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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第1部 第1章 入学
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第019話 「事態の収拾がついた頃」

 事態が収拾のついた頃、アマツはすぐに医務室へ運ばれていった。

 俺が【顕現】を解除したのは、医務室に居る回収班がぜんいんみているなかだった。


 規格外のオリジナル【顕現オーソライズ】を関係者以外の人に見られたのは正直困った。

 そのまま学園長に報告されて、呼び出しまで食らった。


 それは今日ではなく、今週末の話だけれど……。

 入学式が水曜日で、今日が木曜日だから……え、明日じゃないか。


 両親も一緒に呼び出されるらしいし、冷躯れいくさんとカナンさんに入学早々迷惑をかけてしまうということになる。

 ……でも、ただ今回が善機寺ぜんきじを叩き潰しての呼び出しでなくて本当に良かった。


 蒼穹城そらしろは、俺が結界を張ったおかげで助かり、今度お礼の使いが来るらしい。彼自身も俺に感謝をしているのだとか。

 助けたうえで後で叩き潰すのに? ご苦労様。

 ……蒼穹城家の当主には恨みがないから、ちゃんと使いは通すけど……。


 本当に、よかった。


「アマツくん……」


 というわけで今、俺と須鎖乃すさのアズサさんと、冷撫れいなは医務室にいる。

 目の前にはアマツが安らかな顔で眠っていて、医務室の先生によると「目覚めるのは来週」になるという。


 【顕現オーソライズ】の暴走による顕現力の使いすぎ、それに伴う体力と精神力の消耗が原因だとか。

 ……俺があの時放置していたら、死んでいた可能性もあったらしく医務室の先生は安堵していた。


 本当に、手遅れにならなくてよかったと思う。


「アマツくん……」


 冷撫は、医務室にやってきてから「アマツ」の言葉を呼ぶしか出来ないようだ。

 それもしかたのないことだと思う。


 俺はアズサさんの方に顔を向けて、「しばらく2人にしよう」と提案。

 彼女も承諾し、医務室を出た。


「私は、正直君を見なおしたよ」

「見なおすも何も、あの時が初対面だったのに」


 俺がつぶやくように本音をこぼすと、アズサさんは不敵な笑みを浮かべて「食堂に行かないか」と俺を誘う。

 寮のではなく、校舎側のだろう。もう夕暮れ時だし、人は少ないと考えて良さそうだからOKと返事をして彼女と並び歩く。


「私は神牙かみきば家と仲がいいことを忘れたかな?」

「……知られてるってわけね」

「そう。……自分の欠点を『式』の構築で利点に変えるというのは正直驚いたね」


 私なら、神牙家の開発した【神牙シンガ結晶】に頼りきりだっただろうと。


 確かに、一時期それも考えていた。

 【神牙結晶】の開発は、【顕現】が人の能力を決めるこの世界で革新的役割を果たすものだった。


 でも、それが出来たのは本当に1年ほど前のこと。

 研究の内容は父さんを通じて養子になった時には知っていたけれど、時間がかかることも知っていたから。


 だから『式』の構築を習った。平日は家に帰ってから2時間試行錯誤して、勿論【顕現者オーソライザー】の身体能力を養うために鍛錬も積んだ。

 その結果が今の八龍ゼクスになっている。


「あの『式』に、属性指定も顕現体指定もなかった」

「正しくいえば個体名も省いた」


 最初の【4】は属性の数を指す。一つの属性だけを使うなんてもったいないと考えたからで、1つの属性だと突破されやすいものでも、数を増やすことで対応できると。


 次の【re】が発動のスタート合図。もう属性は予め指定されているから、あの状態からの発動になる。


 そして最後の語句。

 さっき使ったのは「巻き戻す(リコイル)」と「拘束する(リストレイト)」。


 お分かりのように、この能力は英単語で「re」から始まるものしか扱えない。

 まあ、この部分はスタート合図を変えればなんとかなる話ではあるが。


「君の【顕現けんげん】は、煌めいていた」


 アズサさんは、「オーソライズ」とは言わないんだな。

 俺はその言葉に対しては何も言わない。


 確かに、属性を極めると【顕現オーソライズ】したものは煌めくようになる。

 けれど、俺のはまだまだだと自己評価。


 彼女の賛辞は受け取れない。

 でも、そんなアズサさんの目は輝いてて。


 ……ああ、美しいなと。

 素直に感じながらも、口には出さない。


「お、誰もいない」


 俺が何も答えないでいると、前の方に食堂が見えてきた。

 営業はしているようだが、見事に閑古鳥が鳴いている。

 それもそうか。開始2時間で試験場が破壊されて、中止になったんだから校舎側に残っているのは部活をやっている人だけだろうし。


「何飲む?」

「自分で頼むよ」


 俺はアイスコーヒーを頼んだ。砂糖マシマシで。

 アズサさんは、普通にミルクだったけれど。


 2人で席について一言。


「もし、私がアマツのように暴走したら君は助けてくれるかい?」


 その言葉に、俺はどう答えればいいんだろうか。

 俺は博愛主義者でなく、蒼穹城を助けたのだって助けなかった場合に自分の立場が危うくなるのを恐れてのことだ。


 正式の場では、何をやっても問題なしということが分かった。

 それは、これから悪用させていただく。


 で、アズサさんを助けるかどうかということだけれど。

 彼女をぬか喜びさせても意味が無いからな。


「アズサさんが、真にアマツや冷撫と同じ立場になれば」


 と、答えるのが良かろう。

次回更新予定は今日の夜。早く書けたらもっと早く更新します。


活動報告で変更を伝えるかもしれないので、気になる方はお気に入りユーザー登録をご利用ください。

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