第190話 「【ARK-101】」
少々遅れてしまい申し訳ありません
「ゼクス君もついに仲間入りだね! やったー!」
「これからよろしく、ゼクス」
学園の門には、斬灯とアズサさんがいた。
鳳鴻も合わせれば、この場には日本三貴神が揃っていることになる、その状況に。
俺は、前から見たことのある情景だというのに、圧倒されていた。
二人の言葉に対して俺はぎこちなく刻々と頷くと、その3人を見回して言葉を発する。
「何故呼ばれたのかよくわかっていないんだけれど」
「ああ、今回は簡単な説明だけだよ。チュートリアルってやつ、かな」
そう言って笑ったのは、鳳鴻だった。最近、彼の表情は堅いものが多かったが、今はそれがなく穏やかな気分でいるらしい。
斬灯達もそんな彼を気遣っているようで、先程からチラチラと様子をうかがっていることに気づく。
きっと、鳳鴻も気づいているのだろうが。
「今、僕達がしていることの説明をしよう」
「ええと、これは?」
学園門の直ぐ側には、小型の空港がある。
そこに止まっていたのは……なんとも見たことのない飛行機であった。
俺が考えるに、多分軍用機。けれど、期待の横には【三貴神】を表すエンブレムが貼り付けられていた。
「今から、ロスケイディア二皇国に飛ぶよ」
「えっ」
何を言ってるんだコイツ、と俺は鳳鴻へ視線を向ける。
今からロスケイディア二皇国に飛ぶ、というのはおそらくこの飛行機に乗るということなのだろう。
「こちら、超音速輸送機【ARK-101】。さぁ、のってのって」
斬灯が俺をじっと見つめつつ。機体の型番? のみを伝えてこちらの背中を押し始めた。
超音速、ということは音速は少なくとも超えているという意味だ。しかも鳳鴻はどうも、なんとも信じがたい話だが今回は日帰りで十分事足りるという。
すごい速度を出すに違いない。怖い。正直怖い。何が起こるか分かったものじゃないってのが本当に怖い。
「これ、中の人危なくないか?」
「【顕現】でなんとかしているのよ。私たちには知りうることの出
来ないような科学が、ロスケイディア二皇国にはある。何故だと思う?」
「……いや、さっぱり分からないな」
ああ、ロスケイディア二皇国製なんだな、やっぱり。
ネクサスの持っていた、あの【Vy-Dialg】っていう【顕装】も、少なくとも【始焉】よりは技術が上だろう。完成度の部分では首をかしげる所だが、【Vy-Dialg】を使って飛び上がった時とかは流石に驚いたし、彼の顕現特性によって分裂し、同時に操作してきた時も、俺は【書換】を使わなければあたっていただろう。
あれは【顕装】のちからもあったと思う。少なくとも、【始焉】に堅実さはあるが派手さはない。少なくとも、俺の判断で古都音やスメラギ氏に聞いてみないとわからない部分もあるのだろうけれど。
「ロスケイディア二皇国には、私達の知る由のない凄い技術を持っているの。けれど
、その全貌を知る人は、私達を含めほぼいない」
「……斬灯たちも、わからないということか?」
「ええ。分かるのは、終夜家の持っているコネクションの【Neo Val Xione(ネオ
ファルクシオン)】だけ、かな。ゼクス君もあったでしょ? ご子息のネクサスに」
俺は頷く。
斬灯は、きっと先日のそれを知っているのだろう。多分、あれは偶然ではないと俺は推測しているのだけれど、果たしてどうかな……。
「ああ、会ったよ」
「今のところ、あそこを知れるのはあのメーカーだけ。それでも、あそこは……」
そういって、斬灯は俺にも分かるように指を折って数えてくれる。
曲げた指は3つ。どれも俺が聞いたことのある、【顕装】を製造している企業の名前だ。
「終夜、東雲、SAYKA……日本のすべての企業を遥かに超える技術を持っている」
「……例えば?」
「音声認識。日本の技術ではまだ、スイッチなどによって【顕装】の『コア』に負荷
をかけてるんだけれど、【Neo Val Xione】にはそれが必
要ない。……まあ、そんなことが出来るのは一部なんだけれどね」
まあ、ね。
蒼穹城家が圧力をかけて、東雲とそういう関係になっているのは知っていたし。
まあ、そんなことは復讐に何の関係もないんだ。蒼穹城進が正気を取り戻して、東雲契との関係がどうなったのか知らないけれど。
東雲契には復讐を果たす。
「……まぁた怖い顔になってる。ごめんね、東雲の名前を出しちゃって」
「いや、気にしなくていい」
「はいはい、一旦静かにしようね」
鳳鴻が斬灯の頭を小突き、斬灯が「あいたっ」と頭を抱える。
「さて、そろそろ出発だよ」
次回更新の予定は今日。
というか今から書くので、早ければ寝る前には更新します




