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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第8章 復讐鬼
210/374

第210話 「未来の映像」

2016.05.30 2話め

『あと1人だね、ゼクス。君の今までが終わり、これからが始まるまであとたった1人だ』

『……誰なんだ?』


 夢のなかで、またあの声が聞こえる。

 どこか懐かしく、そしてどこか聞き覚えのある声、だ。


 俺は我慢できなくなって名前を問うたが、彼は笑って流すだけ。


『まだ名前は明かせないね。だって』


 と、俺を指で指差した――ような気がした。

 俺には彼が見えない。認識できるのは声と、その気配。


 人でもなければ【顕煌遺物】でもないと断言できる、しかし、それが何かははっきりと何かわからない。

 俺は【顕煌遺物】の人格であるオニマルと関わったこともあるし、【神座】の神人格である雷君や國綱さんたちとも関わったことがある。


 しかし、目の前の「何者か」は違う。

 何かさっぱりわからない。


『君はまだ、その【領域】に片足を突っ込む前じゃないか』


 そして、楽しそうな声で笑うと、少しだけこちらに姿を見せる。

 ……どこかで見たような顔だが……。そんなもの見せられても、正直微妙。


 あったことはないはずなのに、記憶の中にはあるんだから不思議なものだ。ええーと。誰だコイツ。


 困惑している俺には構わず、彼は両手に一つずつ、白と赤の球を作り出す。水晶球のような感じで、中に何かの映像が映っている。


『今から君に2つの未来を見せよう。1つは、僕が考えうる君の幸せ。1つは、最悪の展開』

「いや、いらない」

『はて?』


 俺は即答でそれを拒否すると、彼は驚いたように首を傾げた。


「その未来は、俺自身が自分で見るよ」

『はは、面白い人間だねぇ。僕が今までこうやってきた人間は、みんな自分のありうる未来を見、必ず成功する方を選んだというのに。本当に君はへんな人間だね』

「わかってる未来なんて面白くねえよ」


 今までこうやってきた人間、か。つまり、俺は少なくともこの眼の前の存在に「選ばれている」ということになる。

 彼が俺がまだその領域に踏み込んでいないということは、俺がまだ途上ということになるのだろう。


 カウントダウンがある。きっと、それがキーワードなのだと俺は考えた。

 

「カウントダウンは、あと何回だ?」

「……僕は君に教えるほど分かりやすいわけじゃないよ。でもね……確実に、近づいているよね」


 ああ、ヒントはくれるのか。


 俺はその言葉に満足し、夢の世界から現実世界に戻ることにした。

 目の前が白くなっていき……。






「……おはようございます、ゼクス君」


 少女の声が聞こえ、俺は目を開けた。

 最近ではもう日課というか、習慣になりつつある古都音の部屋での就寝は、今日も成功のようで。とても今気分が良い。


「おはよう」


 そもそも、自分と相思相愛の少女がずっとそばに居てくれるという事自体、俺が入学するまで考えられなかったことだ。

 冷撫れいなは確かに俺のことを想ってくれていたようだが、アマツの婚約者であることがすでに俺も知っていたし、そもそも他の男……それも親友の許嫁を彼女にしようとは思わないんだが……。


 まあ、一番最初に出会った時から古都音のことは気になっていたし、彼女もそんな感じだったから構わないのさっ。

 ……朝だからテンションが可笑しいのかもしれない。


「よく眠れました?」

「眠れたよ。……いい朝だ」


 俺は本心を口にし、もう一度目を閉じる。

 が、すぐに揺り起こされた。流石に二度寝は許してくれないか。


 今日は授業のある日だ。……この学園では、かなり休講が多い。

 学園に教授として在籍している人々が、【顕現者オーソライザー】としてもかなりの権威を誇っていたり、神牙かみきばミソラさんだって、特別授業のときに学園へやってきたり、父さんもくるからな、戦闘訓練に……。


 【顕現者オーソライザー】ってのは、別格の存在がとても分かりやすい。

 いつもいる教師の中でも、数人明らかに周りの人と違う、という人間がいる。


 でも、今日の授業は退屈しないだろう。かなり予定が遅れたけれど、数人でグループを組んで活動する、新しい制度の説明だし。

 誰と組むことになるんかね。【八顕】で組んだらそれはそれで頼もしいが。


「……古都音、どう思う?」

「何がです?」

「未来。どうなると思う?」


 とりあえず、俺は授業のことを棚に上げて古都音に話を聞いた。

 未来。全くもって曖昧で、何もかも決まっていないそんな未来。


 古都音なら、何を言ってくれるだろうか。幸せになると言ってくれるだろうか。


「何があろうとも、私は私のしたいことをするだけですよ」

「……強いな、古都音は。ほんとうに強い」


 しかし、彼女の言葉は俺の考えていたものとは違った。

 何があろうとも、か。


 俺なんかより、精神力はやっぱり強いんだろうな。



次回更新は明日です。

明日は2話以上更新を目標にするつもり。

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