第196話 「小話:一方ブリンク学園下」
1時間半前に、次回更新は明日ですといったな? あれは嘘だ。
2016.05.18 2話め
――結果的に言ってしまえば……。俺の思った通り、スカー・ラプターの攻撃は一つも通らなかった。
俺の楯型【顕現】は最強だ。って言ってしまったら慢心に繋がる。だからこそ、もう少しなんとかしたいのだが。【不可侵】は止めることが出来ないけれど、それを出させるまで本気でされてたってことだ。
やっぱり、もう少しなんとかしたかったけれど。
「防御が堅いね。こりゃ、確かに攻撃手段がなくとも、【八顕学園】に入れただけはある。……誇れる部分とか、分かりやすく説明できるかな?」
「御雷氷冷躯の攻撃をほぼシャットアウト出来た」
「……ワァオ」
感嘆の声を上げて、スカー・ラプターはにっこりと笑うと「ようこそ」と一言。
そして、次はミオ・ミスティスさんの方に向き直る。
「【ATraIoEs】の【剣聖】さんですかね?」
「敬語は結構ですよ」
敬語は結構、なんて言っている人が敬語を使ってるんだからどうかなと思うけれどもな。
とにかく、少女は顕現式を唱え始める。
「煌めけ細【氷】、吹き抜けろ小さな【刃】達、顕現せよ――」
彼女の周りに吹雪が舞い起こり始めた。それらはそれぞれ輝き、どこかダイヤモンドダストのごとく煌めき、こちらに美しい印象を持たせる。
ちなみに、日本語だ。たしかミスティスさんは混血児だったはずだし、そういうことなんだろう。
ネクサス様が日本に興味を持っているのは、彼女の影響も強いはず。
「顕現せよ。【トリシューナク】」
俺は、目の前に現れた2振りの小太刀……短剣を見て、これは【顕現】によるものではないことに気づいた。
おそらく。スカー・ラプターも同じような表情をしているのだろう。
目の前のそれは、【顕現】よりもかなり強力なものだった。
【顕煌遺物】だった。うわぁこんな場所になんてもの顕現するんだと考えながら咄嗟に俺は【顕現属法】で風の楯を咄嗟に作り、自分の身を守る。
それは、結果的に間違っていなかった。次の瞬間、恐ろしいほどの衝撃が【顕現】にぶつかってきて、俺は間一髪を逃れることが出来たが……。
その1撃で、スカー・ラプターはダウンしていた。
……俺の楯に欠けた場所は見当たらない。やっぱり、大丈夫か。
「さすがですね、アガミ君は。【顕煌遺物】の一撃も効かないなんて」
「槍……じゃないよな? それ小太刀だよな?」
「小太刀ですが、2つを合わせることによって槍にもなります。これは、ネクサス君の【顕装】のヒントにもなっていますね」
ちなみに、先程は早く終わらせたくて投げちゃいました、と舌を出して弁解するミスティスさんに、俺は何も返すことが出来ない。
真上に打ち出したというが、その余波でアレだ。
俺は、地面を転がって動かないスカー・ラプターを見つめて心底哀れに感じた。
「【剣聖】なんて言われるから、完全にミスリードを食らったのか」
「そうですね。剣聖だからといって、剣しか使えないとは限りません」
そういった少女は、自分に絶対の自信を持っているようにも見えた。
彼女も、俺と同じだ。この力を、誰かのために使う人だ。
だからこそ、その【顕煌遺物】も応えるのだろう。
次回から次の章です。
ちなみに、ミオ・ミスティスはネクサスよりも1歳年上。
次こそ明日更新。
 




