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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
179/374

第179話 「上空にて」

2016.04.29 1話め

 結果的に言えば、許可された。簡単な手続きだったのだけれど、担当の人は「あ、いいですよ。御雷氷みかおり君と、終夜さんですね」なんて軽い口調で言って、許可書を発行してくれる。

 

 これを門衛に見せれば晴れて自由の身……というわけではないが、学園の外へ行ける。

 俺は「ありがとうございます」と頭を下げて、許可書を2枚手に取り、1枚を古都音に渡した。


「これは、1日限定なのでしょうか?」

「いいえ、休み中は何回でも使えるし、実家に帰ったり、お泊りしたりも可能よ。貴方達を贔屓するわけではないけれど、【八顕】とそれに準ずる家系の出身は……ね?」


 意味深な言葉を残した担当の女性は、最後まで言わせないでくれとばかりに途中で言葉を切る。

 ……意味深でもなんでもないな、ただ【八顕】【三劔】、それに準ずる家系には特別処置を施せっていう意味だろう。


 俺と古都音は頭を下げ、学園門へ向かう。

 古都音は3歩後ろに常に位置するように着いてきていたが、やめさせる。


 あと、正確には3尺。1メートル弱、大体【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】の刀の長さと一緒だが、どう間違えてもそんなことしないだろうし。


『まあ、我がある程度太刀筋は変えられるからの』


 オニマルもそう言っているし、問題はないだろう。


「となりの方が良くない?」

「……そうです?」

「うん」


 俺は頷いて、歩幅を調節し隣に古都音がやってきたところで歩き出す。

 歩幅が大きいのかもしれん。少々加減しながら歩くか。


 学園の中を歩いていると、かなりの高頻度で人とすれ違う。

 それは生徒であったり、教師であったり、教師以外の職員だったりする。


 しかし、誰もこちらに声をかける気はないようだ。まあ、そうなんだろうなと考えることしか出来ない。【八顕】というのは元々近寄りがたい存在で、それに準ずる【三劔】や終夜家と言った名家も思い切り近寄りがたい人種なのだ。


 今まで同じような身分の人と一緒にいたからか、全然気にしていなかったけれど。

 やっぱり、俺ってアレなんだろうな。【八顕】→【三劔】→【八顕】なんだものな。

 あまり変わってないわ。




---



 学園に帰ってきた丁度その時、僕はゼクス君たちの姿を見かけた。

 今から学園外へデートらしい。そうなのか、程度に僕は流そうとして……殺気を感じ取り、周りを見渡す。


 見つけることが出来たのは、2人からして後ろの方にザスターの姿が見えた。

 注意深くそちらの方を見つめると、【顕装】をすでに起動している。


 音もなく加速し、狙いは……ゼクス君だ。


 僕は思わず駈け出す、今から声をかけてももう遅い。

 両手から金色の光が瞬き、一筋の光線を射出する。


 光に気づいたのか、ゼクス君がこちらを向き光線の届いた先を見つめた。

 僕の【顕現属法ソーサリー】はほぼ一瞬で対象まで届くし、それを回避するのは【八顕】の当主達くらいしかいないだろう。


「……ザスター」


 そして、拘束された状態のザスターをじっと見つめて、そのまま気にしていないように古都音をつれて学園外へ向かった。


 まあ、確かにそうだね。僕の射出した光は、クモの網のようにザスターを絡めとって空中に釣り上げているんだから、気にしなくてもいいといえばそのとおりなんだけれど。


「鳳鴻、サンキュ」

「うん、楽しんでくると良いよ」


 そうゼクス君とは言葉を交わし、古都音さんは頭をぺこりと下げて2人は立ち去る。

 僕は絡め取られたまま、こちらを憎々しく睨んでいる彼を離し対峙した。


「邪魔をするな、亜舞照鳳鴻」

「無様だね、断る」


 首を振り、藻掻くザスターを上に引き上げていく。糸の届く先は空中空高くで、秒を刻むごとに上空へ上がっていくのはいくら丈夫な【顕現者オーソライザー】であったとしても恐怖を刻みつけられるものであろう。


「僕はね、自分の友人は何があっても護るって決めたんだ」

「それがどうした? 自分の婚約者ですら守れなかった人間が、何綺麗事を」

「そうだね。……だから、加害者を滅することも僕の役目だと思ってね」


 それを聞いて、僅かながらもザスターが青ざめる。

 僕が何を言ってるか、やっと理解したという顔だ。


「もし結果的に守れないんだったら、最初からその種を潰せばいいとは思わないか? 君達がミサキをさらうとき、まずそばに僕がいないことを確認したように」


 糸がさらに上へ上がっていく。すでに地上から見えない場所まで上がっているけれど、僕は空を浮遊してそれに着いて行く。

 そろそろ空気が薄くなる頃? 【顕現者オーソライザー】は極限状態でも生きられるけれど、宇宙では流石に死ぬかな?


 始末書はどうしようか、「勝手に宇宙へ行って死にました」じゃダメだろうね。

 【顕現オーソライズ】なんて心の持ちようなんだ。僕の憎しみよりも、彼のほうが強い心を持っていればこの糸なんてすぐに引きちぎれるだろうに。


 多分ゼクス君なら2秒もかからない気がする。


「……鳳鴻、そろそろやめな」


 けれど、宇宙に行く前に僕を止める声がした。

 ここは上空で、かなり高い場所にいるんだけれどついてこられる人って言えば……。


「アズサ、どうしたの?」

「流石に問題になるからやめなよ。八龍君のことは止めないけれど、貴方の方は止める権利が私にはある」


 ……ミサキの親友だもんね、アズサは。

 アズサだって、僕と同じくらい彼には憎しみを持っていることだろうし。


 でも、アズサはいい子で良識をかなぐり捨てたりはしない、だから僕を止めるんだろう。


 僕は軽くため息を吐いて、「そのままザスターを突き落と」した。

 流石に死ぬかもしれないけれど、アズサがここにいるってことは斬灯が万が一のために下でカバーに入っているということだろうからね。


「……分かっててやった?」

「勿論」


 アズサに笑いかけ、僕は上空から地上を眺めた。

 遠すぎて見ることも構わないけれど、確かにそこに、地上は存在する。


「貴方はいつも、何処を見ているかわからないね」

「ん?」

「なんでもない。さて、降りましょ」


 降りる際、上から声がした気がして僕は空を見上げた。

 誰の声なのかはわからないけれど、とても懐かしい雰囲気のする声。アズサは何も聞こえていないみたいだえけれど、僕には確かに、聞こえたきがする。


 ――「あと、77回」と。

鳳鴻のカウントダウンも、ゼクスのカウントダウンと大方意味は一緒です。


次回更新は今日、と言いたいところですが厳しそうなので明日で。

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