が起こるかわからないし、計画通りに事が進むとは思えないし。
そのとき、食堂の外のほうで女性の悲鳴が上がった。
開けっ放しになっていた食堂に悲鳴が届き、パニックになる。
俺たちは顔を見合わせ、どうしようかと考える間もなくアマツが食堂から飛び出した。
慌ててあとに続く。
目の前に広がったのは、直したらしい義手を完全にねじ切られた蒼穹城進と。
巨大な大鎌を構えて微笑を浮かべた、復讐対象である東雲契の姿であった。
(次回更新は「今日」になると思います。)
2016.06.05になりました。
 




