第195話 「小話:一方ブリンク学園上」
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「ほー、ここが……」
ブリンク学園。と、俺はヘリコプターから下りながら、学園を見渡した。
どこかの映画で見た魔法学校のようなイメージを起こさせる雰囲気をしていると思う。なんていうか、荘厳でこちらを威圧するような雰囲気を醸し出している。
これから半年間、俺はこの学園で過ごすことになるのだが……。
なんというか、サイバーな感覚の八顕学園と真逆の感覚がして、新鮮だ。
そんなことを考えながら、俺は目の前に立っている少女に目を向ける。
「いらっしゃい、アガミ君」
「あれ? 確か……」
容姿は、普通に美少女であった。そして、俺はこの人を知っている。
月夜に輝くような銀髪。と言っても今は昼間だけれど。
あと碧眼。こちらが見てて吸い込まれそうなほどのものだ。宝石のように輝いており、こちらを見るその姿は、女神がこちらへ微笑んでいるような錯覚すら感じさせるものになっている。
ええと、この人は……ネクサス・ファルクシオン様の……。
「はい、ミオ・ミスティスです。お久しぶりです」
「ネクサス様は? 元気にしてる?」
「はい、また今度日本に行くんだと」
そういったミスティスさんの顔は、本当に朗らかだ。
彼の事を思っているのか、目を細めているがその顔に不安げな表情は浮かんでいない。
大切な人を信じる、ということか。俺は古都音さんのそばにゼクスがいるから、もう心配していないんだけれど。
けれど、この先ゼクスも【八顕】になった。だからもっと強い【顕現者】が現れた時に、彼のと同じ立ち位置で俺もなんとか出来るようになりたいと考えたから。
ゼクスだって、ずっと古都音さんの近くに入られるわけじゃない。【八顕】に仲間入りして、鳳鴻たちが絶対に見逃すわけがない。
今の時点であれだけ強力な顕現特性を持った【顕現者】なのだから。
「でも、何故ミスティスさんがここに?」
「私も交換留学生なのです」
目の前の美少女はそう言って、補足として「【ロスケイディア二皇国】の【ATraIoEs】所属です」と豊満な胸を張ってみせた。
【ATraIoEs】ってのは、おそらくここ【ブリンク学園】と俺がいた【八顕学園】よりも有名な顕現者育成機関だ。
成人は愚か、学生でも知らない人は居ないと思う。歴史的な代表者や先駆者を、たった数十年でかなり排出してきた場所。
日本の基準である【顕現者】と違い、ゼクスみたいな異端でも普通に入学できる。
――ちょっとまってくれ。出迎えだと思っていた少女が、同じ交換留学生という立場だとしたら……。
本当の出迎えって無いのか?
「あれ?」
「きちんと出迎えはあるのですよ。ただ、私が2時間ほど早く着いたというだけの話で――ほら」
「…………」
あ。来た。やってきたのは黒髪の少年だ。いや、少女かもしれない。
中性的な生徒だ。くりくりとした目が特徴的か。
純粋そうな顔つきは、……俺の周りにはいないね。俺の回りにいた人間は、古都音さんであっても環境や状況に惑わされて、混乱して、いろいろと思案しているように見える。
俺だってそうだ。だからこそ、目の前の純粋な少年か少女を、羨ましいと感じてしまった。
「初めまして、アガミ・ハチスベ君。ミオ・ミスティスさん」
「スカー・ラプターさん……ですかね? 初めまして」
「男です。間違いのないようお願い致します」
そうとう間違えられるのだろう、彼は念を押すように目が笑っていない状態で笑いかけると一礼する。
「では、案内します。……交換留学生といえども、この【ブリンク学園】には試験がございます」
ああ、それは聞いている。正直、【ブリンク学園】や【八顕学園】のこういう耐性が【ATraIoEs】に勝てない場所なんじゃないかと俺は考えるんだけれど。
「あなた方の実力を、僕達に見せてくださいな」
「ええとその件なんだが……」
「ああ、ハチスベ君の事情はわかってるので、両方共僕と勝負しましょうか」
俺は【顕現】に拠る攻撃が出来ない。それを解決するために交換留学したと考えても差し支えないだろう。
でも、俺の防御力はあの御雷氷冷躯さんの攻撃を5秒は耐えられるようになった。
冷躯さん、最終的には【不可侵】を使って崩しにかかったと言っていたし、多分【不可侵】がなければ破れないんだろう。
日本トップの実力者に本気を出させたんだから、多分……。
目の前の少年がどれくらいかは知らないが、攻撃は一切通らないはずだ。
次回更新は明日です。




