第181話 「ネクサス・ファルクシオン」
2016.04.30 2話め
「【Neo Val Xione(ネオ ファルク シオン)】は、各国の神話や伝説をモデルにしたものを作っています。だから男性にとても高い支持を受けていますが、決して宗教関係には触れないということも徹底していますね」
だんだん、古都音に何か飲み物を買いたくなってきた。
俺は【Neo Val Xione(ネオ ファルク シオン)】についての説明を聞きながら、【顕装】を見ていく。
確かに、なんというか男子が好きそうなごてごてしたものもあるが、シャープなものに流線型文様などといったデザイン性に優れているものが良い。機能も多機能というよりは、例えば起動の速さや耐久性、燃費の良さに特化ひいては極化されているものが多数を占めている。
……ところで、伝説って?
「ふーん」
「特に次代が日本好きで、よくお忍びで来ているという話です。【顕現者】としてもかなり優秀な人間であり……」
「へー」
話がだんだんそれてきた。俺は【顕装】の話を聞いていたはずなんだが、何故次代の話になっているんだろう?
正直興味が無いし、人間てのは見て一緒に居ないと本質がわからないものだ。
古都音の方も、最初は何故こんなに優しくしてくれるのかずっと疑問に思って考えていた。
けれど、今もそんなに変わらないどころか、アレが遠慮されているということまで理解できた気がする。
「興味なさそうですね」
「いや、その人を見てみないとわからない。としか」
ジト目で見つめられ、俺は首を振った。
ココは人の噂だけで何も判断をしてはならない。もしかしたら壁に耳あり障子に目ありっていうことわざがあるように、自分で判断することが……。
「ん? 俺の話?」
「誰」
突然、口を挟んできた男性に俺は思わずそのままツッコミをいれてしまった。
俺と同じような銀髪で、なんか恐ろしいほどAPP値が高い。
確か外見の魅力だったか、アマツがよく言っていた気がする。
古都音は「あー」っとこの人を知っているようだ。
しっかし、俺が聞いても全く違和感のない日本語を喋っているが、顔つきは完全に少なくともアジア圏の人間じゃ、ないよね?
「あら、古都音さんじゃないか」
「……何故ここに?」
「噂をすればなんとやら、ってね。初めまして御雷氷ゼクス。俺の名前はネクサス・ファルクシオン」
ああ、本当に噂をすれば影が差すってやつですね。
俺は半分呆れ返りながら、「ネクサスって呼んでくれ、僕もゼクスって呼ぶから」とやけに友好的で怪しさすら感じられる態度でこちらをまじまじと見つめているネクサス・ファルクシオンを見つめていた。
「君も銀髪なんだね、特に【顕現】による色の混合が原因なんでしょう? 似た者同士、よろしく」
「よろしく」
握手を交わし、古都音とネクサスが「お久し振りです」と頭を下げている。
まあ、【終夜グループ】の令嬢と【Neo Val Xione】のご子息、古都音の話によれば協力しているらしいし当たり前か。
次に、ネクサスは再び俺の方を向いた。
その目には闘志が宿っている。
「早速だけどさ、ちょっと模擬戦しない? どこか借りて」
「は?」
血気盛んすぎるだろ、と俺はもう一度呆れた。目の前の男をしっかりと観察していると、その腰に2つの【顕装】が装着されていることに気づく。
まあ、そうだよな。【顕装】の会社の跡継ぎになるのだろうし、最終的にはそうなるよな。
例えば古都音が技術者として知識を蓄えているように、彼は戦闘の能力を持っているのだろう。
……確かに、模擬戦などと言った「戦い」の場所で相手の本質を見抜くというのも確かにある。
「日本も2ヶ月に1回来てるから新しい刺激が欲しいんだ、そこで気になったのが君。だから、ちょっと楽しまないか?」
彼の話によると、俺の名前はやはりと言うかなんというか、二皇国に知れ渡っているらしい。
俺は俺が考えている以上に有名なんだそう。そんな自覚あるわけないよな……。
いや、学園ではかなり悪名高いし、それの関係なのかもしれないな。
俺は恐る恐るながら、古都音に聞いてみることにした。
「……やっていいの?」
「私は構いませんよ? 模擬戦であれば、その程度なら私だってなんとか出来ますし」
それは、「模擬戦程度の怪我なら、回復させられる」ということだろうか。
回復も、結局は実践の訓練が必要なわけで、それをしたいというのもあるのだろう。
「よし、決まりだね。ちょっと待っててね」
そういって、ネクサスは携帯端末を耳に押し当てながら何処かへ行ってしまった。
俺は古都音を見つめ、彼が去っていった方を指差す。
「……何であんなに友好的なんだあの人」
「ザスター家と対立しているから、ではないでしょうか。ファルクシオン家ってかなり大きい場所ですから」
ああ……、ここでザスターが絡んでくるのか。
俺と古都音がデートに向かおうとした時も、確か邪魔しようとしていたんだったか。
鳳鴻が阻止してくれたのは、かなり有り難いことだった。
それにしても、あの時の鳳鴻もかなり凄い顔をしていたな。
なんというか、強い憎しみが言葉として「ザスターを殺したい」というふうになっていた気がする。
前の俺みたいだ。今でこそ、【神牙結晶】なしでも生活できるようになったけれど。
「用意出来たよ。さて、出発しますか」
そうこうしているうちにやってきたネクサスは、白塗りの高級車へ案内すると「手配した。さていこう」と笑いかける。
さて、行きますか。とりあえず必要ないだろうが、誘拐の危険性も考えて警戒はしよう。
古都音は問題ないといったように入ったようだけれど、俺は初対面だからね。
これで+2429文字。
あと1000文字ですかね?
何か閑話でも書くことにします。




