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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
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第188話 「鎖引きちぎる憤怒」

2016.05.09 一話目

「本当に古都音さんには申し訳のない話なんだけれども……ゼクス君を1日借りて行ってもいいかな?」


 次の日、寮から校舎へ向う途中であったゼクスと古都音、はやて達の前に現れたのは、目にくまを作った鳳鴻おおとりであった。

 開口一口、古都音に謝りゼクスを借りたいと申し出たい鳳鴻に対し、彼女はと言うと分かりましたと二つ返事で了承した。


 ゼクスもOKと返事はしたものの、古都音が心配なのかあたりを見回し、そして颯に目を留める。


「代わりにはやて……。そんな不満そうな顔をしないでくれ頼むから」

「……そういうわけじゃない」

「今日一日、古都音を俺と同等の存在として扱ってくれると有り難いんだけれど。何があっても守り通して欲しい」

「……承知した」


 颯としては、一緒に行きたいのだろうと。ゼクスはそう考える。

 同じ立場になったというのもあり、颯は自称”忠臣”として、本格的にゼクスをサポートし始めていた。

 戦闘時のみならず、八顕の業務も同じものをこなし、新参であるゼクスに説明をする姿がよく見られている。


「俺も、付いて行きたい」

善機寺ぜんきじ君も、時が経てば知ることになるよ」


 そんな彼をなだめるように、鳳鴻は真実を伝えることを約束しゼクスにも颯へ情報を共有する権利を与える。

 ゼクスには、そんな彼が心なしか焦ってあるように感じられたが、焦りの正体が掴めず口に出すことはなかった。


 鳳鴻がゼクスへ向き直る。


「さて、行こう」

「頼んだぞ、颯」


 そう言って去っていった二人の姿を見送り終わった颯は、過剰に何かへ注意を配っているようにも感じられる。


「善機寺、俺達もいるから問題ないって」

「……問題というのは何時でもつきまとっているものだ。ゼクスが終夜先輩と離れたということは、寄って来る人間というのが必ず一人いる」


 アマツが見かねたように宥めるも、その言葉が終わる前に颯の言葉通りになり、言葉を引っ込めた。

 付け狙ったようなタイミングで現れたのは、ザスターであった。


「……トラン=ジェンタ・ザスター」

「あれ? 御雷氷ゼクスはいないのかい?」


この前あんなことがあったと言うのに、トラン=ジェンタ・ザスターは未だ蔑むような顔でアマツや颯を見つめていた、

 と、言うのも彼は颯を腰巾着程度にしか認識しておらずたった今彼を【善機寺】の次代候補と認識出来たからである。


「この学園にいる間、ゼクスは八龍として扱われる」

「そういう意味ではなく、俺が言っているのは【八顕】の次代候補に用があってね。君たちでも問題はないか」


 わかってないな、と小馬鹿にするような態度にアマツは早くも我慢ならなくなったのか、一歩前に進む。

 しかし、それを制止するように颯が手を挙げた。


そんな彼等を横目に見つつ、ザスターは言葉を続ける。


「決闘時、武器制限なしということでこちらは特殊なものを使わせてもらう。そのかわり、君たちは……どうせ無駄だろうけれど、【八顕】の範囲内なら次代候補を同時に何人でも連れて来てよし」

「……なんだと?」


 アマツは再び我慢ならなくなったのか凄みを孕んだ声を上げたが、それも颯が「やめろ」と制する。


 颯達が恐れをなして手を挙げないと、勝手に勘違いしたザスターは。余計なことまで話し始めた。


「俺からはこれだけだ。決闘の日を楽しみにしてるよ。ところでコトネは、何故あんな男が好きなのかい?」

「…………」


 たった今までアマツを制していた颯の動きが、止まった。眼の前にいたアマツと冷撫がギョッとするほど無表情になり、トラン=ジェンタ・ザスターに向き直る。


 その変わりようにザスターも流石に気づいたが、虚勢を張るように言葉を続ける。


「まともな顕現もできない落第生じゃないか。……君は、ゼンキジと言ったかな。……御雷氷に下った犬だっけ?」

「それで構わない。だが、……そこからこれ以上こちらに近づくな!」


 颯が、今日初めて声を荒げる。

 ザスターがちょうど古都音に一歩踏み出したからで、構わずザスターはもう一歩。


 その瞬間、颯の周りにいた人々は。


 暴風に襲われ、それが颯の発動したものと本能的に理解する。

 颯は、怒りを感じていなかったわけではない。ただ、理性が弾け飛ぶまでは自制出来るだけである。心に、しっかりと鎖が巻きつけているだけだ、


 しかし、それもゼクスに命じられたことに干渉した場合、いとも容易く鎖は引きちぎられただけ。

 けれど、普段とそれが全く違って見えるため、まるで別人が憑依したような印象を受けられる。


「近づくなと、言ったはずだ。……心に届かないのなら、体に染み込ませてやる」

「お前にそれが出来る……のっ!?」


 ザスターの挑発に呼応するように飛んできたのは、風属性を纒った拳であった。


 颯は、不意打ちが頬にクリーンヒットし地面に転がってのたうち回るザスターを初めて見下げる。


「出来るとも。ゼクスは終夜先輩をゼクス同等に扱えと言われた。仕える者として、一切の危害は許さない」

「なんっ……!」

「『元素の属せし物、名乗るしは【風】』」


 その目には、言葉に形容しがたい程の怒りが見えた。

 顕現式を唱え始めた颯に、ザスターはようやっと危機感を覚えたが、次は体が動かない。


「『顕現せし様のそれは【打刀うちがたな】』」


 煌めく黄緑色の刃が、【顕現】される。

 徐々に構築されるそれを見て、古都音は綺麗だ、と感じてしまった、


「『……今ここに現われよ! 顕現者の証が一つ、【翠煌成打刀拵すいこうなるうちがたなこしらえ】」




 そして、一息。




「覚悟しろ、トラン=ジェンタ・ザスター。……ゼクスが手をくださずとも、俺がやってやる」

ザスターが死にそう


次回更新は明日です。

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